さんまが不漁な理由を徹底解説——漁獲量激減の原因・現状・今後の見通し

さんまが不漁な理由を徹底解説——漁獲量激減の原因・現状・今後の見通し 未分類

2026年8月28日、日本経済新聞が「北海道のサンマ漁、序盤低調で卸値2倍 小売り1匹400〜500円」と報じた。漁が始まったばかりなのに価格が昨年の2倍。買い物客からすれば「またか」という感覚だろうが、現場の漁師からすれば毎年繰り返される深刻な現実だ。

2026年の来遊量は2025年比40%とされており(水産研究教育機構の事前調査)、記録的な不漁が続いている。2003年には約35万トンあったさんまの日本の漁獲量が、2021年には約1.8万トンまで落ち込んだ。たった約20年で漁獲量が94%以上も減ったことになる。

なぜここまでさんまは減ったのか。「乱獲したのか」「気候変動のせいか」「中国・台湾の船が全部取ってしまったのか」——様々な声が出るが、現実はひとつの原因ではなく複数の要因が重なっている。本記事ではさんまが不漁になった本当の理由を、現場と科学の両面から解説する。

さんまが不漁な現状——2026年シーズンの実態

歴史的な不漁が続く漁獲量の推移

農水省の漁業・養殖業生産統計を振り返ると、さんまの漁獲量は20年で壊滅的な減少を見せている。

日本の漁獲量(概算) 主なトピック
2003年 約35万トン 近年最高水準
2008年 約35万トン 豊漁期が続く
2014年 約24万トン 減少傾向の始まり
2019年 約4.6万トン 初めて5万トンを下回る
2021年 約1.8万トン 歴史的低水準
2022年 約1.7万トン 低水準継続
2026年 来遊量は2025年比40%予測 過去最低水準を更新する可能性

出典:農水省「漁業・養殖業生産統計」、水産研究教育機構2026年度事前調査

2026年シーズンは特に厳しい。水産研究教育機構の事前調査では2026年の来遊量が2025年比40%と予測されており、過去最低水準を更新する可能性がある。

2026年8月の現場——小型で少量、価格は2倍

2026年8月13日、北海道の花咲港(根室市)でさんまの初水揚げがあった。しかし漁獲されたさんまは1匹20〜30gという非常に小型のもので、単価は162〜302円/kgと昨年比でも高水準だった。

その後8月28日には日経新聞が「序盤低調で卸値2倍」と報じ、小売価格は1匹400〜500円に達した。かつては「秋の大衆魚」として1匹100円以下で買えたさんまが、気軽に食卓に乗せにくい高級魚化しつつある。

さんまの旬や漁獲状況についてはさんまの旬ガイド、漁の解禁日についてはさんま漁 解禁ガイドでも詳しく解説している。

さんまが不漁になった5つの理由

さんまの不漁は単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っている。現場と研究機関の知見を踏まえ、主要な5つの原因を解説する。

理由1:水温上昇による分布域の変化(最大要因)

水産研究教育機構の調査では、近年さんまの分布域が北方・沖合にシフトしていることが明確になっている。

さんまはもともと北太平洋の亜寒帯水域で夏を過ごし、秋になると黒潮の影響を受けながら南下して日本沿岸に来遊する。この来遊ルートが変化しているのだ。

地球温暖化による海面水温の上昇により、さんまが好む低水温域(10〜20℃)が北方・東方にシフトしている。その結果、さんまが日本列島の近海まで南下せず、沖合の遠い位置で分布するようになった。

日本の沿岸漁業(特に棒受け網漁の小型船)は沖合まで出られないため、さんまの群れが届く前に漁期が終わってしまうケースが増えている。これが「さんまはどこかにいるが、日本の船が届かない」という状況だ。

理由2:中国・台湾の漁船による先取り漁

2013年ごろから中国・台湾の漁船が北太平洋公海でのさんま漁を急拡大した。これが「沖合で先取りされる」問題だ。

さんまが日本近海に来遊する前に、公海上で大量に漁獲されてしまう。国際規制がなかった2010年代前半は、中国・台湾の漁船数と漁獲量が急増した。データで見ると、日本・ロシア・台湾・中国・韓国などを合わせた北太平洋全体のさんま漁獲量は2015年ごろから横ばいから減少に転じているが、その内訳として日本の割合が大幅に低下し、中国・台湾の割合が増大した時期があった。

