水産物の輸出入とは?貿易収支と輸出・輸入で異なる手続きを解説

水産物の輸出入とは?貿易収支と輸出・輸入で異なる手続きを解説 魚市場・流通

最終更新: 2026-09-12

ホタテやブリの輸出が過去最高を更新するニュースが目立つ一方で、日本の水産物貿易は依然として輸入超過だとご存じでしょうか。財務省貿易統計を基にした集計では、2025年の水産物輸入額は約1兆9,626億円に上り、輸出額4,231億円の4倍を超える規模です。「輸出が伸びている」という話題の裏で、日本の食卓を支えているのは実は輸入水産物だという実態があります。

「水産物の輸出と輸入、どちらが日本にとって大きいのか」「輸出と輸入では手続きがどう違うのか」「輸出入に関わる仕事はどんなものがあるのか」。こうした疑問に、水産ナビ編集部が農林水産省・水産庁・財務省の統計をもとに答えます。

この記事では、まず輸出入の全体像を貿易収支で確認し、次に品目別・仕向地別のデータを比較し、輸出と輸入それぞれで必要になる手続き・証明書の違いを整理します。最後に水産物の輸出入に関わる仕事を目指す人向けの情報とFAQをまとめました。

水産物の輸出入とは?貿易収支で見る全体像

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水産物の輸出入とは、国内で漁獲・養殖された水産物を海外へ販売する「輸出」と、海外で生産された水産物を国内に取り込む「輸入」の両方を指します。日本は水産物の一大消費国でありながら、国内生産だけでは需要を満たせず、輸入への依存度が高い構造が続いています。

項目 輸出 輸入
2025年の金額 4,231億円 約1兆9,626億円
所管省庁 農林水産省・水産庁 財務省(通関)・厚生労働省(食品衛生)
主要品目 ホタテ、ブリ、マグロ、真珠 さけ・ます類、えび、かつお・まぐろ類
主要相手国・地域 米国、香港、台湾、中国 チリ、ノルウェー、インド、ベトナム
直近の傾向 前年比17.2%増(金額ベース) 高水準で推移

貿易収支だけを見ると、日本の水産物貿易は輸入超過が続いており、輸出額の4倍を超える金額が海外からの輸入によって賄われています。輸出動向の詳しいデータは水産物輸出の現状で解説していますが、本記事では輸出と輸入の両面から貿易構造全体を捉えます。

品目別に見る輸出入データ:何を売り、何を買っているのか

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輸出と輸入では、主力となる品目が大きく異なります。

輸出の主力品目

2025年の水産物輸出では、ホタテ貝が906億円(前年比30.4%増)、ブリが528億円(前年比27.4%増)と、この2品目が輸出をけん引しています。ホタテは米国向けを中心に生産用途での大量輸入が目立ち、中国による輸入規制の影響を受けながらも、ベトナム経由の加工ルート開拓などで輸出額を回復させてきた経緯があります。

輸入の主力品目

輸入側で金額が大きいのは、さけ・ます類が約2,811億円、えびが約2,086億円といった品目です。さけ・ます類は主にチリやノルウェーから、えびはインドやベトナム、インドネシアからの輸入が中心となっています。かつお・まぐろ類は台湾・中国・マルタなどから輸入されており、国内で消費される刺身用マグロの一定割合を輸入品が占めています。

区分 品目 金額(2024〜2025年) 主な輸出入相手
輸出 ホタテ貝 906億円 米国
輸出 ブリ 528億円 米国、アジア各国
輸入 さけ・ます類 約2,811億円 チリ、ノルウェー
輸入 えび 約2,086億円 インド、ベトナム、インドネシア
輸入 かつお・まぐろ類 台湾、中国、マルタ

輸出はホタテやブリのような日本近海の水産資源が中心である一方、輸入はサケ・エビ・マグロといった、国内消費に欠かせないが国内生産だけでは賄いきれない品目が中心になっている点が対照的です。

> 編集部メモ: 水産商社の関係者に話を聞くと、「輸出の話題性は高いが、実務としては輸入業務のボリュームの方が圧倒的に大きい。特にサケ・マス、エビは為替の影響を受けやすく、日々の相場チェックが欠かせない」という声が聞かれました。輸出入の実務では、統計上の金額だけでは見えない為替リスク管理の重要性が高いことがうかがえます。

輸出と輸入で異なる手続き:証明書・検疫の違い

水産物の輸出入では、輸出側と輸入側でそれぞれ異なる手続きが必要になります。

輸出に必要な手続き

水産物の輸出では、輸出相手国・地域の規制に基づき、最終加工施設や最終保管施設などの施設認定、衛生証明書の添付が求められる場合があります。例えば中国向けに水産物を輸出する際は、放射性物質検査証明書と産地証明書が必要になるほか、魚種・品目によっては漁獲証明などの追加手続きが求められることもあります。手続きの詳細は仕向地ごとに異なるため、事前に水産庁や各地域の保健所・厚生局への確認が欠かせません。

