2026年第31週(7月27日〜8月2日)の水産業界は、ICT・AI技術の実装が漁業現場に本格的に降りてくる段階に入ったことを強く印象づける一週間だった。鹿児島でAI漁場予測が無償提供を開始するほか、陸上養殖では明暗が分かれ、成功事例と事業停止が同時に報じられた。担い手確保の取り組みも各地で続いており、石垣島では漁業者自身がサメ被害に立ち向かう現場の声も届いた。
漁業・養殖
AI漁場予測が8月から無償提供へ――鹿児島大×県が共同開発
鹿児島大学と鹿児島県が共同で開発してきたAI漁場予測システムが、2026年8月から漁業者向けに無償提供される見通しとなった。海面水温や潮流などの環境データをAIが解析し、どの海域でどの魚種が多く獲れるかを事前に予測するツールだ。「やみくもに走るのは燃油の無駄。AIが示す漁場に的を絞れば、燃料コストが大幅に下がる」という漁業者の言葉が、このシステムの実用性を端的に表している。モジャコ(ブリの幼魚)漁での経済効果は年間1億3,000万円と試算されており、燃油高騰が続く中でスマート漁業への移行を後押しする取り組みとして注目される。(情報元:Yahoo!ニュース、FNNプライムオンライン)
陸奥湾ホタテの大量死を受け青森県が総合戦略を見直し
近年続く陸奥湾ホタテの大量死を受け、青森県が養殖ホタテの総合戦略見直し案を示した。主な方針として、北海道からの稚貝移入や副業魚種の導入が柱となっており、国や漁業関係者で構成される委員会は概ね了承した。2024年の高水温による大量死が記憶に新しい中、単一魚種依存のリスク分散を図る方向性が明確になった形だ。陸上養殖のメリット・デメリットを徹底解説で触れているように、環境変動への耐性強化が養殖産業全体の課題となっている。(情報元:TBS NEWS DIG)
長崎・諫早で「海ぶどう」陸上養殖――県内初施設を市長が視察
長崎県諫早市で、県内初となる「海ぶどう」の陸上養殖施設が稼働を始め、市長が視察に訪れた。海ぶどう(クビレズタ)はこれまで沖縄産がほぼ独占していたが、カキやアサリの養殖業者が夏場の空き期間を活用する形で試験養殖に乗り出した。温度・塩分・光量を人工的に管理する陸上養殖の強みを活かし、沖縄以外での産地形成を目指している。養殖業者がオフシーズンの施設を別品種で有効活用するというビジネスモデルは、他の地域でも参考になりそうだ。(情報元:TBS NEWS DIG、NHKニュース)
エビ陸上養殖 HANERU葛尾が事業停止――筆頭株主が出資断念
福島県葛尾村で陸上養殖エビ事業を展開していたHANERU(ハネル)葛尾が、事業を停止したことが明らかになった。筆頭株主が追加出資を断念したことが主因とされている。陸上養殖は環境制御が精密にできる反面、設備投資や運転コストが大きく、採算性の確保が難しいケースも少なくない。秋田県三種町でも同時期にエビ陸上養殖への補助金支出を巡り、議員から採算性と効果への疑問が呈されており、陸上エビ養殖の厳しい現実が浮き彫りになっている。(情報元:47NEWS、Yahoo!ニュース)
石垣島でサメ駆除――漁具被害に住民120人が参加
沖縄県石垣市の漁業集落で、漁具への被害を防ぐためにサメを組織的に駆除する取り組みが実施された。今回は住民約120人が参加し、計103匹(最大550キロ)を捕獲した。定置網や延縄への食害が深刻化している地域では、漁業者自身がサメ対策に乗り出すケースが増えており、現場での対応が先行している実態がある。石垣島では7月中旬にも漁業者によるサメ駆除が行われており、継続的な被害が課題となっている。(情報元:沖縄タイムス社)
担い手育成の取り組みが各地で拡大
担い手不足への対応として、体験・育成型の取り組みが各地で広がっている。神奈川・小田原では2026年度も「漁業塾」が開講し、未経験者が刺し網漁を実際に学べる機会を提供している。静岡・由比漁港では「漁業体験GO ぼくらの由比魚市場」が開場し、本物の競りへの参加や魚の解体体験が実施されている。北海道根室では東海大学の学生がコンブ漁体験に取り組み、福島・いわき市では学生が魚市場を見学する機会も設けられた。高知県室戸市では「水福連携」として、水産業が障害者就労の選択肢になる取り組みが広がりを見せており、担い手の裾野を広げる試みが多様化している。漁師の人手不足の実態と解決策でも各地の取り組みをまとめている。(情報元:カナロコ、PR TIMES、NHKニュース、kochinews.co.jp)