2019年にNPFC(北太平洋漁業委員会)が国際規制を設けたが、それ以前の公海での大量漁獲が資源水準の低下に影響した可能性が指摘されている。

理由3:資源量そのものの減少

日本の漁獲量が減少しただけでなく、北太平洋全体でのさんまの資源量も減少していることが研究で示されている。

水産研究教育機構の資源評価によると、さんまの北太平洋全体の資源量は2000年代から減少傾向にあり、特に2014年以降は加速している。理由は分布域の変化だけでなく、餌となる動物プランクトン(カイアシ類など)の分布変化による栄養環境の変化も関係していると考えられている。

海洋環境の変化により、さんまが十分に成長できる環境が狭まっている可能性があり、これが「小型のさんましか獲れない」という現象にも関連している。

理由4:過去の漁獲圧——「獲りすぎ」の遺産

さんまの急速な資源減少には、2000年代の豊漁期の「獲りすぎ」も影響したという見方がある。

2003年に約35万トンを超えた豊漁は、さんまの資源が豊富だった時代の話だ。この時期に多くの漁船が参入し、漁獲能力が拡大した。資源量が多い時期に大量漁獲することは問題なく見えるが、もし資源回復力を超えて漁獲し続けていた場合、その後の資源量の低下に影響する可能性がある。

ただし、この点については研究者の間でも意見が分かれており、どの程度寄与したかの定量的な評価は難しい。水温変化のほうが主要因という見方が現在は主流だ。

理由5:棒受け網漁の構造的な問題

日本の主流漁法である棒受け網漁(ぼうけあみ漁)は、光でさんまを集めて網ですくい取る漁法だ。沖合に分布するさんまを追うには、大型船が必要になる。

しかし多くの中小規模の漁業者は大型船を所有していないため、来遊が沖合にとどまると漁が成立しない。さんまの分布が沖合化するほど、日本の漁業構造との不一致が広がる。

加えて、燃料代の高騰が漁業コストを押し上げており、不漁の年は採算が取れないまま漁を続ける事業者も少なくない。これがさんまの価格上昇と漁業者の経営圧迫という二重苦につながっている。

不漁5原因の影響度・改善可能性まとめ

5つの要因を整理すると以下のようになる。

要因 影響度 改善可能性 主な対応策
水温上昇による分布域シフト 大(最大要因) 低(気候変動と連動) 海洋観測の精度向上・遠洋対応
中国・台湾の公海漁獲増加 中〜大 中(NPFC規制次第) NPFCでの国際交渉・漁獲枠削減
資源量そのものの減少 低〜中(長期的) 漁獲規制・資源モニタリング強化
過去の高漁獲圧 中(諸説あり) 不可逆 再発防止のための資源管理強化
棒受け網漁の構造的限界 中(構造改革次第) 大型船への転換・多魚種漁業への転換

出典:水産研究教育機構資源評価・NPFC各種資料をもとに水産ナビ編集部が作成

国際的な漁業管理——NPFCの取り組みと限界

NPFCとは何か

北太平洋漁業委員会(NPFC: North Pacific Fisheries Commission)は、北太平洋の公海における水産資源の保存・管理を目的とした国際機関だ。2015年に設立され、日本・ロシア・中国・台湾・韓国・バヌアツ・米国・カナダが加盟している。

さんまに関しては2019年から漁獲規制を開始した。当初は全体漁獲量の上限を設定し、段階的に削減する方向で協議が進んでいる。

NPFCの規制が難しい理由

国際的な漁業管理は「皆がルールを守らなければ機能しない」という根本的な問題がある。

NPFCの枠組みでは、各国・地域に漁獲割当が設定されているが、公海での実際の漁獲量の把握・監視には限界がある。また規制に参加していない国の漁船が公海で漁を行う場合の対応も課題だ。

さらに資源管理には「短期の経済的利益より長期の資源保全を優先する」という政治的決断が必要だが、国際交渉ではこの利害調整が難しい。特に中国・台湾との間での交渉は日本にとって複雑な政治的文脈もある。

日本の水産行政の対応

日本の水産庁はNPFCを通じた規制強化を求める立場を取り続けており、漁獲枠の削減交渉を継続している。国内では燃油補助や経営支援策が講じられているが、漁業者からは「本質的な資源回復策にはなっていない」という声も多い。

水産資源管理の詳細については水産業界データ集でも情報を提供している。

不漁時代のさんまの選び方と賢い食べ方

高くなったさんまを美味しく食べるための情報も押さえておきたい。

不漁時代のさんまの選び方(4つのポイント)

