かまぼこの製造工程を徹底解説|原料から完成までの全工程

かまぼこの製造工程を徹底解説|原料から完成までの全工程 水産加工

最終更新: 2026-04-15

日本かまぼこ協会によると、2025年の全国チクワ・カマボコ類生産量は約39万8,206トンで、4年ぶりに増産に転じました。スーパーやおせち料理で当たり前のように見かけるかまぼこですが、「どうやって魚があの弾力ある食品に変わるのか」と疑問に思ったことはないでしょうか。

実はかまぼこの製造工程は、原料の魚選びから加熱処理まで10近い工程があり、そのひとつひとつが最終的な味と食感を左右します。この記事では、かまぼこの製造工程を原料調達から完成まで順を追って解説し、産地ごとの特色や品質管理の実態、さらに水産加工の仕事としての側面まで幅広くお伝えします。

かまぼこ製造工程とは?基本をわかりやすく解説

かまぼことは、魚肉に食塩を加えてすり潰し、塩溶性たんぱく質(主にミオシン)を溶解させた後に成形・加熱してたんぱく質を変性させることで弾力のある食品に仕上げた水産練り製品です。

項目 内容
定義 魚肉を塩ずりし、成形・加熱した水産練り製品
歴史 平安時代の文献『類聚雑要抄』(1115年)に初めて登場
名称の由来 竹に巻いた形が蒲(がま)の穂に似ていたことから「蒲鉾」
主な原料魚 スケトウダラ、グチ、エソ、ハモ、イトヨリなど
年間生産量 約39万8,206トン(2025年、日本かまぼこ協会調べ)

かまぼこの歴史は古く、文献で確認できる最古の記録は平安時代の1115年(永久3年)です。藤原忠実の転居祝いの宴会に供された串刺しの蒲鉾が記されており、日本かまぼこ協会はこの数字にちなんで11月15日を「かまぼこの日」と定めています。当初は淡水魚のナマズが主な原料でしたが、時代を経るにつれて海水魚が中心となり、現在の板付きかまぼこの形に進化しました。

かまぼこの製造工程【全8ステップ】

かまぼこの製造工程は大きく8つのステップに分かれます。ここでは工場で行われる一般的な流れを順番に解説します。

ステップ1:原料魚の調達と選別

かまぼこ製造の出発点は原料魚の調達です。日本かまぼこ協会によると、かまぼこには30種類以上の魚が使われていますが、現在最も多く使われているのはスケトウダラです。昭和30年代にスケトウダラの冷凍すり身が登場して以降、安定供給が可能になり、全国の主要原料となりました。

原料魚 主な産地 特徴
スケトウダラ 北海道・アラスカ 白身で弾力が出やすい。冷凍すり身の主原料
グチ(イシモチ) 瀬戸内海・九州 きめ細かく上品な「足」が出る高級原料
エソ 九州・四国 弾力が非常に強い。小田原かまぼこの伝統的原料
ハモ 瀬戸内海・紀伊水道 独特の風味。京都・大阪の練り物に多用
イトヨリ タイ・東南アジア 白さに優れる。輸入すり身の原料

現在は国内漁獲量の減少により、原料の大半が輸入冷凍すり身に置き換わっています。北海道やアラスカで漁獲されたスケトウダラは洋上のすり身船や陸上工場で鮮度の良いうちにすり身に加工され、冷凍状態で各地のかまぼこ工場に届けられます。

ステップ2:頭取り・内臓除去・採肉

生魚から製造する場合は、まず頭と内臓を除去し、三枚おろしの要領で骨から魚肉を取り出します。工場では採肉機(フィッシュミートセパレーター)を使い、効率的に魚肉と骨・皮を分離します。冷凍すり身を使用する場合はこの工程は不要で、解凍後に次の水さらしへ進みます。

ステップ3:水さらし(水洗い)

採肉した魚肉を真水にさらし、血液、脂肪分、水溶性たんぱく質を洗い流す工程です。この水さらしがかまぼこの品質を大きく左右します。

水さらしの目的は3つあります。第一に、血合いや脂肪分を除去してかまぼこ特有の白さを生み出すこと。第二に、不要な水溶性たんぱく質を取り除き、弾力のもとになる塩溶性たんぱく質(ミオシン)の濃度を高めること。第三に、生臭みを除去して上品な風味に仕上げることです。

水の温度は10度以下に保つのが一般的で、回数は2〜3回が標準です。洗いすぎると旨味成分まで流出してしまうため、職人の経験と判断が求められます。

ステップ4:脱水・精製(リファイニング)

