2026年第30週(7月20〜26日)の水産業界は、担い手不足への対応と資源管理の両軸で動きが活発な一週間だった。被災地や銚子の漁業体験・就業相談会など現場レベルの取り組みが各地で加速する一方、境港ではクロマグロ漁が今季漁獲枠に達し5年ぶりに1000トンを下回った。長崎大学による完全養殖技術の世界展開構想、ウナギ資源の減少と担い手不足の深刻化も注目された。
漁業・養殖 – 担い手不足と体験・就業支援の広がり
「新3K」掲げ漁業体験――被災地から「漁師を憧れに」
東日本大震災の被災地では、漁業の担い手不足に向き合う取り組みが着実に続いている。宮城県内の漁業関係者が「新3K(かっこいい・稼げる・可能性がある)」を掲げ、若者向けに1泊2日の漁業体験プログラムを実施した。参加者からは「漁師という仕事に初めてリアリティを感じた」という声が上がっており、体験から就業への橋渡しを意識した設計が特徴だ。東北の水産業は震災後の復興を経て生産体制が整いつつあるが、後継者の確保は依然として大きな課題となっている。(情報元:テレ朝NEWS)
銚子で「漁業就業相談会」――千葉県最大の漁港で就業の入り口を
全国有数の水揚げ量を誇る銚子港で、漁業就業を目指す若者向けの相談会が開催された。地元の漁業者や漁業協同組合のスタッフが直接対応し、就業後の生活・収入・漁労作業の実態について具体的な情報提供が行われた。「漁師になりたいけれど、どこに相談すればよいかわからない」という入門者のニーズに応えており、参加者は年々増えているという。漁師の人手不足の実態と解決策では全国の担い手確保策を詳しくまとめている。(情報元:みんなの経済新聞ネットワーク)
中海ウナギ漁40年の大ベテランが担い手不足を語る
島根県松江市の中海で40年以上ウナギ漁を続ける漁業者が、若い世代への技術継承に取り組む姿が取り上げられた。「次の世代に技術と知識を伝えていく責任がある」と語る一方、ウナギの個体数は近年急速に減少しており、資源保護と後継者育成の両立が急務だと強調した。ニホンウナギは環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に分類されており、ウナギ養殖の現状と課題でも触れているように、天然資源への依存を養殖で補う構造転換が求められている。(情報元:日テレNEWS NNN)
熊本・荒尾漁協がマジャク釣り体験を初企画
熊本県の荒尾漁協が、干潟でのマジャク(アナジャコ)釣り体験を7月25日から初めて企画した。マジャクは有明海の干潟特有の生物で、縦穴に長い竿を差し込んで釣り上げる独特の漁法は地元でも「知る人ぞ知る」文化だ。漁業体験を通じて干潟の生態系と伝統的な漁の文化への理解を深めてもらう狙いがある。(情報元:西日本新聞me)
漁業・養殖 – 完全養殖・陸上養殖技術の進展
長崎大学水産研究所が完全養殖で「世界展開」を視野に
長崎大学の水産研究所が、複数魚種の完全養殖技術を産業化し、世界市場への展開を目指していると報じられた。完全養殖とは、人工的に育てた親魚から採卵・ふ化させ出荷まで一貫管理する技術で、天然資源への依存を断ち切る持続可能な漁業の形として注目されている。「世界的な食料安全保障の観点からも、日本の完全養殖技術は大きな価値がある」という研究者の言葉が印象的だった。完全養殖の仕組みと課題も合わせて参照してほしい。(情報元:長崎国際テレビ)
福井・雄島うに陸上養殖センターで塩うに作り体験
福井県坂井市三国町の「雄島うに陸上養殖センター」が、地元産ウニを使った塩うに作り体験を提供している。陸上養殖で品質を安定させたウニを活用し、加工体験という形で6次産業化を図る取り組みだ。陸上養殖は環境を人工的に制御することで通年・安定生産が可能になるため、今後も各地での普及が見込まれる。陸上養殖のメリット・デメリットを徹底解説でその詳細を確認できる。(情報元:中日新聞Web)
