最終更新: 2026-07-04
農林水産省の漁業産出額データによると、まぐろ類の海面漁業産出額は全国で約1,237億円にのぼります(e-Stat 統計表ID: 0001886486)。それだけ巨額のお金が動くマグロ漁の世界で、漁師たちはどのくらいの年収を得ているのでしょうか。
「マグロ漁師は稼げるって聞いたけど、実際の手取りはどれくらい?」「未経験から乗船して、何年で年収1,000万円を超えられるの?」と気になっている方は多いはずです。
この記事では、遠洋マグロ延縄船の階級別年収から近海一本釣りの収入事情、さらに養殖マグロ事業者の所得まで、あらゆる角度からマグロ漁師の年収を解説します。まず全体の相場感を押さえたあと、階級ごとの収入差、漁法による違い、給料の仕組み、そしてキャリアパスに沿った年収の伸ばし方をお伝えします。
マグロ漁師の年収相場|全体像をまず把握
マグロ漁師の年収は、経験年数・階級・漁法・水揚げ実績によって大きく変動します。一般的な年収レンジは以下のとおりです。
| 区分 | 年収レンジ | 備考 |
|---|---|---|
| 遠洋マグロ延縄船(全階級平均) | 360万〜2,000万円超 | 階級差が非常に大きい |
| 近海マグロ一本釣り | 300万〜1,000万円超 | 水揚げ実績に大きく左右される |
| 養殖マグロ事業者(経営体) | 平均約1,533万円 | 農林水産省 漁業経営統計 令和5年、個人経営体の漁労所得 |
| 漁師全体の平均 | 約352万円 | 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 令和6年 |
漁師全体の平均年収が約352万円(厚生労働省 賃金構造基本統計調査 令和6年)であるのに対し、マグロ漁師は全般的に高い水準にあります。特に遠洋マグロ延縄船では、新人であっても年収360万円以上が見込め、船長・漁労長クラスでは年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
ただし、この数字だけを見て「マグロ漁師は高収入」と判断するのは早計です。遠洋漁業では1航海が約1年に及ぶこともあり、船上での過酷な労働環境を考慮する必要があります。漁師の年収を解説した記事でも触れていますが、漁法ごとの労働条件を含めた総合的な判断が重要です。
階級別に見るマグロ漁師の年収一覧
遠洋マグロ延縄船では、乗組員の階級によって年収が明確に分かれています。日本かつお・まぐろ漁業協同組合が公開しているデータを基に、階級別の収入を整理しました。
| 階級 | 月収 | 年収 | 好漁期の年収 | 経験目安 |
|---|---|---|---|---|
| 員級B(新人) | 30万〜34万円 | 360万〜410万円 | 530万〜600万円 | 未経験〜1年 |
| 員級A(経験者) | 38万〜42万円 | 450万〜510万円 | 600万〜700万円 | 1〜2年 |
| 一等航海士 | 48万〜58万円 | 580万〜650万円 | 700万〜800万円 | 3〜5年(海技士資格取得後) |
| 船長・機関長 | 64万〜72万円 | 770万〜1,000万円 | 1,000万円超 | 5年以上 |
| 漁労長 | 90万〜104万円 | 1,075万〜2,000万円 | 2,000万円超 | 10年以上 |
(出典: 日本かつお・まぐろ漁業協同組合 公式サイト、2026年7月時点)
ここで注目すべきは「好漁期の年収」の列です。マグロ漁師の給料には歩合制の要素が含まれており、水揚げが好調な年には通常の年収を大きく上回ることがあります。新人の員級Bであっても、好漁期には年収530万〜600万円に達する可能性があるのです。
漁労長は操業全体の指揮を執る最高位のポジションで、漁場の選定から投縄・揚縄のタイミング判断まですべてを担います。その責任の重さに比例して、年収も1,075万〜2,000万円という高水準になっています。
なお、20代でも船長に昇進した事例が報告されており、年功序列だけでなく実力次第で早期のキャリアアップが可能です。漁師の年収ランキングでは、他の漁法との比較も確認できます。
漁法別マグロ漁師の収入比較
マグロを獲る漁法は複数あり、それぞれ収入構造が異なります。主要な漁法ごとの年収と特徴を比較します。
| 漁法 | 年収レンジ | 1航海の期間 | 主な漁獲対象 | 労働環境 |
