日本国内のサーモン養殖ブランドが、2025年時点で113にまで拡大していることをご存じでしょうか。「ご当地サーモン」と呼ばれる各地域のブランドサーモンは年々増加を続け、国内のサーモン市場規模は2025年に約7万2,700トンに到達しています(GII市場調査レポート 2025年時点)。
「日本のサーモン養殖ってどんな種類があるの?」「陸上養殖って最近よく聞くけど実際どうなの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本で養殖されているサーモンの種類から主要産地、そして急速に広がる陸上養殖の最新技術まで、日本のサーモン養殖の全体像を徹底解説します。まず基本的な知識を押さえ、次に産地ごとの特徴、最後に業界の将来展望をお伝えします。
サーモン養殖とは?日本における基本をわかりやすく解説
サーモン養殖とは、サケ・マス類を人工的な環境下で育て、安定的に出荷する水産業の一形態です。日本では1970年代に宮城県でギンザケの海面養殖が本格的に始まり、以来50年以上にわたって技術が蓄積されてきました。
| 項目 | 内容 |
| 定義 | サケ・マス類を管理された環境で飼育し、食用として出荷する養殖業 |
| 日本での歴史 | 1970年代に宮城県でギンザケ海面養殖が開始。2010年代以降急速に全国へ拡大 |
| 特徴 | 天然魚に比べて安定供給が可能。脂のり・サイズを管理できる |
| 市場規模 | 約7万2,700トン(2025年時点、GII調査) |
近年の日本のサーモン養殖が急成長している背景には、「サーモン」が回転寿司ネタの人気No.1として定着したことがあります。従来はノルウェーやチリからの輸入アトランティックサーモンが中心でしたが、国産志向の高まりや物流コストの上昇を受け、国内養殖の需要が急拡大しています。
サーモン養殖の種類・品種|日本で育てられる主な魚種
日本で養殖されているサーモンは、大きく分けて以下の4種類に分類できます。
| 魚種 | 学名 | 特徴 | 主な産地 | 代表ブランド |
| ギンザケ(銀鮭) | Oncorhynchus kisutch | 日本の養殖サーモンの主力。身が柔らかく脂のりが良い | 宮城県 | みやぎサーモン |
| トラウトサーモン(ニジマス) | Oncorhynchus mykiss | 海面養殖すると大型化。鮮やかなオレンジ色の身 | 青森県、長野県、静岡県 | 信州サーモン、富士の介 |
| サクラマス(ヤマメの降海型) | Oncorhynchus masou | 上品な味わいで高級食材。生産量は少ない | 北海道、富山県 | — |
| アトランティックサーモン | Salmo salar | 世界で最も養殖量が多い種。日本でも陸上養殖の動きあり | 千葉県(陸上) | おかそだち(FRDジャパン) |
ギンザケ — 日本養殖サーモンの王道
ギンザケは日本のサーモン養殖において最も生産量が多い魚種です。宮城県が国内生産量の大部分を占めており、「みやぎサーモン」ブランドとして全国に流通しています。冷水を好む特性があり、養殖期間は約1年半〜2年。身が柔らかく脂のりが良いことから、焼き魚や寿司ネタとして幅広く利用されています。
トラウトサーモン — 各地に広がるご当地ブランド
トラウトサーモン(ニジマス)は、淡水で育てたものが「マス」、海面養殖で大型化したものが「トラウトサーモン」と呼ばれます。長野県の「信州サーモン」、山梨県の「富士の介」、青森県深浦町の「日本海深浦サーモン」など、全国各地でご当地ブランドが誕生しています。
長野県の信州サーモンは、ニジマスとブラウントラウトを交配した長野県独自の品種で、卵を持たないため身に栄養が蓄えられ、きめ細かい食感が特徴です。
サクラマス — 幻の高級サーモン
サクラマスはヤマメの降海型で、天然では漁獲量が極めて少なく「幻の魚」とも呼ばれます。養殖の取り組みも行われていますが、飼育が難しく生産量は限定的です。桜の咲く時期に旬を迎えることから名付けられたとされ、上品な脂のりと繊細な味わいが特徴です。
日本のサーモン養殖の主要産地マップ
全国各地に広がるサーモン養殖の主要産地を地域別に整理しました。2025年時点で確認されているご当地サーモンは113ブランドにのぼります(みなと新聞 2025年調査)。
| 地域 | 主要産地 | 養殖方式 | 代表ブランド | 特徴 |
| 北海道 | 各地の沿岸 | 海面養殖 | 北海道サーモン | 冷涼な海水を活かした養殖 |
| 東北 | 宮城県・青森県 | 海面養殖 | みやぎサーモン、深浦サーモン | ギンザケ養殖の中心地 |
| 関東 | 千葉県富津市 | 陸上養殖 | おかそだち(FRDジャパン) | アトランティックサーモンの国内生産 |
| 中部 | 長野県・山梨県・静岡県 | 淡水養殖 | 信州サーモン、富士の介 | 山間部の清流を利用 |
| 北陸 | 富山県 | 海面養殖 | 富山サーモン | 富山湾の深層水を活用 |
| 九州 | 鹿児島県・宮崎県 | 海面・陸上養殖 | — | 温暖な地域での養殖に挑戦 |
注目の産地:青森県深浦町
