漁船の種類と大きさを徹底解説|トン数別・漁法別の特徴一覧

漁船の種類と大きさを徹底解説|トン数別・漁法別の特徴一覧 漁業・漁法

最終更新: 2026-05-17

「漁船 種類」の検索関心は安定した需要があり、2026年5月時点でピークを記録しています(Google Trends調べ)。漁業に興味を持つ方が増えているいま、「漁船ってどんな種類があるの?」「大きさはどう分かれているの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

農林水産省の統計によると、日本の海面漁業・養殖業の産出額は約1兆4,228億円(e-Stat 統計表ID: 0001886486)に上り、この巨大な産業を支えているのが多種多様な漁船です。しかし、漁船と一口にいっても数メートルの小舟から全長60メートルを超える遠洋船まで、その種類は多岐にわたります。

この記事では、漁船の種類をトン数別・漁法別に体系的に整理し、船体の構造や装備の違いまで詳しく解説します。まずトン数による基本分類を押さえ、次に漁法別の船型特徴、そして現代漁船のテクノロジーについてお伝えします。

漁船とは?基本をわかりやすく解説

漁船とは、水産動植物の採捕を目的として使用される船舶のことです。漁船法では、漁船を「もっぱら漁業に従事する船舶」と定義しています。

項目 内容
定義 水産動植物の採捕・運搬・加工に使用される船舶
法的根拠 漁船法(昭和25年法律第178号)
登録制度 総トン数20トン未満は都道府県、20トン以上は国土交通省が管轄
日本の漁船数 約12万隻(2023年漁業センサス)

漁船は大きく分けて「漁猟船(直接魚を獲る船)」「運搬船(漁獲物を運ぶ船)」「母船・工船(洋上で加工する船)」の3つに分類されます。このうち最も数が多いのが漁猟船で、日本の登録漁船の90%以上を占めています。

漁船の種類|トン数による分類

漁船の大きさを示す最も一般的な指標が「総トン数」です。ここで注意したいのは、総トン数は重量ではなく船内の容積を表す数値だという点です。1総トン=2.83立方メートルの容積に相当します。

小型漁船(総トン数20トン未満)

日本の漁船で最も数が多いのが小型漁船です。全登録漁船の約95%がこのカテゴリに含まれます。

区分 トン数 全長の目安 主な漁法 操業海域
1トン未満 0.1〜0.9t 3〜5m 素潜り・磯漁・採貝 沿岸(港周辺)
1〜5トン 1〜4.9t 5〜12m 刺し網・一本釣り・小型定置網 沿岸(日帰り)
5〜10トン 5〜9.9t 12〜16m 刺し網・小型底引き・イカ釣り 沿岸〜近海
10〜20トン 10〜19.9t 16〜22m 中型まき網・延縄・カニかご 近海(1〜3日航海)

小型漁船は船外機付きのFRP(繊維強化プラスチック)製が主流で、漁港で最もよく見かけるタイプです。1人〜数人で操業でき、燃料費や維持費を抑えられるのが利点です。

中型漁船(総トン数20〜100トン)

中型漁船は沿岸から沖合にかけて操業する船で、乗組員は5〜15名程度です。

区分 トン数 全長の目安 主な漁法 操業海域
20〜50トン 20〜49.9t 20〜28m まき網・中型底引き網・サンマ棒受網 沖合(3〜7日航海)
50〜100トン 50〜99.9t 28〜35m 大中型まき網・沖合底引き網 沖合(1〜2週間航海)

中型漁船からは鋼製船体が増え、冷蔵設備や魚群探知機などの電子機器が充実してきます。操業海域が広がるため、安全性と居住性のバランスが重要になります。

大型漁船(総トン数100トン以上)

大型漁船は遠洋漁業に従事する船で、数ヶ月にわたる長期航海に耐えうる設備を備えています。

区分 トン数 全長の目安 主な漁法 操業海域
100〜200トン 100〜199t 35〜45m 近海マグロ延縄・近海カツオ一本釣り 近海〜遠洋
200〜500トン 200〜499t 45〜55m 遠洋マグロ延縄・遠洋カツオ一本釣り 遠洋(太平洋・インド洋)
500トン以上 500t〜 55〜65m以上 遠洋カツオ一本釣り・北洋トロール 遠洋(世界各海域)

遠洋カツオ一本釣り船は500トンクラスで全長60〜65メートルに達し、1航海あたり30〜80日以上の操業を行います。北洋トロール船になると2,500〜3,000トン級のものもあり、洋上で水産加工まで行える設備を持ちます。

