最終更新: 2026-06-09
農林水産省の漁業経営調査(2023年)によると、沿岸漁家の平均漁労所得は約413万円。一方で遠洋マグロ延縄漁の漁労長は年収1,000万円を超えるケースもある。同じ「漁師」でも漁法によって年収に5倍以上の差が開くのが現実だ。
「どの漁法が一番稼げるのか」「年収だけでなく労働条件も考慮した比較が知りたい」「未経験でも高収入を狙える漁法はあるのか」。漁師への転職を考えている人が本当に知りたいのは、表面的な平均年収ではなく、漁法ごとの年収を横並びで比較できるランキングだろう。
この記事では、7つの主要漁法を年収の高い順にランキング形式で比較する。さらに労働時間を加味した「時給換算ランキング」という独自の切り口も紹介する。まず年収ランキングの正しい読み方を解説し、次に漁法別の詳細比較、最後にタイプ別のおすすめ漁法までお伝えする。
漁師の年収ランキングを見る前に押さえるべき3つの基準
漁師の年収ランキングは、単純に額面の年収が高い順で並べるだけでは正確な比較にならない。以下の3つの基準を理解した上で読み進めてほしい。
| 基準 | チェックポイント | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 漁労所得か売上か | 年収データが「水揚げ金額(売上)」なのか「漁労所得(経費差引後)」なのかを確認 | 売上ベースで年収1,000万円でも、燃料代・漁具代を引くと手取り400万円ということがある |
| 雇用形態 | 雇われ漁師(漁業会社社員)か、自営漁師(個人経営体)かで収入構造が全く異なる | 自営は収入の天井が高い反面、不漁年のリスクも大きい |
| 拘束時間 | 年間の労働日数と1日の平均労働時間 | 遠洋漁業は年収が高くても1航海に数か月〜1年以上かかり、家族との時間はほぼゼロになる |
特に注意すべきは「漁労所得」と「水揚げ金額」の違いだ。漁師の年収として紹介される数字の多くは水揚げ金額(売上)であり、ここから燃料費、氷代、餌代、漁具の修繕費、漁協手数料(売上の5〜10%)などの経費を差し引いた漁労所得が「本当の手取り」に近い数字となる。漁法によって経費率は大きく異なり、沿岸漁船漁業では売上の30〜60%が経費として消えることもある。漁師の年収の基本構造について詳しくは、漁師の年収を漁法別・地域別に徹底解説した記事を参考にしてほしい。
漁法別 漁師の年収ランキングTOP7【2026年版】
以下は、農林水産省の漁業経営調査や業界各社の公開データ、漁業求人サイトの待遇情報をもとに、主要7漁法の年収を高い順にランキングしたものだ。金額は「漁労所得(経費差引後)」を基準としている。
| 順位 | 漁法 | 年収レンジ(漁労所得) | 漁業区分 | 拘束期間 | 新人参入 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 遠洋マグロ延縄漁 | 600〜1,300万円 | 遠洋漁業 | 1航海1〜2年 | 可(乗組員から) |
| 2位 | 遠洋カツオ一本釣り | 500〜1,200万円 | 遠洋漁業 | 1航海3〜10か月 | 可(乗組員から) |
| 3位 | 沖合底引き網漁 | 400〜750万円 | 沖合漁業 | 日帰り〜数日 | 可(漁業会社入社) |
| 4位 | 海面養殖業(雇用型) | 350〜800万円 | 養殖業 | 通年(日帰り) | 可(未経験歓迎多い) |
| 5位 | 沖合巻き網漁 | 350〜700万円 | 沖合漁業 | 数日〜2週間 | 可(乗組員から) |
| 6位 | 沿岸延縄漁 | 250〜500万円 | 沿岸漁業 | 日帰り | 漁業権が必要 |
| 7位 | 沿岸定置網漁 | 180〜450万円 | 沿岸漁業 | 日帰り | 可(漁業会社入社) |
この年収レンジは役職・経験年数・地域によって大きく変動する。各漁法の詳細を以下で解説する。
【1位】遠洋マグロ延縄漁:年収600〜1,300万円
漁師の年収ランキングで不動のトップに位置するのが遠洋マグロ延縄漁だ。太平洋やインド洋で1航海1〜2年をかけ、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロなどを狙う。
新人の乗組員でも年収400〜600万円程度からスタートし、経験を積んで航海士になると600〜800万円、船長クラスで770〜1,000万円に上がる。最上位の漁労長(船団全体の操業を指揮する役職)になれば年収1,075〜1,240万円に達する(日本かつお・まぐろ漁業協同組合公開データ、2025年時点)。