水産加工・流通
宮崎市に水産ブランド「檍浜ゴールド」誕生――タチウオに初の市認定
宮崎市が初の水産ブランドとして「檍浜ゴールド」を認定したことが発表された。宮崎市沖で水揚げされるタチウオで、「至高の太刀魚」として全国へのブランド展開を目指す。産地から全国市場への直接的なブランド訴求という戦略は、単価向上と消費者への産地認知拡大を同時に狙うものだ。九州の水産地域でブランド化が進む中、宮崎の取り組みは新興ブランドの育て方として注目される。(情報元:日テレNEWS NNN)
「海のマーケット」漁師直売アプリ、宮崎・串間市で実証へ
漁師から消費者に手渡しで魚を届ける直売アプリ「海のマーケット」が、宮崎県串間市での実証実験を開始した。クラウドファンディングも並行して実施中で、中間流通を減らして漁業者の手取りを増やすことを目的としている。鮮魚の産直アプリはここ数年で複数登場しているが、漁師側のスマートフォン活用への対応や鮮度管理の仕組みをどう整えるかが普及のカギとなる。TikTok Shopでの漁業者向けプラットフォームが始まるなど、デジタル販路の多様化が進んでいる。(情報元:時事ドットコム)
石川・輪島の紅ズワイガニ、新水質技術で鮮度向上
能登半島地震からの復興が続く石川県輪島市の漁業者が、「LIV WATER」という水質管理技術を活用した紅ズワイガニの販売を開始した。この技術によって鮮度を高水準で保持し、売上の一部を漁師の支援に充てる仕組みになっている。被災地漁業の再建に向けた取り組みと、付加価値向上が組み合わさった事例だ。(情報元:ガジェット通信)
行政・法改正
中国海警船2隻が津軽海峡を通過、太平洋へ出航
中国海警局の艦艇2隻が津軽海峡を通過し、公海での漁業関連法執行パトロールを実施するために太平洋へ出航したと報じられた。うち1隻は過去に青森沖で領海侵入した実績があるとされる。日本周辺海域での中国海警船の活動が漁業者にとっても身近なリスクとなりつつあり、沿岸漁業への影響が懸念される。(情報元:dメニューニュース)
アサリ保護に漁業者が動く――愛知・三河湾でツメタガイ除去
愛知県田原市の三河湾で、アサリを捕食する外来種・ツメタガイの卵塊を漁業者が手作業で除去する取り組みが行われた。ツメタガイはアサリの天敵であり、放置すればアサリの生育環境を壊滅させる可能性がある。漁業者が生態系管理を自ら担う構図は全国各地で見られており、沿岸の二枚貝資源を守るための地道な現場対応が続いている。(情報元:朝日新聞)
伊豆でマダイ・伊勢でモクズガニの放流相次ぐ
静岡・河津では伊豆漁協の支所がマダイ稚魚3万3,000匹を放流し、三重ではモクズガニ(ヤマタロウガニ)の稚ガニ330キロが9月の漁解禁を前に川へ放流された。栽培漁業による資源維持の取り組みが着実に続いている。(情報元:伊豆新聞デジタル、TBS NEWS DIG)
市場・価格動向
今年のサンマ、「数が少なく小型が多い」と研究者が予測
2026年のサンマ漁況について、研究者が「例年と比べて数は少なく、小型のものが多くなりそう」と解説した。近年のサンマ不漁が続く中での厳しい見通しで、本来の秋の食卓の主役が今年も希少になる可能性が高い。日本近海へのサンマの来遊量は2019年以降大幅に減少しており、水温上昇と北太平洋での分布域変化が原因として指摘されている。季節の魚カレンダーで旬の時期と食べ方を確認できる。(情報元:朝日新聞)
| 魚種 | 今週の主なトピック | 傾向 |
|---|---|---|
| サンマ | 2026年漁況予測「小型・少数」 | 資源不安 |
| クロマグロ | 漁獲枠拡大交渉継続中(前週比変化なし) | 管理強化 |
| ホタテ | 陸奥湾戦略見直し・稚貝移入へ | 再建途上 |
| エビ(養殖) | 陸上養殖事業停止が相次ぐ | 逆風 |
| タチウオ | 宮崎「檍浜ゴールド」ブランド誕生 | 付加価値化 |
