女性でも漁師になれる?人数・年収・5つの就業ルートを徹底解説

女性でも漁師になれる?人数・年収・5つの就業ルートを徹底解説 漁業・漁法

最終更新: 2026-07-02

水産庁の統計によると、漁業就業者に占める女性の割合は約11%。「漁業=男の世界」というイメージは根強いものの、近年は女性の新規就業者が確実に増えています。2026年7月には岩手県久慈市で「北限の海女」による素潜り漁が始まるなど、女性漁師の活躍はメディアでも大きく取り上げられるようになりました。

「女性でも漁師になれるの?」「体力面で不安がある」「実際の収入はどのくらい?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

この記事では、女性漁師の現状を統計データで整理したうえで、仕事の種類、就業までの5つのルート、年収の実態、活用できる支援制度まで網羅的に解説します。まず女性漁師の全体像を把握し、次に具体的ななり方と支援制度を確認していきましょう。

女性漁師の現状を統計データで見る

女性漁師はどのくらいいるのでしょうか。まずは公的な統計データから現状を確認します。

水産庁の「漁業就業動向調査」によると、日本の漁業就業者数は約12万3,100人(2023年時点)。このうち女性は約1万1,890人で、全体の約10.4%を占めます。15〜39歳の若年女性に限ると約1,100人にとどまりますが、逆に言えばこの世代の女性が参入する余地は大きいと言えます。

項目 数値 出典
漁業就業者数(全体) 約12万3,100人 水産庁 漁業就業動向調査(2023年)
うち女性就業者数 約1万1,890人 同上
女性比率 約10.4% 同上
15〜39歳の女性就業者 約1,100人 同上
漁協正組合員の女性比率 5.3% 水産庁(令和4年度)
漁協女性役員の比率 0.5% 同上

注目すべきは、女性の活躍の場は漁船上だけではないという点です。水揚げ後の陸上作業(選別・仕分け等)では従事者の約36%が女性であり、水産加工業に至っては約60%を女性が占めています。海の上から加工場まで、水産業全体で見れば女性はすでに大きな役割を担っています。

また、農林水産省の漁業産出額統計(e-Stat 統計表ID: 0001886486)によれば、日本の海面漁業・養殖業の産出額合計は約1兆4,228億円(2023年時点)。この巨大な産業を支える人材として、女性の参入は業界全体から歓迎されている状況です。

女性漁師の仕事の種類と特徴

「漁師」と一口に言っても、実際の仕事は多岐にわたります。女性が活躍している分野を整理してみましょう。

仕事の種類 主な内容 女性の参入しやすさ 体力負荷
海女(あま) 素潜りでアワビ・サザエ・ウニなどを採取 高い(歴史的に女性の職業) 中〜高
沿岸漁業(小型定置網・刺し網等) 日帰りで近海の魚を漁獲 中(日中操業型は参入しやすい)
養殖業 ブリ・カキ・海藻類の養殖管理 高い(計画的な作業が多い)
水産加工 干物・缶詰・練り物の製造 非常に高い(女性比率60%) 低〜中
漁業プロデューサー 加工販売・ブランディング・6次産業化 高い(近年増加中)

特に近年注目されているのが「漁業プロデューサー」型の働き方です。漁獲だけでなく、加工・販売・情報発信まで一貫して手がける女性が増えています。たとえば未利用魚をペットフードに加工したり、SNSを活用して産地直送の販路を開拓したりと、従来の「漁師像」にとらわれない新しい働き方が広がっています。

海女についても補足しておきましょう。日本の海女は三重県の志摩地方や石川県の輪島市が有名ですが、岩手県久慈市の「北限の海女」も伝統的に知られています。素潜りの技術に関心がある方は、素潜り漁のコツと安全な潜水技術の記事も参考にしてみてください。

女性が漁師になるための5つのルート

では、実際に女性が漁師として働くにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは現実的な5つのルートを紹介します。漁師になるための基本的な流れを踏まえたうえで、女性ならではのポイントを解説します。

ルート1:漁業就業支援フェアに参加する

全国漁業就業者確保育成センターが主催する「漁業就業支援フェア」は、漁師を目指す人と受け入れ側をつなぐ場です。全国各地の漁協や漁業会社がブースを出展しており、直接話を聞くことができます。女性の参加者も年々増えており、就業フェアの場で女性漁師として登壇する先輩もいます。

ルート2:漁業研修制度を利用する

漁業経験がゼロでも、各地の漁業研修制度を利用すれば段階的にスキルを身につけられます。山口県萩市では最長3年間のOJT研修が受けられ、研修中は指導者から賃金を受け取りながら学べます。愛媛県宇和島市でも、移住して漁業研修を受ける方に就業支度金と定住支援金が支給されます。

ルート3:養殖業から始める

養殖業は計画的な作業工程が多く、操業時間もある程度コントロールできるため、漁業未経験の女性にも取り組みやすい分野です。カキ養殖やワカメ養殖は沿岸部で行われるため、体力面でも比較的ハードルが低いと言えます。