ただし代償は大きい。1航海が1年以上に及ぶことも珍しくなく、その間は陸に上がれない。家族との時間はほぼゼロになり、通信環境も限られる。体力的にも過酷で、早朝3時頃から延縄の投入と揚げ縄作業を繰り返す日々が続く。
【2位】遠洋カツオ一本釣り:年収500〜1,200万円
遠洋カツオ一本釣りは、主に太平洋西部でカツオを竿と釣り糸だけで一匹ずつ釣り上げる漁法だ。1航海は3〜10か月程度で、マグロ延縄漁に比べると短い。
新人の乗組員は年収300〜500万円程度。熟練の釣り手になると600〜800万円、船長クラスで800〜1,200万円に達することもある。カツオの水揚げは歩合制の色が強く、豊漁年と不漁年で年収が200万円以上変動するケースもある。農林水産省の漁業産出額データによれば、かつお類の全国産出額は約608億円(e-Stat 統計表ID: 0001886486)と魚種別でも上位に位置する主要魚種だ。
【3位】沖合底引き網漁:年収400〜750万円
沿岸漁業と沖合漁業の違いの記事でも触れているが、沖合漁業は日帰りから数日程度の短い航海で操業する。底引き網漁は海底付近に網を引いてカレイ、エビ、カニ、ヒラメなどを漁獲する方法だ。
漁業会社に入社した場合、新人で年収300〜400万円、経験を積むと400〜600万円、船長クラスで600〜750万円が目安となる。遠洋漁業と比べて航海期間が短く、定期的に帰港できるため家庭との両立がしやすい点がメリットだ。一方で漁場までの移動や網の引き上げに大型設備が必要で、燃料費が高いという経費面のデメリットもある。
【4位】海面養殖業(雇用型):年収350〜800万円
養殖業は漁船漁業とは異なり、ブリ、マダイ、カキ、ホタテなどを計画的に育てて出荷するスタイルだ。農林水産省のデータによると、海面養殖業の全国産出額は約4,357億円。養殖魚種のうちブリ類が約1,065億円と最大で、次いでクロマグロ約471億円、マダイ約443億円と続く(e-Stat 統計表ID: 0002001226)。
雇用型の養殖会社に就職した場合の年収は350〜500万円程度が一般的だが、管理職や経営者になれば700〜800万円以上も珍しくない。漁船漁業と比較した養殖業の最大の強みは「安定性」だ。天候や魚群の移動に左右される漁船漁業と違い、出荷量と時期をある程度コントロールできる。また養殖業は「未経験歓迎」の求人が多く、転職組が参入しやすい分野でもある。養殖業の年収について詳しくは水産養殖業の年収ガイドで魚種別に解説している。
【5位】沖合巻き網漁:年収350〜700万円
大型の網で魚群を丸ごと囲い込む巻き網漁は、イワシ、アジ、サバなどの回遊魚をまとまった量で漁獲する方法だ。1回の操業で数十トン規模の水揚げになることもあり、水揚げ金額は大きい。しかし大型漁船の燃料費や乗組員の人件費も多額になるため、一人あたりの漁労所得は沖合底引き網漁と同程度になる。
新人乗組員で年収300〜400万円、経験者で400〜600万円、船長クラスで600〜700万円が目安だ。乗組員数が多い(15〜30人程度)ため、チームワークが求められる漁法でもある。
【6位】沿岸延縄漁:年収250〜500万円
沿岸延縄漁は、幹縄(みきなわ)に多数の枝針(えだばり)を付けた延縄を海中に設置し、タイ、ヒラメ、フグなどの高級魚を狙う漁法だ。日帰り操業がほとんどで、生活リズムは比較的整えやすい。
自営の個人漁師の場合、水揚げが500〜800万円でも経費を差し引くと漁労所得は250〜400万円程度になることが多い。ただし狙う魚種やブランド化の成功次第では500万円以上も十分に可能だ。沿岸延縄漁を始めるには漁業権の取得が必要で、ゼロから参入する場合のハードルは高い。
【7位】沿岸定置網漁:年収180〜450万円
沿岸の一定区域に網を固定して、回遊してくる魚を待ち受ける定置網漁は、漁師の年収ランキングでは下位に位置する。しかし漁師としてのキャリアをスタートするには最も入りやすい漁法でもある。
漁業会社に入社して定置網漁に従事する場合、新人で年収180〜250万円、漁労長クラスで300〜450万円が相場だ。年収自体は決して高くないが、朝の操業が終われば午前中には仕事が終わることも多く、労働時間の短さは他の漁法と比較して大きなメリットだ。漁師未経験でまず漁業の世界を体験してみたいという人には最適な入り口と言える。未経験から漁師に挑戦したい方は漁師の求人を未経験で探す方法も参考にしてほしい。