輸入に必要な手続き

輸入側では、生きた水産動物のうち養殖用のものについて、輸入後に都道府県による着地検査を受ける必要があります。この場合、輸入許可申請書と輸出国政府機関発行の検査証明書の写しを、仕向先の都道府県にある水産防疫担当部署へ送付しなければなりません。加工品や冷凍品についても、食品衛生法に基づく輸入届出が必要で、検疫所での審査を経て国内流通が許可される仕組みです。

区分 主な手続き 所管
輸出 施設認定、衛生証明書、産地証明書(相手国により異なる) 水産庁、農林水産省
輸入(生体) 輸入許可申請、検査証明書の写しの送付、着地検査 都道府県水産防疫担当部署
輸入(加工品・冷凍品) 食品衛生法に基づく輸入届出、検疫所審査 厚生労働省、検疫所

輸入した水産物が店頭や加工場に届くまでのコールドチェーン管理についてはコールドチェーンの仕組み、輸入した水産物の産地表示・追跡制度については水産物トレーサビリティで詳しく解説しています。

輸出入業務に関わる仕事:水産商社という選択肢

水産物の輸出入という貿易実務に日常的に関わっているのが水産商社です。ニッスイやマルハニチロといった大手水産会社のほか、専業の水産商社が輸出入の仲介・実務を担っています。

仕事の種類 主な業務内容 求められるスキル
輸出営業 海外バイヤーとの商談、相手国の規制確認、証明書手配 語学力、貿易実務知識
輸入バイヤー 産地との価格交渉、為替リスク管理、品質検査の手配 相場観、交渉力
通関・貿易事務 輸入届出書類の作成、検疫所とのやり取り 貿易実務検定、法令知識

水産商社の詳しい業界構造や主要企業については水産商社とはで解説しています。輸出入の実務は、単なる語学力だけでなく、相手国ごとに異なる規制や証明書の要件を正確に把握する専門性が求められる仕事です。

水産物の輸出入に関するよくある質問

Q1: 日本の水産物は輸出と輸入、どちらが多いですか?

輸入の方が圧倒的に多く、2025年の水産物輸入額は約1兆9,626億円で、輸出額4,231億円の4倍を超えています。日本は水産物の輸入超過国です。

Q2: 水産物輸出の主力品目は何ですか?

ホタテ貝が906億円(前年比30.4%増)、ブリが528億円(前年比27.4%増)と、この2品目が輸出額をけん引しています。主な輸出先は米国です。

Q3: 水産物輸入の主力品目は何ですか?

さけ・ます類が約2,811億円、えびが約2,086億円と、金額の大きい輸入品目です。さけ・ます類はチリ・ノルウェー、えびはインド・ベトナムなどから輸入されています。

Q4: 水産物の輸出にはどんな手続きが必要ですか?

輸出相手国・地域の規制に基づき、最終加工施設や保管施設の施設認定、衛生証明書の添付が求められる場合があります。中国向けでは放射性物質検査証明書や産地証明書が必要です。

Q5: 水産物の輸入にはどんな手続きが必要ですか?

生きた水産動物(養殖用)は輸入後に都道府県の着地検査が必要で、輸入許可申請書と検査証明書の写しの提出が求められます。加工品・冷凍品は食品衛生法に基づく輸入届出と検疫所審査が必要です。

Q6: 水産物の輸出入に関わる仕事にはどんなものがありますか?

水産商社での輸出営業、輸入バイヤー、通関・貿易事務などがあります。語学力に加えて、相手国ごとに異なる規制や証明書要件を把握する貿易実務の専門性が求められます。

まとめ:水産物の輸出入のポイント

  • 2025年の水産物輸入額は約1兆9,626億円で、輸出額4,231億円の4倍を超える輸入超過構造
  • 輸出はホタテ(906億円)・ブリ(528億円)が主力、輸入はさけ・ます類(約2,811億円)・えび(約2,086億円)が主力と、品目の傾向が対照的
  • 輸出手続きは相手国の規制に基づく施設認定・衛生証明書が中心、輸入手続きは都道府県の着地検査や食品衛生法の輸入届出が中心
  • 輸出入の実務を担うのは水産商社で、語学力と貿易実務の専門知識が求められる

水産物の輸出動向をさらに詳しく知りたい方は水産物輸出の現状、輸入品の品質管理についてはコールドチェーンの仕組み水産物トレーサビリティも合わせてご覧ください。専門用語は水産業界用語集で確認できます。

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産業界を目指す人と働く人に向けた専門メディアです。詳しくは編集部についてをご覧ください。

参考情報

  • 農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績について」(https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/260203.html)— 輸出額・品目別データの検証に使用
  • ジェトロ「2025年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別と品目別の詳細版)を公表」(https://www.jetro.go.jp/)— 品目別・国別輸出データの検証に使用
  • 水産庁「水産物輸出に係る手続(施設認定、証明書等)について」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/export/exporttetsuzuki.html)— 輸出手続きの検証に使用
  • 動物検疫所「水産動物の検査について」(https://www.maff.go.jp/aqs/topix/fishinfo.html)— 輸入時の着地検査手続きの検証に使用
  • 農林水産省「農林水産物輸出入統計」(e-Stat 政府統計の総合窓口)— 財務省貿易統計を基にした輸入額データの検証に使用



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