|---|---|---|---|---|
| 遠洋延縄 | 360万〜2,000万円超 | 6ヶ月〜1年 | クロマグロ、メバチ、キハダ | 長期航海、食費・住居費ゼロ |
| 近海延縄 | 300万〜800万円 | 数日〜2週間 | メバチ、キハダ | 日本近海、帰港頻度が高い |
| 一本釣り | 200万〜1,000万円超 | 日帰り〜数日 | クロマグロ | 腕次第で大きく変動 |
| 巻き網(大型) | 400万〜900万円 | 数週間 | キハダ、カツオ混獲 | チーム漁業、安定しやすい |
遠洋マグロ延縄の収入事情
遠洋マグロ延縄は、太平洋やインド洋といった外洋に出てマグロを獲る漁法です。1航海が半年から1年に及ぶため、その間の食費・住居費・水道光熱費は船側が負担します。つまり、給料のほぼ全額を手取りとして受け取れる計算です。
遠洋漁業では若手乗組員でも年間200万円以上の貯蓄が可能といわれています。遠洋漁業の種類と特徴で詳しく解説していますが、遠洋マグロ延縄は漁業の中でも高収入が期待できる分野です。
近海一本釣りの収入事情
近海マグロの一本釣りは、大間(青森県)や串本(和歌山県)などが有名です。日帰りから数日の航海で操業するため、家族と暮らしながら漁業ができるメリットがあります。
ただし、収入は水揚げ次第で大きく振れます。大型のクロマグロを釣り上げれば1本で数百万円の値がつくこともありますが、不漁が続けば年収200万円台に落ち込むリスクもあります。
養殖マグロ事業の所得
農林水産省の漁業経営統計(令和5年)によると、海面養殖業を営む個人経営体の平均漁労所得は約1,533万円で、実は漁業全体の中で最も高い水準にあります。海面養殖におけるくろまぐろの産出額は全国で470億7,400万円にのぼり(e-Stat 統計表ID: 0002001226)、養殖マグロは水産業界の中でも有力な収益源です。
ただし、養殖は初期投資が大きく、エサ代や設備維持費などの経営コストも考慮する必要があります。あくまでも「事業所得」であり、一般的な雇用漁師の年収とは性質が異なる点に注意してください。
マグロ漁師の給料の仕組み|基本給と歩合制
マグロ漁師の給料体系は、一般的なサラリーマンとは大きく異なります。その仕組みを理解しておくことで、年収の変動要因が見えてきます。
給料を構成する3つの要素
マグロ漁船の給料は、主に以下の3つで構成されています。
| 構成要素 | 内容 | 割合の目安 |
|---|---|---|
| 基本給(固定給) | 階級に応じた月額固定分 | 全体の50〜70% |
| 歩合給 | 水揚げ金額に連動する成果報酬 | 全体の20〜40% |
| 各種手当 | 航海手当、漁場手当、資格手当など | 全体の5〜15% |
特に重要なのが歩合給です。マグロの魚価は市場の需給バランスやマグロの品質(脂のり・鮮度)によって大きく変動します。初競りで1本数千万円の値がつくこともあれば、通常の取引では1kgあたり数千円ということもあります。
この歩合制があるからこそ、同じ階級でも年によって年収に100万〜200万円の差が生まれるのです。
生活費がほぼゼロになる遠洋漁業の特殊性
遠洋マグロ漁船では、航海中の食事は船が提供し、住居も船内の個室が割り当てられます。水道光熱費もかかりません。さらに、海上にいるため日常的な出費の機会がほとんどありません。
現場の漁師に話を聞くと「半年航海して帰ってきたら、出航前と口座残高がまるで違う」という声がよく聞かれます。陸上勤務の場合、手取り25万円でも家賃や食費で月15万円以上は消えますが、遠洋漁師の場合は手取りがほぼそのまま可処分所得になります。20代の若手でも年間200万円以上の貯蓄が可能とされるのは、この生活費ゼロの構造が大きく影響しています。
マグロの魚価が年収を左右する
農林水産省の統計(e-Stat 統計表ID: 0001886486)によると、まぐろ類の海面漁業産出額の内訳は以下のとおりです。
| まぐろの種類 | 産出額(百万円) | 構成比 |
|---|---|---|
| きはだ | 39,736 | 32.1% |
| めばち | 37,743 | 30.5% |
| くろまぐろ | 19,052 | 15.4% |
| びんなが | 17,590 | 14.2% |
| みなみまぐろ | 9,036 | 7.3% |
| その他のまぐろ類 | 535 | 0.4% |