時給換算で見る「本当に稼げる」漁師ランキング
ここまでの年収ランキングは「年間でいくら稼げるか」を基準にしていたが、漁法によって労働時間は大きく異なる。年収が高くても1日16時間・年間300日以上の労働であれば、時給に直すと意外に低いかもしれない。ここでは各漁法の年収中央値を推定年間労働時間で割った「時給換算ランキング」を紹介する。この切り口で見ると、年収ランキングとは異なる景色が見えてくる。
| 時給順位 | 漁法 | 年収中央値 | 推定年間労働時間 | 時給換算 | 年収順位との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 海面養殖業(雇用型) | 500万円 | 2,200時間 | 約2,270円 | +3(年収4位→時給1位) |
| 2位 | 沿岸定置網漁 | 300万円 | 1,400時間 | 約2,140円 | +5(年収7位→時給2位) |
| 3位 | 遠洋マグロ延縄漁 | 900万円 | 4,500時間 | 約2,000円 | -2(年収1位→時給3位) |
| 4位 | 沖合底引き網漁 | 550万円 | 2,800時間 | 約1,960円 | -1(年収3位→時給4位) |
| 5位 | 遠洋カツオ一本釣り | 700万円 | 3,800時間 | 約1,840円 | -3(年収2位→時給5位) |
| 6位 | 沖合巻き網漁 | 500万円 | 2,800時間 | 約1,790円 | -1(年収5位→時給6位) |
| 7位 | 沿岸延縄漁 | 350万円 | 2,000時間 | 約1,750円 | -1(年収6位→時給7位) |
注目すべきは、年収ランキングでは7位だった沿岸定置網漁が時給換算では2位に浮上する点だ。定置網漁は朝4時頃に出港して網を揚げ、午前中には帰港するスケジュールが一般的で、1日の実働は5〜6時間程度。年間の実働日数も200〜250日程度と、他の漁法に比べて少ない。漁師の1日のスケジュールを見れば、各漁法の労働実態がより具体的にわかる。
逆に、年収トップの遠洋マグロ延縄漁は時給換算では3位に後退する。1航海1〜2年の間、休日はほぼなく、1日の拘束時間は14〜16時間にも及ぶためだ。
「年収の高さ」と「時間あたりの効率」のどちらを重視するかは、ライフスタイルや家族構成によって正解が変わる。ここが漁師の年収ランキングを額面だけで判断してはいけない最大の理由だ。
水産業界全体の産出額や就業者数といった最新データは、水産業界の統計データまとめページで定期更新しているので、業界研究にも活用してほしい。
タイプ別おすすめ:あなたに合った漁法はどれか
漁師の年収ランキングを見て「結局どれを選べばいいのか」と迷う人のために、タイプ別のおすすめを整理した。
| あなたのタイプ | おすすめの漁法 | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく稼ぎたい(年収重視) | 遠洋マグロ延縄漁 | 年収の天井が最も高い。1,000万円超えが現実的に狙える |
| 安定した収入がほしい | 海面養殖業(雇用型) | 固定月給制が多く、天候リスクが低い。時給換算でも1位 |
| 家族との時間を大切にしたい | 沿岸定置網漁 | 日帰り・午前中で仕事終了。時給換算2位と効率も良い |
| 未経験から漁師デビューしたい | 沿岸定置網漁 or 養殖業 | 漁業権不要。漁業会社への就職で参入可能 |
| バランス重視(収入と生活) | 沖合底引き網漁 | 年収400〜750万円と中〜高水準。数日の短期航海で帰港できる |
| 独立して自営でやりたい | 沿岸延縄漁 | 小型船で一人操業が可能。高級魚狙いで収入を上げられる |
現在、漁業就業者数は約12.1万人(2023年時点)、平均年齢は57.1歳と高齢化が進んでおり、65歳以上の割合は約39%に達している(水産庁 漁業就業動向調査)。一方で39歳以下の新規就業者の割合は約7割と若い世代の参入が増えている。担い手不足が深刻なため、各地の自治体や漁協が移住支援・研修制度を充実させており、未経験からの参入ハードルは以前より下がっている。
漁師の年収ランキングに関するよくある質問
Q1: 漁師で年収1,000万円を超えることは本当に可能ですか?