1. 旬(9〜10月)を外さない

さんまの旬は9〜10月だ。8月の初水揚げ時期は小型で脂のりが薄い。9月以降に大型で脂が乗ったものが流通し始めるため、この時期に合わせて購入するのが賢明だ。2026年は全体的に不漁のため量が少ないが、旬のものを選ぶことで品質は最大限に確保できる。

2. 目が澄んでいるか確認する

新鮮なさんまの目は透明で澄んでいる。濁っているものは鮮度が落ちている。腹が銀白色に光り、下顎先端が黄色みがかっているものは鮮度の高いサインだ。

3. 体が太く脂がのっているものを選ぶ

旬のさんまは胴体が太く、指で軽く押すと弾力がある。細く痩せたものは産卵後や不漁期のものが多く、脂が乗っていない。2026年は小型(20〜30g)のものが多いとされているが、産地・時期を絞って選べばその中でも良品を選べる。

4. 冷凍さんまの活用も選択肢

豊漁だった年の冷凍さんまが市場に出ている場合、旬の時期に漁獲して冷凍したものは品質が良い場合がある。「冷凍=品質が落ちる」という先入観は現代の冷凍技術からすれば誤解だ。サンマのDHA(2,246mg/100g)・EPA(1,492mg/100g)の脂質は冷凍保存でも比較的安定している。

少量でも最大限に楽しむ調理法

塩焼き——シンプルに旨みを引き出す

さんまの定番は塩焼きだ。内臓ごと焼くのが美味しい食べ方とされるが、内臓の苦みが気になる場合は取り除いても良い。旬の脂の乗ったさんまは塩焼きで十分だ。大根おろしとスダチを添えると脂っぽさが和らぐ。

かば焼き——甘みと脂のマリアージュ

さんまのかば焼きは、塩焼きとはまた違う味わいだ。醤油・みりん・砂糖のタレでさんまを焼くことで、甘辛い風味と脂の旨みが組み合わさる。丼にするとご飯が進む。

さんまの刺身——鮮度が良いものだけで

水揚げ当日か翌日の新鮮なものに限り、さんまの刺身は絶品だ。皮を炙った「炙りさんまの刺身」も風味が増して美味しい。ただしアニサキス(寄生虫)のリスクがあるため、-20℃で24時間以上冷凍したものか、新鮮で信頼できる産地直送品を選ぶことが重要だ。

缶詰の活用——栄養面では優れた選択肢

さんまの缶詰(蒲焼き・水煮)は、DHA・EPAをほぼそのまま摂取できる。生さんまに比べて価格変動が小さく、不漁による価格高騰の影響を受けにくい。保存性も高く、防災食としても優れている。

来遊量回復の見通し——専門家はどう見るか

資源回復には長期的視点が必要

水産研究教育機構は、さんまの資源回復には長期的な取り組みが必要だと指摘している。海洋環境の変動(水温・流れ・プランクトン量)が最大の要因であるとすれば、国際的な漁業規制だけで短期的に回復させることは難しい。

一方で、NPFCによる国際的な漁獲量削減が継続されれば、資源への圧力が緩和され、回復の余地が生まれる可能性はある。ただし回復には10年単位の時間がかかることも専門家の多くが認めている。

海洋環境の変化が「不可逆的」である可能性

気候変動による海面水温の上昇が構造的に続く場合、さんまの分布域シフトは「一時的な変動」ではなく「長期的なトレンド」になりうる。この場合、さんまが日本近海に大量来遊する「昭和・平成初期の豊漁時代」には戻らない可能性も否定できない。

マイワシの漁獲量の増減(2026年は釧路港でマイワシ水揚げゼロという異変も発生)を見ても、海洋生態系の変動が広域的に起きていることは明らかだ。マイワシの動向についてはマイワシ 旬ガイドでも解説している。

日本が取るべき現実的な対応

現場の漁業者と水産研究者の間で共通する認識は「豊漁時代には戻れない可能性を前提に、現在の資源レベルでの持続的な漁業を設計する」という考え方だ。

具体的には以下のような取り組みが必要とされる。

  • NPFCを通じた漁獲量の国際的な削減継続
  • 国内の漁船規模・漁獲能力の適正化
  • 消費者への「旬と価格変動を受け入れる文化」の醸成
  • 代替魚種(マアジ・イワシ等)との需要分散
  • さんまの養殖技術研究(現時点では実用化に至っていない)

FAQ:さんまの不漁についてよくある質問

Q1. さんまの不漁はいつから始まった?