ルート4:水産加工業から漁業へステップアップ

水産加工業は女性就業者の比率が約60%と高く、まず加工場で水産物の知識を身につけてから漁業に転向するという方法もあります。加工現場で魚の品質や市場ニーズを学んだ経験は、漁業経営にも大いに活きます。

ルート5:6次産業化で独自の漁業経営を始める

漁獲だけでなく、加工・販売まで一貫して行う「6次産業化」に取り組む女性漁師が増えています。たとえば、小型定置網で漁をしながら自社で加工販売を行い、日中操業にすることで女性が働きやすい環境を自らつくる事例もあります。この方法は体力面の不安を軽減できるだけでなく、付加価値の高い事業モデルを構築できるメリットがあります。

女性漁師に必要な資格・免許

漁師になるために特別な学歴は必要ありませんが、実務上は以下の資格が求められます。漁業に必要な資格の種類と併せて確認してください。

資格・免許 概要 取得費用の目安 取得期間
小型船舶操縦士免許(2級) 沿岸5海里以内で船を操縦可能 約8〜12万円 2〜4日
小型船舶操縦士免許(1級) 航行区域の制限なし 約10〜15万円 4〜5日
海上特殊無線技士免許 漁船間・陸上との無線通信に必要 約2〜3万円 1〜2日
潜水士免許 海女など潜水を伴う漁業に必要 約1万円(受験料) 筆記試験のみ

船舶免許については、2級であれば最短2日間の講習で取得可能です。多くの漁業研修制度では、研修期間中にこれらの免許取得をサポートしてくれます。

なお、商業的に漁業を行うには漁業協同組合(漁協)への加入が事実上必須です。漁協に加入すると漁業権の行使が認められ、組合員としてセリへの参加も可能になります。加入条件は地域によって異なりますが、「地域に居住していること」「年間一定日数以上の操業実績があること」が一般的な要件です。

女性漁師の年収はどのくらい?

「漁師は稼げるのか」は転職を検討するうえで最も気になるポイントでしょう。漁師の年収に関する詳しいデータも参考にしながら、女性の観点で整理します。

農林水産省の統計によると、2023年の沿岸漁家の平均漁労所得は約413万円です。ただし、漁業の種類や地域によって大きな差があります。

漁業の種類 年収の目安 補足
沿岸漁船漁業(雇用) 250〜400万円 新人は下限付近からスタート
沿岸漁船漁業(独立) 350〜600万円 漁獲量・魚種により変動大
養殖業 400〜800万円 ホタテ・ブリ養殖は高収益
海女 200〜500万円 漁期が限定される地域あり
水産加工業 250〜400万円 パート含む。正社員はより高い
6次産業化型 300〜700万円 加工販売の付加価値次第

現場の声として多いのが、「最初の1〜2年は年収250万円台で我慢が必要だが、技術を身につけて3年目以降は安定してくる」という意見です。養殖業はとくに計画的な経営ができるため、女性の独立漁業者にも人気があります。

海面養殖業全体の産出額は約4,357億円(e-Stat 統計表ID: 0002001226)で、なかでもブリ類は約1,065億円、カキ類は約324億円と大きな市場です。これらの分野で女性の参入が増えているのは、安定した収益基盤があることも理由の一つです。

テクノロジーが変える漁業の現場

「体力面が不安」という声に対して、近年のテクノロジーの進化は大きな追い風になっています。

ICT(情報通信技術)を活用した「スマート漁業」が全国に広がりつつあり、従来は経験と勘に頼っていた作業が効率化されています。具体的には以下のような技術が導入されています。

電動ウインチや油圧リフトは、網の巻き上げや重量物の運搬といった力仕事を大幅に軽減します。かつては腕力が必要だった作業が、ボタン操作一つでできるようになりました。

IoTセンサーによる養殖モニタリングも進んでいます。2026年7月にはIoTシステム「マナシステム」向けの通信サービスが開始され、水温・溶存酸素量・塩分濃度などをスマートフォンから遠隔監視できるようになりました。養殖場に常駐しなくても管理が可能になるため、育児中の女性にとっても両立しやすい環境が整いつつあります。

魚群探知機やGPSプロッターの高性能化も見逃せません。これらの機器を使えば、効率的に魚群を見つけて操業できるため、長時間の操業が不要になります。

こうした技術の普及により、「体力がなければ漁師はできない」という考えは過去のものになりつつあります。

国と自治体の支援制度を活用しよう

漁業への新規参入を後押しする支援制度は、国と自治体の両方に用意されています。

国の制度として代表的なのが「青年就業準備給付金事業」です。漁業学校等で学ぶ若者を対象に、年間150万円の給付金が最長3年間支給されます。

水産庁が推進する「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」も知っておきたい制度です。2022年時点で全国から88名の水産女子メンバーが参加しており、12社の参画企業(令和7年1月時点)と連携して商品開発やPR活動を行っています。漁業に限らず、加工・販売・流通など水産に関わる幅広い分野の女性がネットワークを形成しています。