漁船の種類|漁法別の船型と特徴

漁船は「何を、どうやって獲るか」によって船体の形状や装備が大きく異なります。ここでは代表的な漁法ごとの船型特徴を解説します。

漁法 代表的な船のサイズ 船型の特徴 主な漁獲対象
定置網漁船 1〜10トン 平底・浅喫水で安定性重視 ブリ・サケ・イワシ
底引き網漁船 15〜100トン 船尾にウインチ・広い作業甲板 カレイ・エビ・タコ
まき網漁船 50〜200トン 高速航行可能・魚群探知機搭載 サバ・アジ・イワシ
延縄漁船 10〜499トン 船尾に投縄台・ラインホーラー装備 マグロ・カジキ
カツオ一本釣り船 100〜500トン 船首〜船尾に釣り台・活餌水槽 カツオ
トロール船 250〜3,000トン 船尾にスリップウェー・ギャロス装備 スケトウダラ・カレイ類
イカ釣り漁船 5〜100トン 集魚灯多数搭載・自動イカ釣り機 スルメイカ・アカイカ

定置網漁船の特徴

定置網漁の仕組みで使用する漁船は、比較的小型で安定性を重視した設計です。網の設置・回収作業のために甲板が広く取られ、漁獲物を積み込むスペースも確保されています。定置網は港から近い沿岸に設置するため、航行速度よりも作業性が優先されます。

底引き網漁船の特徴

底引き網漁に使用される漁船は、海底に沿って網を引くための強力なウインチと太いワイヤーを装備しています。船尾から網を投入・回収する「船尾式」が現在の主流で、網を引く際の強い抵抗に耐えるため、エンジン出力が大きいのも特徴です。

まき網漁船の特徴

巻き網漁は船団を組んで操業するのが一般的です。網船(本船)、探索船(魚群を探す)、運搬船(漁獲物を港に運ぶ)の3種類で構成され、網船は魚群を素早く取り囲む必要があるため高速航行性能が求められます。

延縄漁船の特徴

延縄漁の仕組みに使われる漁船は、何十キロメートルにも及ぶ幹縄を効率よく投入・回収するための装備が特徴です。船尾にラインホーラー(縄巻き機)を装備し、自動投縄装置を持つ近代的な船も増えています。マグロ延縄船では漁獲物の鮮度を保つため、-60℃の超低温冷凍庫を装備するのが一般的です。

カツオ一本釣り船の特徴

カツオ一本釣り船は、船首から船尾まで釣り台が設けられた独特の形状をしています。活きた餌(カタクチイワシなど)を保管する大型の活餌水槽を船内に持ち、散水装置で海面を叩いてカツオを興奮させる「撒き水」の仕組みも備えています。現代では1隻500トンクラスが標準的で、乗組員は25〜30名程度です。

漁船の船体構造と素材

漁船の船体素材は大きさによって異なり、近年は技術の進歩で素材も多様化しています。

素材 主なサイズ メリット デメリット
FRP(繊維強化プラスチック) 20トン未満 軽量・腐食しない・成形自由 大型化が困難・廃船処理が課題
鋼(鉄) 20トン以上 強度が高い・大型化可能・修理容易 錆びやすい・定期的な塗装が必要
アルミ合金 5〜50トン 軽量・腐食に強い・高速化向き コストが高い・溶接技術が必要
木造 20トン未満 伝統工法・地域資源活用 耐久性に限界・職人減少

日本の小型漁船はFRP製が圧倒的多数を占めています。1970年代以降に木造からFRPへの転換が急速に進み、2017年の漁船統計では隻数ベースで97%がFRP製となっています(水産庁調べ)。しかし近年、FRP漁船の廃船処理(リサイクル)が環境問題として注目されており、水産庁も対策を進めています。

現代漁船に搭載される最新テクノロジー

現場の漁師たちに聞くと、「20年前と今の漁船はまるで別物」という声が多く聞かれます。現代の漁船には、操業効率と安全性を高めるためのさまざまなテクノロジーが搭載されています。

装備 機能 搭載の目安(船のサイズ)
GPS・プロッター 位置情報の把握・航路記録 1トン以上(ほぼ全船)
魚群探知機 魚群の位置・深度を探知 1トン以上(ほぼ全船)
ソナー 船の周囲360度の魚群探索 5トン以上
レーダー 他船・障害物の検知 5トン以上
AIS(船舶自動識別装置) 船舶同士の衝突回避 20トン以上(義務化)
衛星通信 洋上での通信手段確保 20トン以上
超低温冷凍庫(-60℃) マグロの鮮度保持 遠洋マグロ延縄船
自動操舵装置 航行中の省力化 10トン以上