フィッシュパスがNEDO衛星データコンペで第1位
衛星データを活用して釣り場・漁業情報を管理するスタートアップ・フィッシュパス(福井県)が、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「農林水産業を衛星データでアップデート!」コンペで第1位を受賞した。河川ごとの魚の分布を衛星から可視化する技術は、資源管理から遊漁管理まで幅広い応用が期待される。宇宙技術と漁業管理の融合という新しい可能性を示した受賞だ。(情報元:福井経済新聞)
行政・法改正 – クロマグロとサケ:資源管理強化の動き
境港クロマグロ漁が今季終了――5年ぶりに1000トン割れ
鳥取県の境港で、今季のクロマグロ漁が漁獲枠に到達して終了した。今季の漁獲量は941トンで、5年ぶりに1000トンを下回った。先週のWCPFC(中西部太平洋マグロ類国際機関)交渉で漁獲枠拡大案が決裂したばかりのタイミングと重なり、「資源量は回復しているのに枠が追いつかない」という現場の声が改めて表面化している。クロマグロの資源管理制度の全体像はマグロ漁獲規制の全解説でまとめている。(情報元:dメニューニュース)
クロマグロTAC拡大求め全国沿岸漁民がシンポ開催
全国沿岸漁民連絡協議会が、クロマグロの漁獲枠(TAC)拡大を訴えるシンポジウムを開催した。現行の管理制度が大規模漁業に有利な構造になっているとして、小規模沿岸漁業者への配慮を求める声が強まっている。国際交渉での決裂を受け、国内の制度設計そのものを問い直す議論が本格化しつつある。(情報元:長周新聞)
網走で秋サケ釣りに罰則付き新規制――竿3本・釣果3匹まで
北海道・網走では秋サケの遊漁に対し、新たな罰則付き規制が設けられることになった。1人につき竿3本・釣果3匹を上限とする内容で、サケ資源の回復を図る。遊漁者による過剰捕獲が資源量に影響しているとの指摘を受けての対応で、全国の内水面漁業管理にも波及する可能性がある先進的な取り組みだ。(情報元:HTB北海道ニュース)
市場・価格動向 – 対面鮮魚の新展開と不漁の影響
イオンスタイル下鶴間が7月28日オープン――同社最大規模の対面鮮魚コーナー
7月28日、神奈川県大和市にイオンスタイル下鶴間がオープンする。同社最大規模の対面鮮魚コーナーを設置し、パック販売中心の近隣スーパーとの差別化を図る戦略だ。「鮮度を目で確かめ、その場で相談できる」という対面購買体験への需要は根強く、水産品の小売における対面回帰のトレンドを示す事例として注目される。(情報元:激流オンライン)
茨城・涸沼のシジミが不漁――キビレによる食害が原因か
茨城県の涸沼(ひぬま)でシジミが不漁となっており、大涸沼漁協が原因を調査している。調査ではキビレの胃からシジミの稚貝が大量に見つかっており、食害の可能性が高まっている。涸沼はヤマトシジミの産地として知られるが、近年は水温上昇や外来種の影響などで漁業環境が変化している。調査結果と対策が注目される。(情報元:茨城新聞クロスアイ)
今週のニュース一覧
| 日付 | トピック | カテゴリ | 地域 |
|---|---|---|---|
| 7/20 | 「新3K」漁業体験・被災地の挑戦 | 漁業・養殖 | 宮城 |
| 7/20 | 雄島うに陸上養殖センターで塩うに作り体験 | 漁業・養殖 | 福井 |
| 7/21 | 銚子で漁業就業相談会 | 漁業・養殖 | 千葉 |
| 7/21 | 熊本・荒尾漁協マジャク釣り体験初企画 | 漁業・養殖 | 熊本 |
| 7/22 | 長崎大学水産研究所・完全養殖で世界展開を視野 | 漁業・養殖 | 長崎 |