青森県深浦町は、日本サーモンファームが本格的な海面養殖を展開する注目の産地です。2025年には前年比3割増の3,500トンの出荷を計画しており(日本経済新聞 2024年12月報道)、急速に生産規模を拡大しています。日本海の冷たい海水と白神山地からの豊富な地下水が、良質なサーモンの育成に適しています。
サーモン養殖の方法|海面養殖と陸上養殖の違い
日本のサーモン養殖は「海面養殖」と「陸上養殖」の2つに大別されます。近年は陸上養殖の技術革新が著しく、業界の構造を大きく変えつつあります。
| 比較項目 | 海面養殖 | 陸上養殖 |
| 養殖場所 | 沿岸部のいけす(生簀) | 陸上の閉鎖循環式タンク |
| 水温管理 | 自然の海水温に依存 | 人工的に最適水温を維持 |
| 初期投資 | 比較的低い | 非常に高い(数十〜数百億円) |
| 環境への影響 | 赤潮リスク、海洋汚染の懸念あり | 排水を管理でき環境負荷が低い |
| 生産の安定性 | 台風・赤潮等の自然災害リスクあり | 外部環境に左右されにくい |
| 寄生虫リスク | アニサキス等のリスクあり | 管理された水のためリスクが極めて低い |
| 代表的な事業者 | 日本サーモンファーム、ニッスイ | FRDジャパン、丸紅 |
陸上養殖の最新動向(2026年時点)
陸上養殖は、日本のサーモン養殖における最大のトレンドです。以下に主要プロジェクトの動向をまとめます。
FRDジャパン(千葉県富津市) — アトランティックサーモンの陸上養殖を手がける国内のパイオニア。ブランド名「おかそだち」で知られ、2026年2月に富津ファームの部分引き渡しが完了し、本格的な生産活動を開始しました。閉鎖循環式(RAS)技術を採用し、海水を使わずに養殖が可能です。
丸紅 — 陸上養殖サーモンの流通・販売に参入。2024年10月から店頭販売を開始しています。
三菱商事 — 2025年にノルウェーの養殖大手グリーグ・シーフードを約1,500億円で買収し、世界第2位のサーモン養殖企業グループとなりました(日本経済新聞 2025年報道)。日本国内への安定供給体制の強化が期待されています。
ニッスイ — 2025年に前年比17%増の3,400トンの出荷を計画(日本経済新聞 2024年12月報道)。海面養殖を中心に事業を展開しています。
サーモン養殖のメリット・魅力
日本でサーモン養殖が急成長している背景には、複数のメリットがあります。
安定供給が可能 — 天然サケは回遊パターンや海水温の変化によって漁獲量が大きく変動しますが、養殖であれば計画的な出荷が可能です。特に陸上養殖は季節を問わず安定した生産ができます。
品質の管理がしやすい — 飼料の配合や水温管理によって、脂のり・身質・サイズをコントロールできます。結果として、一定品質の商品を安定的に供給できるのが養殖の強みです。
食の安全性 — 特に陸上養殖のサーモンは、管理された清浄な水で育てられるため、アニサキスなどの寄生虫リスクが極めて低いことが大きなメリットです。生食用として安心して提供できます。
地域経済への貢献 — ご当地サーモンは地域の特産品として観光資源にもなり、雇用創出や地域ブランディングにも寄与しています。全国113ブランドという広がりが、その影響力を物語っています。
サーモン養殖の注意点・課題
一方で、サーモン養殖には以下のような課題も存在します。
初期投資の大きさ — 特に陸上養殖は設備投資が莫大です。FRDジャパンの富津ファームのような大型施設は数百億円規模の投資が必要であり、中小事業者が参入するハードルは高いのが現状です。
飼料コスト — サーモンの飼料には魚粉やフィッシュオイルが含まれますが、これらの原料価格は近年上昇傾向にあります。飼料コストは養殖経費の50〜60%を占めるとされ、収益性に直結する課題です。
環境への影響 — 海面養殖では、飼料の残渣や排泄物による海洋環境への影響が指摘されています。ノルウェーなどでは養殖場周辺の生態系への影響が問題視されており、日本でも持続可能な養殖方法の確立が求められています。
疾病管理 — 養殖魚は密集した環境で飼育されるため、感染症が広がりやすいリスクがあります。水温管理や飼育密度の最適化、ワクチン接種などの対策が不可欠です。
現場の声|サーモン養殖の実際
水産業界の関係者からは、「サーモン養殖はこの10年で最も劇的に変わった分野」という声がよく聞かれます。かつては宮城県のギンザケがほぼすべてだった国内養殖サーモンの世界に、北海道から九州まで多様なプレイヤーが参入し、まさに「サーモン養殖戦国時代」と呼べる状況です。
実際に養殖現場を取材すると、特に陸上養殖の設備の先進性には驚かされます。水質モニタリングはリアルタイムでデジタル管理され、飼料の投入量もAIで最適化される施設が増えています。一方で、「結局は魚を育てる仕事。データだけでは読めない魚の体調変化を見極める経験と観察力が必要」と語るベテラン養殖師もいます。
水産業界でのキャリアを考えている方にとって、サーモン養殖は成長分野として注目に値します。IT技術と水産業の融合が進んでおり、水産学の知識だけでなく、IoTやデータ分析のスキルを持つ人材の需要が高まっています。
サーモン養殖に関するよくある質問
Q1: 日本の養殖サーモンと輸入サーモンは何が違いますか?