特に注目すべきは、近年のICT(情報通信技術)活用です。水温・潮流データをリアルタイムで受信し、AIが最適な操業ポイントを提案するシステムも実用化が進んでいます。ベテラン漁師の経験とデータ分析の融合が、次世代漁業のスタンダードになりつつあります。

漁船の取得方法と費用の目安

漁船の購入を検討している方や、漁師を目指している方にとって気になるのが費用です。

船のタイプ 新造費の目安 中古相場 耐用年数
小型FRP船(1〜5トン) 500万〜2,000万円 100万〜800万円 15〜20年
中型FRP船(5〜20トン) 2,000万〜8,000万円 500万〜3,000万円 15〜20年
鋼製中型船(20〜100トン) 1億〜5億円 2,000万〜2億円 20〜30年
大型遠洋船(100トン以上) 5億〜30億円 1億〜10億円 25〜35年

実際に新規就漁する場合、中古の小型漁船(5トン未満)を数百万円で購入するケースが多いです。自治体によっては漁船取得に対する補助金制度がある地域もあるため、各地の漁業協同組合に相談するのが現実的な第一歩です。漁業の後継者募集を利用すれば、船と漁業権をセットで引き継げるケースもあります。

漁船に関するよくある質問

Q1: 漁船を操縦するのに免許は必要ですか?

はい、必要です。総トン数20トン未満の小型船舶には「小型船舶操縦士免許」が必要で、1級(航行区域無制限)と2級(5海里以内)があります。20トン以上の船舶には「海技士免許」が必要で、航海士・機関士などの資格が求められます。

Q2: 漁船の燃費はどれくらいですか?

船のサイズと速度によって大きく異なります。5トン級の小型漁船で1時間あたり20〜40リットル、100トン級では1時間あたり200〜500リットルが目安です。燃油高騰が漁業経営に大きく影響するため、省エネ型エンジンへの換装が進んでいます。

Q3: 漁船の寿命はどれくらいですか?

FRP製の小型漁船で15〜20年、鋼製の中〜大型漁船で20〜35年が一般的な耐用年数です。ただし定期的なメンテナンス(船底塗装、エンジン整備など)を行えば、それ以上使い続けることも可能です。

Q4: 「総トン数」と「排水トン」は何が違いますか?

総トン数は船内の容積(1総トン=2.83立方メートル)を表す数値で、排水トンは船が排除する水の重量(=船の実際の重さ)を表します。漁船の登録や規制にはほぼ総トン数が使われます。

Q5: 個人で漁船を持つことはできますか?

法律上は可能です。ただし漁業に使用する場合は「漁船登録」が必要で、登録には漁業協同組合の正組合員であること(漁業権を持つこと)が条件になるのが一般的です。レジャー用途のプレジャーボートとして所有する場合は、別の登録制度(小型船舶登録)が適用されます。

Q6: 漁船の速度はどれくらいですか?

小型漁船で時速20〜40km(約10〜20ノット)、大型まき網船で時速30〜50km(約15〜27ノット)程度です。カツオ一本釣り船は魚群を追いかける必要があるため、大型船の中でも高速性能が求められ、最高速度は時速35km前後に達します。

関連記事: 刺し網漁の種類を徹底解説|底刺網・流し刺網・浮刺網の特徴と仕事のリアル

まとめ:漁船の種類と大きさのポイント

  • 漁船は総トン数で「小型(20トン未満)」「中型(20〜100トン)」「大型(100トン以上)」に大別される
  • 日本の漁船の約95%は小型漁船で、FRP製・沿岸操業が主流
  • 漁法ごとに船型は大きく異なり、底引き網船・まき網船・延縄船・一本釣り船などの特化型がある
  • 遠洋漁業の大型船は数百〜数千トン規模で、冷凍設備や加工施設を備える
  • 現代漁船にはGPS・魚群探知機・AISなどのハイテク装備が標準搭載されている

漁船の種類を理解すると、漁業の多様性や各漁法の特徴がより深く見えてきます。漁業への就職や転職を考えている方は、「どの漁法の船に乗りたいか」から考えると、具体的なキャリアプランが立てやすくなります。

沿岸漁業と沖合漁業の違い遠洋漁業の種類についてはそれぞれの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

参考情報

  • 農林水産省「漁業産出額」(e-Stat 統計表ID: 0001886486、2023年時点データ)
  • 水産庁「漁船の構造の変化」(水産白書)
  • 漁師.jp(全国漁業就業者確保育成センター)「漁業種類別情報」
  • Wikipedia「漁船」
  • 東京海洋大学「漁船学テキスト」



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