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今週のまとめ
今週最大の注目点は、AI漁場予測の無償提供開始だ。デジタル技術が「研究の成果」から「漁業者の日常ツール」へと移行する節目であり、スマート漁業の普及が加速する可能性がある。一方で陸上養殖エビの事業停止は、技術的な可能性と採算性確保の難しさという根本的な課題を改めて突きつけた。
来週は、8月の土用の丑の日(7月26日が2026年の丑の日だが、夏のウナギ消費の動向)やサンマ漁の実際の出足が注目点となりそうだ。また、AI漁場予測システムの本格稼働後の漁業者の反応も引き続き追いかけたい。
参考記事
- [クロマグロ漁獲枠増枠ならず 沿岸漁業への配慮必要(Wedge・Yahoo!ニュース、7/26)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiiAFBVV95cUxNaFBMbk1XZEcwYmpFVVdnT1czWEhiaE1iMk42NnFacG1JX1o4dWo2RzYzbG9qRy1zblpHeXd0NTVrQVI3M0xmWmxGUFVraGZWTFZkZTdnZ0hNV19sY1RwUVQtamY3eWV4NG4ycUNCbkVlRVI0eGVVcmYyMmNFQTkyckFGTWJsRWpP)
- [鹿児島大×県 AI漁場予測サイト開発(Yahoo!ニュース、7/27)](https://news.google.com/rss/articles/CBMif0FVX3lxTE1qNF9nUVliQlE1czlWQXRMZjd3Z3VDWTYtdkJPNldHYUpVWHMxVXk4OEVvVWJsUkN2UjNkQnQ3bEoyQjNJX0lEbFVmeFcxb3dNT1p5MFFVS3BEZ0JrUE0wVnRvaEhiU2JXbXdkQndUUUNpMWg0REszWFEzcGZEZVk)
- [陸奥湾ホタテ総合戦略見直し案(TBS NEWS DIG、7/27)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiZ0FVX3lxTFBad1ZRa3FmbG1yZXo0V0lPM29IUm1ldUs2M3VZazRCWFp2WWtBYml0TXptQ2pXOEx4VVRuXzN1OENlWHo2eUVUWFBBNlF6Vy1hWmZYS3p4N200M3BoRjNpQndUYkJ3QlU)
- [志賀島漁業施設が飲食店に(NHKニュース、7/28)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiWEFVX3lxTE02VTIzMXNlRi1mZ0lvOUd4NWY2NDlGanYtVWhTWFBkS0ctNGxaeGFsTjRfTS1qV1prcS05TVY2WHJmbTVPNTc3RkhpcG03TzhmZ1ZqSERaSUE)
- [エア・リキード サーモン陸上養殖場に酸素供給(日本経済新聞、7/28)](https://news.google.com/rss/articles/CBMibEFVX3lxTFBkVXh5Rk56QXY5YmdPOWxkTDBIRmxHbHhYS3JNZzZ5cEhlLVR4c2NJZVlCc1RTN0ZoejFBY1UwM0JaeXFwb0xRaTFXSzJZXzFDVUM0MWs0YUNNS2J1OXFFOFRXbHFYclBIdUxMRA)
- [AI漁場予測8月から無償提供(Yahoo!ニュース/FNN、7/29)](https://news.google.com/rss/articles/CBMif0FVX3lxTE5vbEtYYnlDb1RFZ1l5VTdVUzFxbVdtb0x4TFVoQTl6VzB6Q1ZNUTBzalAwdTFqTmt4MUo1dE1hYU5HY21GWFdaeXdHalM1ZVo1VWFOMG9TTndvS29QUWpmUFFSOVpTamgtWUF1UUVCanJwU3kway1TNHIxT3FJYkU)