可能だが、ごく一部の漁法・役職に限られる。遠洋マグロ延縄漁の漁労長や船長、遠洋カツオ一本釣りのベテラン釣り手であれば年収1,000万円超えは現実的だ。ただし1航海が数か月〜1年以上に及び、生活の大部分を船上で過ごすことになる。沿岸漁業で年収1,000万円を超えるのは、特定の高級魚でブランド化に成功した場合など極めて限定的だ。
Q2: 未経験から始めて最も年収が高くなる漁法はどれですか?
未経験者でも入りやすく、かつ年収の天井が高いのは「遠洋マグロ延縄漁の乗組員」だ。新人でも年収400〜600万円程度からスタートできる。ただし1年以上の長期航海に耐えられる体力と精神力が求められる。生活とのバランスを重視する場合は、沖合底引き網漁や養殖業からスタートする選択肢もある。
Q3: 漁師の年収は地域によってどのくらい差がありますか?
同じ漁法でも地域による差は大きい。沿岸漁業では北海道(ホタテ・カニ・昆布)や三重県(伊勢エビ)など、高単価の水産物が獲れる地域は年収が高くなる傾向がある。農林水産省の漁業産出額データ(e-Stat 統計表ID: 0001886486)を見ると、北海道、長崎県、静岡県が漁業産出額の上位を占めており、これらの地域は漁師の年収水準も高い傾向にある。
Q4: 養殖業と漁船漁業では、どちらが年収は安定していますか?
圧倒的に養殖業の方が安定している。漁船漁業(特に沿岸漁業)は天候や魚の回遊に左右されるため、年によって年収が100〜200万円変動することも珍しくない。養殖業は出荷量と時期をコントロールしやすく、雇用型であれば固定月給制のため月々の収入も安定する。ただし赤潮や台風などの自然災害リスクはゼロではない。
Q5: 漁師の年収に経費はどのくらいかかりますか?
漁法によって大きく異なる。自営の沿岸漁船漁業では、水揚げ金額の30〜60%が経費(燃料費、餌代、氷代、漁具の修繕費、漁協手数料など)に消える。例えば水揚げ800万円で経費率50%の場合、漁労所得は400万円となる。一方、漁業会社の雇用漁師は経費を会社が負担するため、給与がそのまま手取りに近くなる。
Q6: 漁師は副業で年収を上げられますか?
可能だ。沿岸漁師の場合、漁のオフシーズンに水産加工品の製造販売、体験漁業のガイド、漁業系動画配信などで収入を得ている人もいる。定置網漁のように午前中で仕事が終わる漁法であれば、午後の時間を使った副業も現実的だ。
Q7: 今から漁師になるのは良い選択ですか?
漁業就業者の高齢化と担い手不足は年々深刻化しており、各地の漁協や自治体が研修制度・住居支援・漁船リースなどの就業支援を充実させている。未経験からの参入ハードルは10年前と比べて大幅に下がっている。年収だけでなく「海のそばで暮らしたい」「自然相手の仕事がしたい」という価値観で選ぶ人が増えていることも見逃せない。
関連記事: 漁師の履歴書の書き方|採用される志望動機・自己PRの例文と5つのコツ
まとめ:漁師の年収ランキングで迷ったら
漁師の年収ランキングのポイントを整理する。
- 年収トップは遠洋マグロ延縄漁(600〜1,300万円)だが、1航海1〜2年の長期拘束が前提
- 時給換算では海面養殖業が1位(約2,270円)、沿岸定置網漁が2位(約2,140円)と順位が逆転する
- 「年収の高さ」と「生活の質」はトレードオフの関係にある
- 未経験から参入しやすいのは沿岸定置網漁と養殖業
- 安定収入を求めるなら養殖業の雇用型が時給・安定性ともに優位
年収だけで漁法を選ぶと後悔する可能性がある。自分のライフスタイルや優先順位に合った漁法を選ぶことが、漁師として長く続けるための最も重要な判断だ。
漁師の仕事に興味はあるが不安もあるという方は、漁師への転職で失敗しないためのポイントも読んでおくことをおすすめする。まずは漁業体験や短期研修に参加して、現場の空気を肌で感じてから判断しても遅くない。
参考情報
- 農林水産省「漁業経営に関する統計」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/20.html)
- e-Stat 統計表ID: 0001886486「海面漁業・養殖業産出額(都道府県別・主要魚種別)」
- e-Stat 統計表ID: 0002001226「海面養殖業の産出額(都道府県別・魚種別)」
- 水産庁「漁業の就業者をめぐる動向」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r05_h/trend/1/t1_2_3.html)
- 日本かつお・まぐろ漁業協同組合「乗組員の収入はどのくらいあるの?」(https://www.japantuna.net/tuna-column/6461/)
- クールコネクト株式会社「漁師の平均年収を漁法ごとに解説」(https://www.cool-c.com/column/82)


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