漁獲量の急減が顕著になったのは2014〜2015年ごろからだ。それ以前は年間10〜30万トン規模で推移していたが、2019年以降は5万トンを下回り、2021年には約1.8万トンという歴史的な低水準に達した。

Q2. 中国・台湾の漁船が全部とっているのか?

一因ではあるが「全部とっている」は正確ではない。2010年代に中国・台湾の公海での漁獲量が増加し、日本近海に来遊する前に漁獲される量が増えたことは事実だ。しかし水温上昇による分布変化も同時に起きており、どちらの影響が大きいかは研究者でも意見が分かれている。

Q3. さんまの養殖は不可能なのか?

現時点では商業的なさんまの養殖は実用化されていない。さんまは回遊性が強く、広い海域を移動する魚であるため、閉鎖的な養殖施設での飼育が難しい。水産研究教育機構をはじめとした研究機関が養殖技術の研究を続けているが、実用化には相当の時間がかかると見られる。

Q4. さんまの価格はこれからも上がり続けるのか?

資源量の回復には長期的な時間が必要であり、不漁が続く限り価格高騰は避けにくい傾向がある。ただし漁獲量が増えれば価格は下がるため、来遊量の変動によって年ごとに価格が大きく変わる可能性もある。中長期的には「さんまは高い魚」という前提で食生活を組み立てることが現実的かもしれない。

Q5. さんまの栄養価はどれくらい?

さんまは栄養面でも優れた食材だ。文部科学省八訂によると、さんま(皮なし・生)100gあたりDHA 2,246mg、EPA 1,492mg、たんぱく質18.1g、ビタミンB12 17.7μg(1日推奨量の約7.4倍)を含む。秋の旬(9〜10月)は脂質が20〜26%に達し、栄養価が最も高い時期だ。

Q6. さんまが不漁の年に代わりにおすすめの魚は?

さんまの代わりにDHA・EPAを多く含む青魚として、アジ・イワシ・サバが挙げられる。旬のアジ(5〜7月)、マイワシ(夏・冬の二回旬)、サバ(10〜12月)はさんまと同様の栄養素を持ち、価格も比較的安定している。年間を通じた「旬の青魚の選び方」を学ぶことで、さんまの不漁の影響を食卓レベルで緩和できる。

Q7. NPFCの規制は効いているのか?

2019年のNPFC規制開始以降も資源の顕著な回復は見られていないが、これは規制前の過剰漁獲と海洋環境変化の影響が大きく、規制の効果が出るまでに時間がかかるためとも解釈できる。規制がなければさらに状況が悪化していた可能性もあり、国際的な取り組みの継続は重要だ。

関連記事: あさりの旬はいつ?春秋2回ある理由と産地・栄養・選び方を完全解説

まとめ——さんまの不漁は「複合的な危機」だ

さんまが不漁になった理由は複合的だ。水温上昇による分布域の北方・沖合シフト、中国・台湾の公海漁獲量の増大、資源量そのものの減少、漁業構造の問題、そして過去の漁獲圧——これらが重なって現在の危機を生んでいる。

2026年シーズンは「来遊量2025年比40%」という予測の下、小売価格が1匹400〜500円に達している。かつての「庶民の秋の魚」は、今や高級食材化しつつある。

しかし現場の漁師は今年もさんまを追って海に出る。価格が高くても、燃料代がかさんでも、さんま漁を続ける人たちがいる。その苦境を知った上で、旬の時期に一匹のさんまを選ぶことが、消費者にできる現実的な応援だ。

参考情報

  • 農水省「漁業・養殖業生産統計」各年版
  • 水産研究教育機構「令和4年度さんま資源評価結果」
  • 水産研究教育機構「2026年度さんま来遊量事前調査」
  • NPFC(北太平洋漁業委員会)公式資料
  • 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
  • 日本経済新聞「北海道のサンマ漁、序盤低調で卸値2倍」2026年8月28日
  • [さんまの旬と食べ方完全ガイド](https://suisan-navi.jp/uncategorized/sanma-shun-guide/)
  • [さんま漁 解禁時期と漁の仕組み](https://suisan-navi.jp/uncategorized/sanma-ryo-kaikin-guide/)
  • [マイワシの旬と産地ガイド](https://suisan-navi.jp/uncategorized/maiwashi-shun-guide/)
  • [ホタテ漁業の仕組みと資源管理](https://suisan-navi.jp/fishing/hotate-fishing-mechanism/)
  • [水産業界データ集](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fishery-industry-data/)


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