- [水産業×福祉「水福連携」高知(kochinews.co.jp、7/29)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiX0FVX3lxTE9VdWlJNWczZy1WdHQ5TnZXZTVWZS1udGVheXNQZkRlUnhUdG5kMVpDbW55SWJNQVFuLVNkTFZmTFZoSElUR1dickRBNjdhbTJhdzVwaVdBczB6N2czQWNJ)
- [諫早で「海ぶどう」陸上養殖(TBS NEWS DIG、7/30)](https://news.google.com/rss/articles/CBMi9gFBVV95cUxOR1FGTnFxWVhOMG9OMGtVck9ON1h5NG9fMjF0S2dXZVg3ODZVM0kxT1RkQURLZF8tSXkxa25rVUlSYTlmd1Z1RWhWdzlJR3Rkb2FXX0p6UklzTFZXRTd3c0o3NFNLSTU5OWJ1UjduMVdKSEZPVVB0NVlnZmJkWFJIMHNVbklWZ0YzbU56U3lPLXVCdUxRcnZiXzRWMURkMDlMU3B2aUc4emxIamhpRzczaTFCUmZYN1h3dUhwUEVSOHFLOWN4TlBLSlFMQmM5SW5sbTZmbjNoYXVlSU1BSUdaNEZwLTRWcXlTc2x4U1dYMmJSX2FMZ2c)
- [サンマ2026年漁況予測(朝日新聞、7/31)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiZ0FVX3lxTFBoSTVsUGR0dnFOWXQwSjFRVFhvZ2Fuejc2cUFxVE42Sk1aYmIyNjBQN2l3R3VLUTc3Rm5CN3NVWXNaZ1hwUFByR19BTW8xNFdVUzdSRm0xZDJXem9wNVdKWjZUU3dqWEU)
- [エビ陸上養殖停止 HANERU葛尾(47NEWS、7/31)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiS0FVX3lxTE5HYXNoYmpZQ0VSdnRqUTk5WDk0MWxjZ2NORV9wUklKWTlBVG9zRGxXbFpPTWtieFlVdVJZR2pybjZzenpXLVctZTdkUQ)
- [「海のマーケット」直売アプリ(時事ドットコム、7/31)](https://news.google.com/rss/articles/CBMia0FVX3lxTFB1NlNMc3dWNmdhNi1PLV84WlVBUGxFMFJWR3NNZmV6ZW5pN3B4MFNLWVJkcVZsRnc3d1VBUk9FZ0E1NEozcmJpSG9pYmdfaVNyWDdjYnltOXpMbDFEZTdtbWlKMnlPS3ZkRi1z)
- [宮崎「檍浜ゴールド」ブランド誕生(日テレNEWS NNN、8/1)](https://news.google.com/rss/articles/CBMigwFBVV95cUxNem5QM21nVDI5NUtjbXlOSDV3Ujl3bC1CVzVCeWduMF9UYy1qSlVteXVRWkFUOGdmREliYXNDeUhqcHVEcGRZWS1vME9Ib0JmMlZlQk43cjJHcDlsNG1VLUlhLXNmUXE2TjYwZndGNGVJNkRVLXVTU0I3Yk0wXzZmeXY0MA)
- [石垣でサメ103匹捕獲(沖縄タイムス、8/1)](https://news.google.com/rss/articles/CBMiXkFVX3lxTFBRV3FEdkVwcGYzUnpjdlBxUDJPak1Nc2FpMW93RXdPWkhPUUxnSVdnT05kM211YXIya3lLRldZdUwtQ0ZfM295OHR6bi1SRzhqZ2RTNmdDTEN1aGt4OHc)


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