支援制度 対象 内容 問い合わせ先
青年就業準備給付金 漁業学校で学ぶ若者 年間150万円(最長3年) 各都道府県水産課
移住支援金(国) 東京圏からの移住者 世帯100万円、単身60万円 移住先自治体
漁業研修制度(萩市) 新規就業者 最長3年間の有給研修 萩市農林水産課
漁業就業支援(宇和島市) 市へ移住して研修 就業支度金・定住支援金 宇和島市水産課
水産女子プロジェクト 水産関連の女性 ネットワーキング・PR支援 水産庁研究指導課

このほか、全国の沿岸自治体の多くが独自の漁業就業支援制度を設けています。住居の提供や引越し費用の補助、子どもの帯同加算(1人あたり最大100万円)など、家族での移住を手厚くサポートする地域も増えています。

先輩女性漁師のリアルな声

実際に漁業の現場で働く女性たちは、どのような経験をしているのでしょうか。

ある沿岸漁業の女性就業者は「最初は周囲の目が気になったが、魚を捌く技術や天候の読み方を覚えていくうちに認めてもらえるようになった」と語っています。漁業は結果が目に見える仕事であるため、実力で評価されやすい側面があります。

「女人禁制」の慣習については、現在ではほぼ形骸化しています。一部の地域で古くからの言い伝えが残っている場合もありますが、漁師の人手不足が深刻化するなか、性別を理由に人材を拒む漁協はほとんどありません。水産庁も女性の参画推進を明確に打ち出しています。

育児との両立については、養殖業や日中操業型の定置網漁が選ばれるケースが多いようです。深夜・早朝に出港する遠洋・沖合漁業に比べ、沿岸漁業は操業時間に融通が利きやすいのが利点です。

漁師 女性に関するよくある質問

Q1: 女性が漁師になるのに年齢制限はありますか?

法律上の年齢制限はありません。漁業研修制度は一般的に18歳以上を対象としていますが、上限は設けていない自治体がほとんどです。実際に30代・40代から漁師に転職する女性も増えています。

Q2: 体力に自信がなくても漁師になれますか?

養殖業や水産加工業など、体力負荷が比較的低い分野から始めることが可能です。また、電動ウインチやIoT機器の導入が進んでいるため、従来ほどの腕力は必要なくなっています。研修期間中に体力も徐々についていきます。

Q3: 「女人禁制」の漁場はまだありますか?

一部地域で古くからの慣習が残っている場合がありますが、法的な規制ではありません。現在では漁業権の取得に性別の制限はなく、多くの漁協が女性の加入を歓迎しています。

Q4: 漁師になるまでにどのくらいの期間がかかりますか?

漁業研修制度を利用する場合、一般的に1〜3年の研修期間があります。短期(数週間〜3か月程度)の体験研修でまず適性を確認し、その後長期研修に移行する流れが一般的です。小型船舶免許は最短2日で取得できます。

Q5: 子育てしながら漁師の仕事はできますか?

可能です。養殖業や日中操業型の定置網漁であれば、保育園の送迎に合わせた勤務も実現しやすくなります。漁村部では保育支援が充実している地域もあり、移住先の子育て環境を事前に確認しておくとよいでしょう。

Q6: 初期費用はどのくらい必要ですか?

雇用型で始める場合は、船舶免許の取得費用(約10万円)程度で済みます。独立して自分の船を持つ場合は、中古の小型漁船で200〜500万円程度が目安です。多くの自治体で漁船購入費の補助制度が用意されています。

Q7: 海外では女性漁師は多いのですか?

ノルウェーやアイスランドでは水産業における女性の参画率が日本より高く、政策的な支援も充実しています。FAO(国連食糧農業機関)の報告では、世界の水産業の労働力の約50%を女性が占めているとされています(2024年時点)。日本の約11%という数字は、世界的に見ると低い水準です。

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まとめ:女性漁師のポイントを整理

  • 漁業就業者に占める女性の割合は約11%。水産加工業まで含めると女性は業界を支える存在
  • 海女・養殖・水産加工・6次産業化など、女性が活躍できる分野は多い
  • 漁業研修制度や移住支援金など、新規参入を後押しする制度が充実
  • 小型船舶免許は最短2日で取得可能。学歴不問で始められる
  • ICT・IoTの導入が進み、体力面のハードルは下がりつつある

女性が漁師として働く環境は、この数年で大きく改善しています。まずは全国漁業就業者確保育成センターの就業支援フェアに参加して、実際の雰囲気を確かめてみるのがおすすめです。

漁師への第一歩として、未経験から漁師になるための求人の探し方や、漁師の1日のスケジュールの記事もぜひ参考にしてください。

参考情報

  • 水産庁「漁業就業動向調査」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r05_h/trend/1/t1_2_3.html)
  • 水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html)
  • e-Stat 統計表ID: 0001886486「海面漁業・養殖業産出額」
  • e-Stat 統計表ID: 0002001226「海面養殖業の産出額」
  • 全国漁業就業者確保育成センター「漁業就業支援フェア」(https://www.ryoushi.jp/)
  • マリンライセンスロイヤル「漁師に必要な免許」(https://www.marine-license.com/blog/column/col_28/)
  • 農林水産省「水産女子の活躍」(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2207/spe1_01.html)




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