水さらしした魚肉から余分な水分を絞り出す工程です。ロータリースクリーンで大まかに脱水した後、リファイナーと呼ばれる機械で魚肉中に残った皮、ウロコ、小骨、筋などの不純物をこし取ります。最後にスクリュープレスで魚肉を均一に脱水し、きめの細かいすり身に仕上げます。

工程 使用機器 目的
粗脱水 ロータリースクリーン 大量の水分を効率的に除去
精製 リファイナー 皮・ウロコ・小骨の除去
最終脱水 スクリュープレス 均一な水分含量に調整

ステップ5:擂潰(らいかい)・塩ずり

かまぼこ製造で最も重要とされる工程が「塩ずり」です。脱水したすり身に食塩(魚肉重量の2〜3%程度)を加え、石臼やサイレントカッターで練り上げます。

食塩を加えて練ることで、魚肉中の塩溶性たんぱく質であるミオシンが溶け出し、粘り気のある「ゾル状態」になります。このゾルが後の加熱工程で網目構造(ゲル)を形成し、かまぼこ特有の弾力(業界では「足」と呼びます)を生み出します。

この段階で砂糖、みりん、卵白、でん粉などの副原料も加えます。農畜産業振興機構の資料によると、でん粉はかまぼこの食感を調整する重要な副原料で、全国のかまぼこ製造で広く使われています。

老舗のかまぼこ店では、季節やその日の気温・湿度を見極めながら石臼で丹念に練り上げる伝統的な製法を今も守っているところがあります。練りの温度が上がりすぎるとたんぱく質が変性してしまうため、氷を加えて10度以下に保つのが鉄則です。実際の現場では「手のひらですり身を触り、粘りの出方で練り具合を判断する」という職人もいて、数値化しにくい感覚の世界が残っています。

ステップ6:成形

練り上げたすり身を製品の形に整えます。かまぼこの種類によって成形方法は大きく異なります。

かまぼこの種類 成形方法 代表的な製品
板付きかまぼこ 木の板(杉板など)の上にすり身を半円形に盛る 小田原かまぼこ、紅白かまぼこ
竹輪(ちくわ) 竹や金属の棒にすり身を巻き付ける 焼きちくわ、生ちくわ
揚げかまぼこ すり身を型に入れて油で揚げる さつま揚げ、じゃこ天
蒸しかまぼこ 型やフィルムに入れて蒸す なると巻き、伊達巻
昆布巻きかまぼこ 昆布ですり身を巻く 富山の昆布巻きかまぼこ

板付きかまぼこの場合、板には杉やモミの木が使われます。板はすり身の余分な水分を吸収して適度な硬さに調整する役割と、成形の土台としての役割を持っています。

ステップ7:加熱処理

成形したすり身を加熱して、たんぱく質を変性させ弾力のある食品に仕上げます。加熱方法は製品によって異なり、最終的な食感や風味を決める重要な工程です。

加熱方法 温度帯 時間の目安 対応製品
蒸し 85〜95度 30〜50分 板付きかまぼこ、なると
焼き 200〜300度 10〜20分 焼きちくわ、笹かまぼこ
揚げ 160〜180度 3〜8分 さつま揚げ、じゃこ天
茹で 80〜90度 20〜40分 はんぺん
坐り+蒸し 30〜40度→85〜95度 30分〜+30〜50分 高級板かまぼこ

注目すべきは「坐り(すわり)」と呼ばれる工程です。高級かまぼこの製造では、蒸す前に30〜40度の低温で30分〜数時間置くことで、たんぱく質がゆっくりとゲル化し、より弾力の強い「足」を形成します。この二段階加熱は小田原かまぼこなどの高級品で用いられる技法です。

ステップ8:冷却・包装・検品

加熱後のかまぼこは速やかに冷却します。急冷することで細菌の繁殖を防ぎ、保存性を高めます。冷却後は包装ラインに乗せ、金属探知機やX線検査装置による異物検査、重量チェック、外観検査を経て出荷されます。

近年の工場ではAIを活用した外観検査システムを導入するケースも増えており、ひび割れや変色を自動検出して品質の均一化を図っています。

かまぼこの種類と産地別の特色

かまぼこは全国各地で地域の食文化と結びついて独自の発展を遂げてきました。ここでは代表的な産地と、その特色を紹介します。

産地 代表的な製品 特色
小田原(神奈川) 板付き蒸しかまぼこ エソやグチなど地魚を使い、きめ細かく弾力のある「足」が特徴。江戸時代からの歴史を持つ
仙台(宮城) 笹かまぼこ 笹の葉の形に成形して焼き上げる。ヒラメやタラが原料で、香ばしい焼き目と柔らかな食感
富山 昆布巻きかまぼこ・細工かまぼこ 板を使わず昆布で巻く独自スタイル。北前船で運ばれた昆布がルーツ。鯛や鶴亀を模した細工かまぼこは祝い事の引き出物として有名
長崎 長崎かまぼこ アゴ(トビウオ)を使った焼き蒲鉾やすぼ巻きが名物。キリシタン文化の影響で独自の形状が発展
愛媛(宇和島) じゃこ天 ホタルジャコなどの小魚をまるごとすり身にして揚げる。骨や皮ごと使うため栄養価が高い