最大の違いは鮮度です。国産養殖サーモンは水揚げから消費者に届くまでの時間が短く、鮮度の高い状態で提供できます。また、飼料や養殖環境が日本の基準で管理されているため、食の安全面でも透明性が高いと言えます。味わいの面では、輸入のアトランティックサーモンは脂のりが強い傾向がある一方、国産トラウトサーモンはさっぱりとした上品な味わいが特徴です。
Q2: サーモン養殖を始めるにはどのくらいの費用がかかりますか?
規模によって大きく異なります。小規模な淡水養殖であれば数千万円からスタート可能ですが、海面養殖は生簀・稚魚・飼料を含めて数億円規模、大型の陸上養殖施設は数十〜数百億円の投資が必要です。自治体の補助金制度や水産庁の支援策を活用できる場合もあります(2026年3月時点)。
Q3: 陸上養殖のサーモンは味が落ちるのでは?
必ずしもそうではありません。陸上養殖では水温・水質・飼料を精密に管理できるため、むしろ品質の安定性では海面養殖を上回る場合があります。FRDジャパンの「おかそだち」は寿司店やレストランでも高い評価を得ています。ただし、海流の中で育った海面養殖のサーモンには身の締まりの良さがあり、好みは分かれます。
Q4: ご当地サーモンはどこで買えますか?
各ブランドの直売所やオンラインショップ、ふるさと納税の返礼品として購入できます。また、全国のスーパーやデパ地下でも「信州サーモン」「みやぎサーモン」などの主要ブランドは比較的入手しやすくなっています。地元の道の駅でしか手に入らない希少ブランドもあるため、旅行の際にチェックしてみてください。
Q5: サーモン養殖は環境に悪いのですか?
養殖方法によって異なります。海面養殖では飼料残渣や排泄物による水質汚染のリスクがありますが、適切な管理と養殖密度の制限によって影響を最小化できます。陸上養殖は閉鎖循環式のため海洋への直接的な影響はほぼありません。日本の養殖事業者の多くは、持続可能な養殖認証(ASC認証など)の取得を目指しており、環境への配慮は年々強化されています。
Q6: 日本のサーモン養殖市場は今後どうなりますか?
市場調査レポートによると、日本のサーモン市場は2026年〜2034年にかけてCAGR(年平均成長率)3.27%で成長し、2034年には約9万7,100トンに達すると予測されています(GII市場調査 2025年時点)。特に陸上養殖の商業化が進むことで、国産比率の向上が期待されています。
まとめ:日本のサーモン養殖は「成長産業」
日本のサーモン養殖のポイントを整理します。
- **113ブランド**が全国に存在し、ご当地サーモンが急拡大中(2025年時点)
- 主な養殖魚種は**ギンザケ・トラウト・サクラマス・アトランティックサーモン**の4種
- **陸上養殖**が大きなトレンド — FRDジャパン、丸紅など大手が本格参入
- 市場規模は**2034年に約9万7,100トン**まで成長見込み
- 水産業界のキャリアとしても注目度が高い分野
サーモン養殖は日本の水産業の中でも最も活気のある成長分野です。水産業界に興味がある方は、まず各地のご当地サーモンを食べ比べてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
魚の保存・加工方法に興味がある方は、干物の作り方ガイドもぜひ参考にしてみてください。
参考情報
- 日本経済新聞「国産サーモン、25年も大幅増産へ 陸上養殖に異業種続々」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB123O00S4A211C2000000/)
- みなと新聞「拡大するご当地サーモン市場 全国産地マップ2025」(https://note.com/minatoshimbun/n/ncd0a17fa84ba)
- GII「日本のサーモン市場 市場規模 成長性 産業動向 予測 2026-2034年」(https://www.gii.co.jp/report/imarc1922660-japan-salmon-market-report-by-type-farmed-wild.html)
- FRDジャパン公式サイト「陸上養殖生サーモン おかそだち」(https://frd-j.com/)
- 株式会社オカムラ食品工業「世界のサーモン養殖事情」(https://www.okamurashokuhin.co.jp/special/mamechishiki/01/)


コメント