最終更新: 2026-07-03
農林水産省の統計によると、日本の漁業就業者数は2022年時点で12万3,100人と前年比4.8%減少し、減少傾向が続いています(e-Stat 統計表ID: 0001886486)。一方で、漁業就業支援フェア2026夏は東京・大阪・福岡の3会場で開催が予定されるなど、漁師を目指す都市部の若者に向けた支援の動きは年々活発化しています。
「漁師になりたいけれど、地方への移住費用が不安」「どの自治体にどんな支援制度があるのかわからない」。こうした悩みを持つ方は少なくありません。
この記事では、国と自治体が用意する漁師向け移住支援制度の全体像を整理し、補助金の具体的な金額から申請の流れまで網羅的に解説します。まず国の支援制度を確認し、次に自治体別の手厚い支援事例を比較、最後に移住までの具体的なステップをお伝えします。
漁師の移住支援制度とは?全体像を把握しよう
漁師の移住支援制度とは、都市部から漁村地域へ移住して漁業に従事しようとする人に対し、国や地方自治体が経済的・技術的な支援を行う仕組みです。漁業就業者の高齢化と後継者不足を背景に、各地で制度が充実しています。
支援の内容は大きく4つに分類できます。
| 支援カテゴリ | 主な内容 | 支給元 |
|---|---|---|
| 移住支援金 | 東京圏からの移住で最大100万円(世帯)、起業支援併用で最大300万円 | 国(内閣府)・都道府県 |
| 漁業研修支援 | 研修期間中の生活費補助(月額12万〜15万円程度) | 都道府県・市町村 |
| 経営開始資金 | 独立就業時の資金支援(年間最大150万円) | 水産庁・都道府県 |
| 住居・生活支援 | 住居の提供・家賃補助、引越し費用の助成 | 市町村・漁協 |
ここで押さえておきたいのは、国の制度と自治体独自の制度は併用できるケースが多いという点です。組み合わせ方によっては、移住にかかる初期費用をかなり抑えられます。
漁師の移住支援制度を探す際の総合窓口として、全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)のサイトが便利です。都道府県別・市町村別の支援制度を一覧で確認でき、漁業就業支援フェアの開催情報も掲載されています。
漁師としてのキャリアの全体像については、漁師になるには?未経験から始めるロードマップで詳しく解説しています。
国の移住支援制度|最大300万円の支援金を受け取る方法
国が用意する移住支援制度のうち、漁師を目指す方が活用できる主要なものを紹介します。
地方創生移住支援事業(移住支援金)
内閣府が推進する「地方創生移住支援事業」は、東京23区に在住または通勤していた方が地方へ移住する場合に支援金を支給する制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の条件不利地域を除く)から地方に移住する方 |
| 支給額(世帯) | 最大100万円 |
| 支給額(単身) | 最大60万円 |
| 子ども加算 | 18歳未満の子ども1人につき最大100万円 |
| 起業支援併用 | 起業支援金(最大200万円)との併用で合計最大300万円 |
| 就業要件 | 移住先で就業(漁業含む)または起業すること |
注意点として、対象となる移住先は都道府県が指定する市町村に限られます。自分が移住を考えている地域が対象かどうか、事前に各都道府県のホームページで確認してください。
漁業人材育成総合支援事業
水産庁が実施する事業で、新規漁業就業者の確保・育成を目的としています。具体的には、漁業学校等での研修中に就業準備資金が支給されるほか、指導漁業者のもとで実地研修を受ける際の費用も支援されます。
研修期間中の生活費として月額12万〜15万円程度が支給されるケースが一般的です。ただし、金額や要件は年度によって変動するため、最新情報は水産庁の公式サイトで確認することをおすすめします。
自治体別の移住支援制度を比較|手厚い5つの地域
全国の自治体が独自に設けている移住支援制度は内容も金額もさまざまです。ここでは、漁業への新規就業者向けに特に手厚い支援を行っている5つの地域を紹介します。
| 自治体 | 主な支援内容 | 補助金額の目安 | 住居支援 |
|---|---|---|---|
| 高知県 | 研修費・渡航費補助、技術指導マッチング、漁業体験プログラム | 研修中の生活費補助あり | 漁村での住居あっせん |
| 宇和島市(愛媛県) | 就業支度金・定住支援金の給付、研修制度 | 就業支度金+定住支援金 | 移住者向け住居提供 |
| 下関市(山口県) | 漁船等リース事業、経営自立化支援 | 対象事業費の1/2(上限800万円) | あり |
| 鳥取県 | 経営開始資金、研修中生活支援、資格取得費助成 | 経営開始資金150万円/年、研修中月額15万円 | あり |
| 西ノ島町(島根県) | 機材取得費補助、技術指導者への補助 | 機材等経費の2/3 | あり |
高知県:漁業就業の総合サポート
高知県は「高知で漁師」という専用ポータルサイトを運営し、漁業体験から移住・就業まで一貫したサポートを提供しています。県内各地の漁業の特色を紹介するとともに、実際に移住した先輩漁師の体験談も充実しています。
高知県の特徴は、移住前の段階から漁業体験プログラムを用意している点です。短期体験で漁村の暮らしを実感してから移住を決められるため、ミスマッチを防ぎやすい仕組みになっています。
下関市:漁船リース事業で初期投資を軽減
