マグロ漁師の仕事と年収を徹底解説|漁法別の働き方と目指す方法

マグロ漁師の仕事と年収を徹底解説|漁法別の働き方と目指す方法 漁業・漁法

最終更新: 2026-06-21

農林水産省の統計によると、日本のまぐろ類の漁業産出額は約1,237億円にのぼり、かつお類(約608億円)やさけ・ます類(約601億円)を上回る国内トップクラスの魚種です(e-Stat 統計表ID: 0001886486)。「マグロ漁師ってどんな仕事なのか」「本当に稼げるのか」「未経験からでもなれるのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。この記事では、マグロ漁師の仕事の全体像から漁法ごとの特徴、年収の仕組み、さらに具体的ななり方までを水産業界の視点から徹底解説します。まずマグロ漁の種類を整理し、次に年収と政府統計、最後にキャリアパスをお伝えしていきます。

マグロ漁師とは?日本の漁業を支える仕事の全体像

マグロ漁師とは、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロなどのマグロ類を専門的に漁獲する漁業者です。日本は世界有数のマグロ消費国であり、寿司や刺身の需要を支えるマグロ漁師は水産業界の中でも中核的な存在といえます。

マグロ漁は、操業する海域や漁法によって大きく性格が異なります。家の近くの海で日帰り操業する沿岸漁業から、大西洋やインド洋まで出かけて半年以上帰港しない遠洋漁業まで、その規模やスタイルは多岐にわたります。

項目 内容
対象魚種 クロマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ、ミナミマグロなど
操業海域 沿岸(日帰り)から遠洋(大西洋・インド洋・太平洋)まで
漁法 はえ縄、一本釣り、巻き網、定置網の4種が主流
従事者の特徴 体力と忍耐力が求められる。船上での共同生活が基本

マグロ漁師の仕事を理解するうえで重要なのが、沿岸漁業と沖合・遠洋漁業の違いです。沿岸漁業は個人経営が中心で自分の船で操業しますが、沖合・遠洋漁業は水産会社に所属して大型船に乗り組むスタイルが一般的です。マグロ漁師の場合、その両方のパターンが存在します。

マグロ漁の4つの漁法と特徴を徹底比較

マグロを獲る漁法は主に4種類あり、それぞれ船のサイズ、操業期間、獲れるマグロの品質が大きく異なります。

はえ縄漁(延縄漁)

マグロ漁の主力となる漁法です。1本の幹縄(メインライン)に数百から数千本の枝縄(ブランチライン)を付け、その先端の釣り針にイカやサバなどのエサを取り付けて海中に投入します。遠洋マグロはえ縄漁では幹縄の長さが約200kmにも達し、枝縄は約3,000本に及びます。

はえ縄漁の最大の特徴は、マグロを1尾ずつ丁寧に釣り上げるため、身の傷みが少なく鮮度が高い状態で水揚げできる点です。刺身や寿司向けの高級マグロはほとんどがこの漁法で獲られています。延縄漁の仕組みと歴史については、別記事で詳しく解説しています。

一本釣り

竿と糸を使い、マグロを1尾ずつ釣り上げる漁法です。青森県大間町の「大間まぐろ」は一本釣りの代名詞として全国的に知られています。即座に血抜きと神経締めを行うため、はえ縄漁以上に鮮度が高く、初競りでは1尾数千万円から数億円の値が付くこともあります。

一本釣りは個人経営の漁師が多く、1人または少人数で操業するのが一般的です。獲れる日と獲れない日の差が激しく、収入の変動幅が大きいのが特徴です。一本釣り漁法の特徴と技術については、別記事で詳しく紹介しています。

巻き網漁(まき網漁)

大型の網で魚群を包囲し、一度に大量のマグロを漁獲する方法です。船団を組んで操業し、魚群探知機やヘリコプターでマグロの群れを発見してから網を投入します。1回の操業で数十トンのマグロが獲れることもある効率の高い漁法です。

巻き網で漁獲されたマグロは、網の中で暴れるため身に打ち身が生じやすく、はえ縄や一本釣りに比べると品質面ではやや劣ります。そのため缶詰加工用や冷凍マグロ向けが中心となります。巻き網漁業の特徴と仕組みも参考にしてください。

定置網漁

沿岸部にあらかじめ大きな網を設置しておき、回遊してきたマグロが網に入るのを待つ漁法です。北海道の戸井地区や津軽海峡周辺では、定置網でクロマグロが水揚げされることがあります。マグロ専業の漁法というより、他の魚種と一緒にマグロも獲れる「副次的」な位置づけです。