2024年の都道府県別かまぼこ生産量では、兵庫県が約4万1,197トンでトップ、次いで新潟県が約4万1,169トンと僅差で続いています(2024年、農林水産省統計)。

農林水産省の漁業産出額データによると、日本の水産加工業全体の中でかまぼこを含む練り製品は重要な位置を占めています。全国の海面漁業・養殖業の産出額は約1兆4,228億円(e-Stat 統計表ID: 0001886486)に上り、この漁獲物の一部がかまぼこの原料として加工されています。

かまぼこの品質を決める「足」の科学

かまぼこ業界で品質の指標として使われるのが「足(あし)」という概念です。足とは、かまぼこの弾力・歯ごたえ・歯切れといった物理的性質を総合的に表す言葉で、良い足のかまぼこは噛んだときにしなやかな弾力があり、歯切れよく切れます。

足の良し悪しを左右する主な要因は以下の通りです。

要因 影響 対策
原料魚の鮮度 鮮度が落ちるとミオシンが変性し弾力が低下 漁獲後すぐにすり身加工。冷凍すり身は-25度以下で保管
水さらしの回数 洗いすぎると弾力が落ち、不足すると臭みが残る 魚種に応じて2〜3回が標準
塩ずりの温度 10度を超えるとたんぱく質が変性して「戻り」が起きる 氷を加えて10度以下を維持
加熱温度と時間 急激な高温は「す」(気泡)が入る原因になる 坐り工程を入れて二段階加熱
副原料の配合 でん粉の量が多すぎると本来の弾力が損なわれる 魚肉重量の5〜10%程度が一般的

「戻り」と呼ばれる現象にも注意が必要です。加熱温度帯が60〜70度付近でたんぱく質分解酵素が活性化し、せっかく形成されたゲル構造が壊れてしまうことがあります。高級かまぼこの製造で坐り工程(30〜40度で低温ゲル化)が重視されるのは、この戻り温度帯を素早く通過させるためでもあります。

HACCP対応と衛生管理の実際

2021年6月から全ての食品製造事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。かまぼこ工場も例外ではなく、原料の受入から出荷まで各工程の危害要因を分析し、重要管理点(CCP)を設定して管理しています。

全国水産加工業協同組合連合会は、小規模な水産加工業者向けのHACCPの手引書を作成しており、2021年2月に厚生労働省の承認を受けています。かまぼこ製造における主な管理ポイントは以下の通りです。

工程 危害要因 管理基準
原料受入 微生物汚染・異物混入 温度確認(冷凍すり身は-18度以下)、外観チェック
水さらし 微生物増殖 水温10度以下、使用水の衛生検査
擂潰 温度上昇による品質劣化 品温10度以下を維持
加熱 殺菌不足 中心温度75度以上を1分以上(CCP)
冷却 二次汚染 急冷し、10度以下まで速やかに冷却
包装 異物混入 金属探知機・X線検査

大日本水産会ではHACCP認定制度を運営しており、対米輸出や対EU輸出を行うかまぼこ工場では、各国の基準に合わせたHACCP認証の取得が求められます。

水産加工の仕事としてのかまぼこ製造

ここまで製造工程を見てきましたが、「かまぼこ製造の仕事に興味がある」という方も少なくないでしょう。水産加工業は水産業界の中でも安定した雇用を持つ分野のひとつです。

かまぼこ製造の現場で求められるスキルや知識には以下のようなものがあります。

項目 内容
必要な資格 食品衛生責任者(必須)、HACCP管理者(3日間の講習で取得可能)
あると有利な資格 水産製品製造技能士、食品表示検定
求められるスキル 温度管理・衛生管理の基本知識、製造ラインのオペレーション
勤務形態 早朝勤務が多い(朝5時〜6時始業の工場も)。繁忙期は年末(おせち需要)
キャリアパス 製造ライン→品質管理→工場長。商品開発部門への異動も

水産加工の仕事に興味がある方は、漁師・水産業のキャリアガイドも参考にしてみてください。また、水産業界で必要な資格の種類では、食品衛生責任者を含む水産関連資格を網羅的に解説しています。

かまぼこの製造工程に関するよくある質問

Q1: かまぼこの原料にはどんな魚が使われていますか?