山口県下関市は、新規漁業就業者向けに漁船等リース事業を実施しています。対象事業費の1/2以内(上限800万円)が補助されるため、自営漁業を始める際の最大のハードルである漁船の購入費を大幅に抑えられます。対象は50歳未満で就業後3年以内の新規漁業就業者、または長期漁業技術研修を1年以上実施した研修生です(2026年7月時点)。
漁船や漁具の購入費は数百万円から数千万円に達することもあり、この補助は大きな支えになります。
鳥取県:研修から経営開始まで切れ目ない支援
鳥取県は、研修期間中の生活支援金として県・市町村合わせて月額15万円以内を支給し、経営を開始してからは年間最大150万円の経営開始資金を給付しています。さらに、漁業に必要な資格取得費用に対して1/2(上限30万円)の助成もあり、研修から独立までの各段階で途切れることなく支援を受けられる点が魅力です。
支援制度を活用して実際に就業している方の声として、「研修中の生活費の心配がなく、技術習得に集中できた」という意見が聞かれます。
住み込みで漁業を学べる求人情報については、漁師求人 住み込みガイドも参考にしてください。
移住して漁師になるまでの5ステップ
漁師への移住は、思い立ってすぐに実行できるものではありません。情報収集から実際の就業開始まで、一般的に半年から1年程度の準備期間が必要です。ここでは、具体的なステップを順番に解説します。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 全体の所要期間 | 6か月〜1年半 |
| 費用(支援制度活用時) | 引越し費用20万〜50万円程度(支援制度で大幅軽減可能) |
| 難易度 | 計画的に進めれば未経験でも実現可能 |
| 必要なもの | 普通自動車免許(漁村では必須)、体力、家族の理解 |
Step 1: 情報収集と地域選び
まずは漁師.jp(全国漁業就業者確保育成センター)のサイトで、都道府県別の支援制度や求人情報を確認しましょう。漁業就業支援フェアへの参加も情報収集に効果的です。2026年は夏季に東京(7月21日)・大阪(7月26日)・福岡(7月5日)で開催されており、全国の漁業団体と直接話ができます。
地域を選ぶ際のポイントは3つです。
- 漁業の種類(沿岸漁業・養殖・遠洋漁業など、自分がやりたい漁業があるか)
- 支援制度の充実度(補助金額、研修期間、住居支援の有無)
- 生活環境(スーパーや病院の距離、家族帯同の場合は学校の有無)
漁師の仕事内容ガイドで漁業の種類ごとの働き方を事前に確認しておくと、地域選びの精度が上がります。
Step 2: 漁業体験・現地視察
気になる地域が見つかったら、漁業体験プログラムや現地視察に参加します。多くの自治体が1泊2日〜1週間程度の体験プログラムを用意しており、渡航費の一部を補助してくれる地域もあります。
体験のチェックポイントとしては、以下の点を確認してください。
- 実際の漁の流れ(出港時間、作業内容、帰港後の作業)
- 漁村の雰囲気と人間関係
- 住居の候補(広さ、設備、周辺環境)
- 先輩移住者の本音(良い面も大変な面も)
漁業体験について詳しくは漁師体験ガイドで紹介しています。
Step 3: 支援制度への申請
移住先が決まったら、利用する支援制度を整理して申請手続きに入ります。国の移住支援金と自治体独自の制度は申請窓口が異なるため、それぞれの手続きを並行して進めます。
申請の際に注意すべき点として、多くの制度には「移住前に申請が必要」という要件があります。移住してから申請しても対象外になるケースがあるため、必ず移住前に申請手続きを済ませてください。
Step 4: 研修期間(3か月〜2年)
多くの地域では、自営漁業者として独立する前に研修期間が設けられています。期間は3か月から2年程度で、ベテラン漁師のもとで漁の技術や経営のノウハウを学びます。
研修中は生活支援金が支給されるほか、漁業に必要な小型船舶操縦免許や海上特殊無線技士の資格取得費用を助成してもらえる制度もあります。
漁業に必要な資格については漁業資格の種類と取り方を参考にしてください。
Step 5: 独立就業・経営開始
研修を修了したら、いよいよ自営漁業者として独立します。独立時には漁業権の取得(区画漁業権・共同漁業権は漁協を通じて取得)や漁船・漁具の調達が必要になります。
この段階で経営開始資金や漁船リース事業の支援制度が活きてきます。漁業権の取得手続きについては漁業権の取得方法ガイドで詳しく解説しています。
移住前に知っておきたい注意点と失敗を防ぐコツ
移住して漁師になることは大きな決断です。事前に知っておくべき注意点をまとめました。
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 漁村の人間関係になじめない | 事前の交流不足 | 漁業体験や短期滞在で地域の雰囲気を確認 |
| 収入が想定より少ない | 漁業の季節変動を考慮していない | 先輩漁師に年間の収入サイクルを確認 |
| 家族の理解が得られない | 移住後の生活イメージを共有していない | 家族と一緒に現地視察へ行く |
| 支援制度の申請漏れ | 情報収集不足 | 漁師.jpや自治体の窓口で制度を網羅的に確認 |
| 漁業の仕事が合わなかった | 体験せずに移住を決めた | 短期体験プログラムで適性を見極める |
2026年5月の報道では、30歳で脱サラして漁師に転身した方が「思いがない人は難しい」と語っています。移住を成功させた方に共通しているのは、事前の情報収集と体験に十分な時間をかけている点です。
漁師への転職で起こりがちな失敗パターンについては、漁師転職の失敗事例と回避策で実例をもとに解説しています。
漁師の移住支援に関するよくある質問
Q1: 漁師の移住支援は誰でも利用できますか?