漁法別の比較表

漁法 船の規模 操業期間 品質 1回の漁獲量 主な対象マグロ
はえ縄(遠洋) 350〜499トン 6〜18か月 高い 1日数尾〜数十尾 メバチ、キハダ、ビンナガ
はえ縄(近海) 10〜120トン 30〜120日 高い 1日数尾〜十数尾 クロマグロ、メバチ
一本釣り 1〜10トン 日帰り〜数日 最高 1日0〜数尾 クロマグロ
巻き網 数百トン規模の船団 数日〜数週間 やや低い 1回数十トン キハダ、カツオ混獲
定置網 陸上拠点から操業 通年設置 高い 不定(回遊次第) クロマグロ(副次的)

マグロ漁師の年収・収入の仕組みを経験年数別に解説

マグロ漁師の収入は、漁法や操業形態、経験年数によって大きく異なります。ここでは代表的な遠洋マグロはえ縄漁と、沿岸の一本釣りに分けて整理します。

遠洋マグロはえ縄漁の年収

遠洋マグロはえ縄漁船の乗組員は水産会社に雇用されるケースが多く、基本給に加えて漁獲量に応じた歩合給(水揚げ歩合)が支給されます。船上での食費・住居費は会社負担のため、手取りの大部分を貯蓄に回せる点が特徴です。

経験・役職 年収の目安(2026年時点) 備考
新人乗組員(1〜2年目) 360万〜410万円 研修期間中は固定給中心
中堅乗組員(3〜5年目) 450万〜510万円 機関部や甲板部の担当
海技士資格取得後 580万〜650万円 航海士・機関士として乗船
船長 770万〜860万円 操船と安全管理の責任者
漁労長 1,000万円以上 漁場選定を行う最高責任者

漁師の年収を漁法別に詳しく解説した記事も参考になります。

沿岸一本釣り(大間型)の年収

大間をはじめとする沿岸マグロ一本釣り漁師の年収は、非常に変動が大きいのが現実です。1尾のクロマグロが数百万円で取引されることもある反面、まったく獲れないシーズンもあります。年間を通じた収入は300万〜2,000万円以上と幅があり、「安定して稼げる仕事」とは言い切れません。

ただし、近年はクロマグロの資源管理が進み、漁獲枠の範囲内で計画的に操業する体制が整いつつあります。一本釣りの高品質なマグロは市場での評価が高く、ブランド価値のある産地では安定した単価が期待できます。

収入の仕組み:固定給と歩合給

マグロ漁師の報酬体系は、大きく「固定給型」と「歩合給型」の2つに分かれます。

報酬体系 特徴 主な漁業形態
固定給 + 歩合 基本給が保証され、水揚げに応じたボーナスが加算 遠洋はえ縄(会社所属)
完全歩合制 水揚げ金額を乗組員で分配。リスクとリターンが大きい 沿岸一本釣り、近海はえ縄(個人経営)

政府統計で見るマグロ漁業の市場規模

マグロがどれほど日本の水産業で重要なのかを、農林水産省の公式統計データで確認してみましょう。

まぐろ類の漁業産出額

農林水産省「漁業産出額」によると、日本のまぐろ類全体の漁業産出額は約1,237億円です。魚種別の内訳は以下の通りです。

まぐろの種類 漁業産出額(百万円) 構成比
きはだ 39,736 32.1%
めばち 37,743 30.5%
びんなが 17,590 14.2%
くろまぐろ 19,052 15.4%
みなみまぐろ 9,036 7.3%
その他のまぐろ類 535 0.4%
合計 123,691 100.0%

(出典: e-Stat 統計表ID: 0001886486 農林水産省 漁業産出額)

注目すべきは、キハダとメバチだけで産出額全体の6割以上を占めている点です。テレビ番組でよく取り上げられるクロマグロ(本マグロ)は産出額ベースでは全体の約15%にとどまります。つまり日本のマグロ漁業を数量的に支えているのは、遠洋はえ縄漁で獲られるキハダやメバチなのです。

養殖マグロの台頭

一方、海面養殖業に目を向けると、くろまぐろの養殖産出額は約471億円に達しています(e-Stat 統計表ID: 0002001226)。これは天然のくろまぐろ(約191億円)を大きく上回る規模で、マグロの安定供給において養殖の存在感が年々高まっています。マグロ養殖の最新技術については、別記事で技術的な詳細を解説しています。