現在最も多く使われているのはスケトウダラで、冷凍すり身として全国のかまぼこ工場に供給されています。このほかグチ、エソ、ハモ、イトヨリなど30種類以上の魚が原料となります。昭和30年代以前は各地の近海で獲れた魚をそのまま使うのが一般的でしたが、冷凍すり身の技術が確立されて以降は輸入原料が主流となっています。

Q2: かまぼこの「足」とは何ですか?

「足」とは、かまぼこの弾力や歯ごたえを表す業界用語です。足が強いかまぼこは噛んだときにしなやかな弾力があり、歯切れよく切れます。足の強さは原料魚の鮮度、水さらしの程度、塩ずりの技術、加熱条件など製造工程の各段階に左右されます。

Q3: 家庭でかまぼこを手作りすることはできますか?

白身魚(タラやタイなど)の切り身があれば家庭でも作れます。魚肉をフードプロセッサーで細かくし、塩を加えてよく練り、板に盛り付けて蒸し器で30〜40分蒸せば完成です。ただし工場のような強い「足」を出すには鮮度の良い魚と適切な温度管理が必要なため、初めは柔らかめの仕上がりになることが多いです。

Q4: かまぼこの板にはどんな意味がありますか?

かまぼこの板(通常は杉やモミの木)には2つの役割があります。ひとつは成形の土台としてすり身を支えること。もうひとつは、板が余分な水分を吸収して適度な硬さに調整する「調湿機能」です。このため板付きかまぼこは板から外さずに保存するのが望ましいとされています。

Q5: かまぼこはなぜ弾力があるのですか?

かまぼこの弾力は、魚肉中の塩溶性たんぱく質(ミオシン)が加熱によってゲル化することで生まれます。塩ずりの段階でミオシンが溶け出して網目状のネットワークを形成する準備が整い、加熱で不可逆的に固まることで独特の弾力が生まれます。この原理は「かまぼこゲル」として食品科学の分野でも研究対象になっています。

Q6: 冷凍すり身と生すり身では品質に違いがありますか?

冷凍すり身は品質が安定しており長期保存が可能というメリットがあります。一方、生すり身は鮮度が高いため風味に優れ、より弾力の強いかまぼこが作れるとされています。高級かまぼこ店では生の地魚から作る生すり身にこだわるところもありますが、品質管理の面では冷凍すり身が圧倒的に扱いやすく、現在の大量生産を支えているのは冷凍すり身です。

関連記事: 魚醤の作り方|自家製で仕込む手順・魚種別の特徴を徹底解説

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まとめ:かまぼこの製造工程のポイント

かまぼこの製造工程について、重要なポイントを整理します。

  • 製造工程は原料調達→採肉→水さらし→脱水→塩ずり→成形→加熱→冷却・包装の8ステップ
  • 品質を左右する最重要工程は「水さらし」と「塩ずり」で、温度管理が鍵を握る
  • 原料は国内漁獲量の減少により、輸入冷凍すり身(主にスケトウダラ)が主流
  • 小田原、仙台、富山、長崎など産地ごとに原料魚や製法、形状に独自の特色がある
  • 2021年からHACCPに沿った衛生管理が全食品事業者に義務化され、かまぼこ工場の品質管理体制はさらに強化された

かまぼこの製造に関連する統計データをもっと詳しく知りたい方は、水産業界の統計データまとめで最新の数値を定期更新しています。

水産加工の世界に興味が湧いた方は、まず干物の作り方ガイド明太子の製造方法など、身近な水産加工品の記事から読み進めてみてください。製造工程の共通点や違いを知ることで、水産加工業の奥深さがより実感できるはずです。

参考情報

  • 日本かまぼこ協会「かまぼこができるまで」(https://www.nikkama.jp/deki/)
  • 株式会社堀川「かまぼこの一般的な製造方法」(https://www.horikawa-corp.co.jp/knowledge/seizou/)
  • 農畜産業振興機構「かまぼこと副原材料」(https://www.alic.go.jp/starch/japan/user/200810-01.html)
  • 紀文食品「練りものができるまで」(https://www.kibun.co.jp/knowledge/neri/basics/dekirumade/)
  • 農林水産省 漁業産出額(e-Stat 統計表ID: 0001886486)
  • 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書(小規模な水産加工業者向け)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11135000/000708826.pdf)



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