| 7/22 | 境港クロマグロ漁終了・941トン(5年ぶり1000トン割れ) | 行政・法改正 | 鳥取 |
| 7/22 | 網走・秋サケ釣りに罰則付き新規制 | 行政・法改正 | 北海道 |
| 7/22 | クロマグロTAC拡大求め全国沿岸漁民がシンポ | 行政・法改正 | 全国 |
| 7/22 | フィッシュパスがNEDO衛星データコンペ第1位受賞 | 漁業・養殖 | 福井 |
| 7/24 | 中海ウナギ漁40年ベテランに密着・担い手不足深刻 | 漁業・養殖 | 島根 |
| 7/24 | 大間・漁業の女神×台湾交流で誘客期待 | 漁業・養殖 | 青森 |
| 7/25 | 茨城・涸沼のシジミ不漁・食害か調査 | 市場・価格動向 | 茨城 |
| 7/25 | 稚内ナマコ密漁事件で8人目逮捕 | 行政・法改正 | 北海道 |
| 7/25 | 浜田で沖合底引き網漁見学イベント | 漁業・養殖 | 島根 |
| 7/28予定 | イオンスタイル下鶴間オープン(同社最大規模対面鮮魚) | 市場・価格動向 | 神奈川 |
関連記事: 漁師・漁業の英語完全ガイド|基本用語100選と国際漁業での実践フレーズ
関連記事: 鹿児島水産高校(鹿児島県立鹿児島水産高等学校)の偏差値・学科・進路を完全解説|水産業王国で学ぶ魅力
まとめと来週の展望
今週の水産業界を貫いたテーマは「担い手育成」と「資源管理の実効性」の二本柱だ。
担い手問題では、宮城の漁業体験、銚子の就業相談会、熊本のマジャク体験、島根のウナギ漁継承と、地域によってアプローチは異なるが「体験から入職へ」という流れを作ろうという意識が共通している。水産系進学・就職に関心がある方は水産大学校の就職実績と進路も参考になる。
資源管理面では、境港クロマグロ漁の終了と網走サケ釣り規制が「枠の中で生きる水産業」の現実を改めて示した。先週のWCPFC交渉決裂に続いて今週も「資源は戻っているのに獲れない」というジレンマが各地で噴出した格好だ。
来週は、フィッシュパスの衛星データ活用技術の実用化スケジュールや、各地で進む担い手育成プログラムの続報が注目される。クロマグロ漁獲枠をめぐる政府間交渉の再開動向も引き続き目が離せない。
参考記事
- テレ朝NEWS「”新3K”掲げ「漁師を憧れに」被災地の挑戦」(2026年7月20日)
- みんなの経済新聞「銚子で「漁業就業相談会」若い担い手が漁師目指す第一歩に」(2026年7月21日)
- 西日本新聞「マジャク釣り体験の夏へ 荒尾漁協が初企画」(2026年7月21日)
- 中日新聞Web「塩うに作り、手際良く 雄島うに陸上養殖センター」(2026年7月20日)
- 長崎国際テレビ「完全養殖で描く漁業の未来 長崎大学水産研究所の挑戦」(2026年7月22日)
- dメニューニュース「境港の「クロマグロ漁」終了 漁獲枠に到達 今季は941トン」(2026年7月22日)
- 長周新聞「沿岸漁民苦しめる漁獲量規制 クロマグロの漁獲枠拡大を」(2026年7月22日)
- HTB北海道ニュース「「1人竿3本・釣果3匹」まで 網走の秋サケ釣りに罰則付き新規制」(2026年7月22日)
- 福井経済新聞「フィッシュパス、NEDOチャレンジ第1位を受賞」(2026年7月22日)
- 日テレNEWS NNN「中海ウナギ漁歴40年の大ベテランに密着 担い手不足が深刻化」(2026年7月24日)
- 茨城新聞クロスアイ「シジミ不漁、食害か 大涸沼漁協が原因調査」(2026年7月25日)
- 激流オンライン「イオンスタイル下鶴間が7月28日オープン 同社最大規模の対面鮮魚」(2026年7月19日)


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