マグロ漁師になるには?具体的なステップと求人の探し方

マグロ漁師を目指す方法は、「会社所属の遠洋・近海漁船に乗る」パターンと「沿岸漁師として独立する」パターンの大きく2つがあります。

パターン1:遠洋・近海はえ縄漁船の乗組員になる

未経験者が最も参入しやすいのがこのルートです。水産会社が運営する遠洋・近海マグロはえ縄漁船に乗組員として雇用されます。

ステップ1. 求人を探す。全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)やトリトンジョブ、Indeed等で「遠洋マグロ」「近海マグロ」で検索する

ステップ2. 会社説明会や漁業就業支援フェアに参加する。全国各地で開催される就業フェアでは、実際の船長や乗組員と話ができる

ステップ3. 採用後は研修を経て乗船。最初は雑務や調理補助からスタートし、徐々に漁具の扱いを覚えていく

ステップ4. 海技士免許の取得を目指す。航海士や機関士の資格を取得すれば、役職と年収の両方がステップアップする

特別な資格がなくても乗船できる点が遠洋・近海漁業の強みです。漁師になるための全体的な道筋については、キャリアガイド記事も参考にしてください。

パターン2:沿岸マグロ一本釣り漁師として独立する

大間や三崎のように、沿岸でクロマグロを一本釣りする漁師を目指す場合は、まず地域の漁協に加入し、漁業権を取得する必要があります。独立には船の購入費(中古でも数百万〜数千万円)や漁具の初期投資が必要で、ハードルは高めです。

多くの場合、先輩漁師のもとで数年間の修業を積んでから独立するのが一般的な流れです。自治体の新規就漁支援制度を活用すれば、家賃補助や生活費の支給を受けながら研修できる地域もあります。

求人の探し方まとめ

求人サイト・窓口 特徴
漁師.jp(全国漁業就業者確保育成センター) 公的機関が運営。求人情報と就業支援フェアの案内
トリトンジョブ 漁業専門の求人サイト。遠洋・近海の求人が豊富
Indeed・求人ボックス 一般求人サイトでも「マグロ漁船」で検索すると見つかる
各地の漁協 沿岸漁業の求人や新規就漁の相談窓口

マグロ漁師の船上生活と1日のスケジュール

遠洋マグロはえ縄漁船に乗り込んだ場合、陸を離れる期間は6か月から1年以上にもなります。船上での生活は、想像以上に規則正しいリズムで動いています。

遠洋はえ縄漁船の1日(操業日)

時間帯 作業内容
3:00〜4:00 起床・朝食。投縄(はえ縄の投入)の準備
4:00〜8:00 投縄作業。エサ付け・幹縄の繰り出しを行う
8:00〜9:00 投縄完了後、休憩と軽食
9:00〜17:00 揚縄作業。はえ縄を巻き取りながらマグロを船上に引き揚げ、血抜き・内臓処理・急速冷凍を行う
17:00〜18:00 甲板清掃・漁具の整備・翌日のエサ準備
18:00〜19:00 夕食。船内の調理員が作る食事は乗組員の大きな楽しみ
19:00〜21:00 自由時間。読書や映画鑑賞、仲間との会話
21:00 就寝

操業中は基本的に休日がなく、天候不良で操業できない日が実質的な「休み」となります。陸に上がると1〜3か月のまとまった休暇を取れる会社が多いです。

船上生活の実態

遠洋漁船での生活で現場の漁師がよく口にするのが「食事が唯一の楽しみ」という言葉です。多くの船には専属の調理員がおり、新鮮なマグロの刺身をはじめ、和洋中の料理が提供されます。食費はすべて会社持ちです。

一方で「携帯電話がほぼ使えない」「家族との連絡が限られる」「閉鎖的な空間での人間関係のストレス」といった厳しい面もあります。近年は衛星通信の導入で状況が改善されつつありますが、陸上の仕事とは生活環境が根本的に異なることは理解しておく必要があります。

遠洋漁業の種類と特徴の記事でも、遠洋漁船の操業パターンについて解説しています。

マグロ漁師に関するよくある質問

Q1: マグロ漁師に未経験からなれますか?

なれます。遠洋・近海のはえ縄漁船は未経験者を受け入れている会社が多く、乗船後に実地で技術を学べます。特別な資格も採用時点では不要です。ただし、船酔いへの耐性や長期間の船上生活に適応できるかが重要になります。

Q2: マグロ漁師の年収で1,000万円は現実的ですか?