| 合計 | 123,692 | 100.0% |
(出典: 農林水産省 漁業産出額、e-Stat 統計表ID: 0001886486)
キハダやメバチは漁獲量が多く産出額の上位を占めますが、単価が最も高いのはクロマグロです。クロマグロを主に狙う漁船に乗れば、1本あたりの水揚げ金額が大きくなるため、歩合給も高くなる傾向があります。水産業界の最新統計データでは、産出額の推移をさらに詳しく確認できます。
マグロ漁師のキャリアパスと年収アップの道筋
マグロ漁師として年収を上げるには、明確なキャリアステップがあります。ここでは未経験から漁労長になるまでのロードマップを示します。
未経験からのキャリアステップ
| ステップ | 期間 | 年収目安 | 必要な行動 |
|---|---|---|---|
| 員級B(新人) | 入職〜1年 | 360万〜410万円 | 漁具の取り扱い・船上作業の基本を習得 |
| 員級A(経験者) | 1〜2年目 | 450万〜510万円 | 一人前の作業員として認められる |
| 海技士資格取得 | 2〜3年目 | — | 乗船中に座学・実技を積み試験に合格 |
| 一等航海士 | 3〜5年目 | 580万〜650万円 | 航海管理業務を担当 |
| 船長・機関長 | 5〜10年目 | 770万〜1,000万円 | 船舶の運航責任者 |
| 漁労長 | 10年以上 | 1,075万〜2,000万円 | 操業の全責任を担う最高位 |
注目すべきは、員級Bから員級Aへの昇格がわずか1〜2年で実現する点です。一般企業では入社3年目でも大きな年収アップは見込みにくいですが、マグロ漁師では早ければ2年目で年収450万円以上に到達します。
年収1,000万円を超えるために必要なこと
年収1,000万円のラインを超えるには、大きく2つのルートがあります。
1つ目は、遠洋マグロ延縄船で船長以上に昇進するルートです。海技士資格(4級以上)の取得が必須で、航海士としての実績を積んだうえで船長に任命される必要があります。20代で船長に昇進した実績もあり、年齢よりも技量と経験がものをいう世界です。
2つ目は、近海一本釣りで独立するルートです。自分の漁船を持ち、高値のクロマグロを狙います。大型のクロマグロ1本で数百万円になることもあり、年間を通じて安定的に釣り上げることができれば、年収1,000万円超は十分に射程圏内です。ただし、漁船の購入費や維持費、不漁リスクを自分で負う覚悟が必要です。
漁師になるための具体的な手順では、未経験から漁師を目指す方に向けた情報を詳しくまとめています。
求人の現状
2026年7月時点で、求人ボックスには「マグロ漁師」関連の求人が約41件掲載されています(求人ボックス調べ)。トリトンジョブ(漁師専門の求人サイト)やハローワークでも遠洋マグロ延縄船の乗組員募集が定期的に出ており、特に未経験者歓迎の求人も見られます。
深刻な人手不足を背景に、未経験でも積極的に採用する船主が増えています。未経験者向けの漁師求人の探し方も参考にしてください。
マグロ漁師の年収の注意点|知っておくべき現実
高収入が期待できるマグロ漁師ですが、年収だけでは見えない現実もあります。転職や就業を検討する際は、以下の点も考慮してください。
長期航海による家族との離別
遠洋マグロ延縄船では、1航海が6ヶ月から1年に及ぶことがあります。その間は家族と会えず、電話やメールでの連絡に限られます。既婚者の場合、家族の理解と協力が不可欠です。
体力的な過酷さ
マグロ漁は深夜・早朝からの作業が基本です。投縄・揚縄は数時間にわたる重労働で、天候が荒れれば船の揺れの中で作業を続けなければなりません。体力に自信がない方は、まず近海漁業で経験を積んでから遠洋を目指す方法もあります。
漁獲規制の影響
水産庁はクロマグロの資源管理のために漁獲枠を設定しています。漁獲規制が強化されると、水揚げ量が制限され、結果として歩合給にも影響が出ます。水産庁のマグロ漁獲規制について知っておくことは、将来の収入見通しを立てるうえで重要です。
税金・社会保険の扱い
遠洋マグロ漁船の乗組員は船主に雇用される形態が多く、社会保険(船員保険)に加入します。一方、近海の一本釣り漁師は個人事業主として確定申告が必要なケースもあります。手取り額は雇用形態によって異なるため、求人応募の際には雇用条件を確認しましょう。
マグロ漁師の年収に関するよくある質問
Q1: マグロ漁師は本当に年収1,000万円を超えるのですか?