制度によって対象者の要件が異なります。国の移住支援金は東京圏からの移住が条件ですが、自治体独自の支援制度は居住地域を問わないものも多くあります。年齢制限を設けている自治体もあるため、事前に確認してください。2022年度の新規漁業就業者数は1,691人で、20代〜30代の就業者が増加傾向にあります。
Q2: 移住支援の補助金はいつ受け取れますか?
制度によって支給のタイミングは異なります。移住支援金は移住後に申請・支給されるのが一般的です。研修中の生活支援金は毎月支給される場合が多く、経営開始資金は独立就業後に年単位で支給されます。いずれも申請から支給まで1〜2か月程度かかることがあるため、当面の生活資金は自己資金で確保しておきましょう。
Q3: 家族がいても移住支援は受けられますか?
はい、受けられます。多くの制度は家族帯同を前提とした支援を行っています。国の移住支援金は世帯の場合100万円(単身は60万円)で、18歳未満の子ども1人につき最大100万円が加算されます。住居支援として家族向けの住宅を用意している自治体もあります。
Q4: 移住前に漁業を体験する方法はありますか?
あります。多くの自治体が短期体験プログラム(1泊2日〜1週間程度)を用意しており、渡航費の補助を受けられることもあります。また、漁業就業支援フェアでは各地の漁業団体と直接話ができるため、体験プログラムの情報収集にも最適です。2026年夏は7月21日(東京)、7月26日(大阪)に開催予定です。
Q5: 漁業未経験でも移住支援を受けて漁師になれますか?
はい、未経験者を対象とした支援制度も数多くあります。鳥取県のように研修期間中の生活費を月額15万円支給し、ベテラン漁師からの技術指導を最長2年間受けられる制度もあります。島根県では県の新規自営漁業者育成事業として実践的な技術指導プログラムを実施しています。未経験から漁師を目指す方法については[未経験OKの漁師求人ガイド](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fisherman-jobs-inexperienced/)も参考にしてください。
Q6: 移住支援金を受け取った後、漁師をやめた場合はどうなりますか?
国の移住支援金には定住要件があり、一定期間内(通常5年以内)に移住先を離れた場合、支援金の全額または一部の返還を求められることがあります。自治体独自の制度も同様の条件を設けている場合があるため、申請時に返還条件を必ず確認してください。
関連記事: マグロ漁師の年収はいくら?階級・漁法別の収入相場を徹底解説
関連記事: 漁師に転職するには?未経験からの5ステップと支援制度を徹底解説
まとめ:漁師の移住支援を活用して新しいキャリアを始めよう
漁師の移住支援制度について、要点を整理します。
- 国の移住支援金(世帯最大100万円・単身60万円)と自治体独自の制度は併用できる場合が多い
- 研修期間中は月額12万〜15万円程度の生活支援金が支給される制度がある
- 下関市の漁船リース事業(補助率1/2、上限800万円)のように、独立時の初期投資を抑える制度も充実
- 移住前の漁業体験プログラムを活用して、ミスマッチを防ぐことが成功のポイント
- 申請のタイミングに注意(移住前に手続きが必要な制度が多い)
まずは漁師.jp(全国漁業就業者確保育成センター)のサイトで最新の支援制度を確認し、漁業就業支援フェアへの参加を検討してみてください。2026年夏のフェアは7月21日(東京)と7月26日(大阪)で開催予定です。
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参考情報
- 全国漁業就業者確保育成センター「漁師.jp」各種支援制度情報(https://www.ryoushi.jp/shienseido/)
- 水産庁「漁業の就業者をめぐる動向」令和5年度水産白書(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r05_h/trend/1/t1_2_3.html)
- 内閣府「地方創生移住支援事業」
- 農林水産省 漁業産出額 都道府県別・主要魚種別(e-Stat 統計表ID: 0001886486)
- 下関市「漁師になるなら下関」(https://www.city.shimonoseki.lg.jp/soshiki/60/93360.html)
- 高知県「高知で漁師」漁業就業ポータル(https://kochi-ryoushi.jp/)
- 鳥取県「漁業新規就業者支援」(https://www.pref.tottori.lg.jp/44487.htm)


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