遠洋はえ縄漁の漁労長クラスであれば年収1,000万円以上は十分に現実的です。ただし、漁労長になるまでには10年以上の経験と海技士免許の取得が必要です。沿岸の一本釣り漁師の場合は、大物を仕留められた年には1,000万円を超えることもありますが、年による変動が非常に大きいです。

Q3: マグロ漁師は女性でもなれますか?

法律上の制限はなく、近年は女性の漁業従事者も増えています。遠洋漁船の場合は長期間の船上生活となるため居住環境の課題がありますが、近海はえ縄漁や沿岸漁業では女性のマグロ漁師も活躍しています。

Q4: マグロ漁師にはどんな資格が必要ですか?

入門時点では特別な資格は不要です。ただし、キャリアアップには海技士免許(航海または機関)の取得が強く推奨されます。また、漁業無線通信士の資格があると船内での通信業務を担当でき、待遇面でも優遇されます。小型船舶操縦免許は沿岸で独立する場合に必要です。

Q5: マグロ漁船は本当に危険ですか?

海上で操業する以上、リスクはゼロではありません。荒天時の転落事故や、漁具に巻き込まれる事故は現在でも発生しています。ただし、近年は安全装備の向上や、GPS・衛星通信による気象情報の精度向上により、事故率は減少傾向にあります。安全管理を徹底している会社を選ぶことが重要です。

Q6: マグロの漁獲規制は今後どうなりますか?

クロマグロについては、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)やICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)による国際的な漁獲枠の管理が行われています。2024年のWCPFC年次会合では、資源回復を受けて大型魚の漁獲枠が各国とも従来の1.5倍に拡大されることで合意しました。日本の大型魚漁獲枠は5,614トンから8,421トンに増えています(2025年漁期から適用)。日本国内では水産庁が都道府県別・漁法別に漁獲枠を配分しており、マグロ漁師にとっては追い風の状況です。

関連記事: 漁師の種類は8つ|漁法・年収・勤務形態を一覧比較【2026年版】

関連記事: 今週の水産業界ニュースまとめ【6/15〜6/21】

まとめ:マグロ漁師を目指す方へのポイント

マグロ漁師の仕事について、重要なポイントを整理します。

  • マグロ漁の漁法は「はえ縄」「一本釣り」「巻き網」「定置網」の4種類。未経験者が目指しやすいのは遠洋・近海のはえ縄漁船への乗船
  • 年収は経験と役職で大きく変わる。遠洋はえ縄漁の新人で360万〜410万円、船長で770万〜860万円、漁労長なら1,000万円以上
  • 日本のまぐろ類の漁業産出額は約1,237億円。キハダとメバチが全体の6割以上を占め、日本のマグロ漁業を支えている
  • 養殖マグロの産出額(約471億円)が天然クロマグロ(約191億円)を上回っており、業界の構造変化が進行中
  • 求人は漁師.jpやトリトンジョブで探せる。未経験者歓迎の遠洋漁船求人は通年で見つかる

マグロ漁師は体力的に過酷な仕事ですが、海の上で仲間と力を合わせてマグロを追う経験は、他の仕事では得られない充実感があります。まずは漁業就業支援フェアに参加して現役漁師の話を聞いてみるのが、最初の一歩としておすすめです。漁師になるための全体ガイドや、漁師の年収ランキングの記事もあわせてチェックしてみてください。

参考情報

  • 農林水産省「漁業産出額」(e-Stat 統計表ID: 0001886486)— まぐろ類の漁業産出額データ
  • 農林水産省「漁業産出額」(e-Stat 統計表ID: 0002001226)— 海面養殖業のくろまぐろ産出額データ
  • 全国漁業就業者確保育成センター「遠洋マグロはえ縄漁」(https://ryoushi.jp/gyogyou/okiai-enyou/enyou-maguro/)— 漁法・漁船の規格・乗組員情報
  • 全国漁業就業者確保育成センター「近海マグロはえ縄漁」(https://ryoushi.jp/gyogyou/okiai-enyou/kinkai-maguro/)— 近海はえ縄漁の操業概要
  • 日本経済新聞「クロマグロ漁獲枠1.5倍、国際会議で最終合意」(2024年12月)— WCPFC漁獲枠拡大の報道
  • 水産庁「令和7管理年度について」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/241213.html)— 国内漁獲枠配分
  • 日本かつお・まぐろ漁業協同組合「乗組員の収入はどのくらいあるの?」(https://www.japantuna.net/tuna-column/6461/)— 遠洋マグロ漁船の収入構造



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