はい、遠洋マグロ延縄船の船長クラス以上であれば、年収1,000万円を超えることは珍しくありません。日本かつお・まぐろ漁業協同組合のデータによると、漁労長の年収は1,075万〜2,000万円に達します。ただし、この水準に到達するには通常10年以上の経験が必要です。
Q2: 未経験からマグロ漁船に乗れますか?
乗れます。多くの遠洋マグロ延縄船では未経験者を「員級B」として受け入れています。2026年7月現在、求人ボックスやトリトンジョブで未経験歓迎の求人が複数掲載されています。乗船前に基本的な研修を受けられる船主もあります。
Q3: マグロ漁師の給料は固定給ですか、歩合制ですか?
基本給(固定給)と歩合給の組み合わせが一般的です。基本給が全体の50〜70%を占め、水揚げ金額に応じた歩合給が20〜40%、残りが各種手当という構成が多いです。そのため、水揚げが好調な年は年収が大幅に増える可能性があります。
Q4: マグロ漁船の航海中に生活費はかかりますか?
遠洋マグロ漁船の航海中は、食事・住居・水道光熱費のすべてが船側の負担です。日常的にお金を使う機会もほとんどないため、給料のほぼ全額が手元に残ります。20代の若手でも年間200万円以上の貯蓄が可能といわれています。
Q5: マグロの種類によって漁師の年収は変わりますか?
変わります。クロマグロは単価が最も高く、1本あたりの水揚げ金額が大きいため、クロマグロを主に狙う漁船の歩合給は高くなる傾向にあります。一方、キハダやメバチは漁獲量が多いものの単価はクロマグロほどではありません。農林水産省の統計でも、くろまぐろの海面漁業産出額は約190億円と高い水準にあります。
Q6: 近海マグロ漁と遠洋マグロ漁、どちらが稼げますか?
安定した収入を求めるなら遠洋マグロ延縄が有利です。階級が上がるにつれて着実に年収が増えるキャリアパスが整っています。一方、腕に自信があり大きな当たりを狙うなら近海一本釣りにも魅力があります。ただし、一本釣りは不漁リスクが高く、年収の振れ幅が大きい点を理解しておきましょう。
Q7: マグロ漁師に必要な資格はありますか?
未経験での乗船に特別な資格は不要です。ただし、キャリアアップには海技士資格(航海または機関)が必須です。海技士4級以上を取得すると航海士として昇格でき、年収も大幅に上がります。乗船しながら資格取得を目指せる制度を用意している船主も増えています。
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まとめ:マグロ漁師の年収のポイント
マグロ漁師の年収について、要点を整理します。
- 遠洋マグロ延縄船の年収は、新人360万〜漁労長2,000万円超と階級差が大きい
- 基本給と歩合給の組み合わせで、水揚げが好調な年には年収が大幅に上がる
- 航海中の生活費がほぼゼロのため、可処分所得は額面以上に高い
- 海技士資格の取得がキャリアアップと年収向上の鍵
- 漁獲規制や魚価変動のリスクも考慮して判断することが大切
マグロ漁師への転職を考えている方は、まず漁師になるための全体像を把握することから始めてみてください。遠洋マグロ漁の世界は、過酷さと引き換えに若いうちから高収入と貯蓄を実現できる数少ない職業です。
参考情報
- 日本かつお・まぐろ漁業協同組合「乗組員の収入はどのくらいあるの?」(https://www.japantuna.net/tuna-column/6461/)
- 農林水産省 漁業産出額(e-Stat 統計表ID: 0001886486)
- 農林水産省 海面養殖業産出額(e-Stat 統計表ID: 0002001226)
- 求人ボックス「マグロ漁師 漁業の求人」(2026年7月時点、約41件)
- クールコネクト株式会社「漁師の平均年収を漁法ごとに解説」(https://www.cool-c.com/column/82)
- 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 令和6年度
- 農林水産省 漁業経営統計調査(令和5年)


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