最終更新: 2026-10-18
今週は水産業の人手不足対策と、資源減少という根深い課題への対応が同時に報じられた一週間だった。タイミーが岡山県漁業協同組合連合会とスポットワークの業務提携を結ぶ一方、全国の漁獲量はこの10年で100万トン近く減り、佐渡の寒ブリも記録的な不漁が続いている。加工・流通面では廃棄漁網のリサイクルやMSC「海のエコラベル」の認知度調査が公表され、行政面では福島県漁連が原発事故に伴う操業自粛海域の縮小を検討した。
前回(week41)のまとめはこちらから確認できる。
漁業・養殖:漁業の人手不足にスポットワークの活用が広がる
スポットワークサービスを展開するタイミーは10月16日、岡山県漁業協同組合連合会(JF岡山漁連)と業務提携契約を締結したと発表した。タイミーは2023年11月に農業専門チームを立ち上げ、2024年11月には一次産業全体に対象を広げた専門チームを編成しており、水産事業者向けの説明会実施や業務の切り分けサポート、マニュアル整備などを通じて漁業現場の人手不足解消に取り組んでいる(情報元:株式会社タイミー)。水産業の担い手不足は長年の構造的な課題であり、繁忙期だけの短期雇用をスポットワークで補う動きは、今後ほかの地域の漁協にも広がる可能性がある。
水産加工・流通:廃棄漁網のリサイクルとMSC「海のエコラベル」認知度調査
ニチモウ株式会社は10月14日、廃棄漁網を再生した「R&B(Recycle&Black)再生ポリエチレン網」を、大洋エーアンドエフ株式会社が運航する海外まき網漁船「第三ふじ丸」へ国内で初めて納入したと発表した。回収した漁網を分別・洗浄したうえでペレット化し、紡糸・原糸製造の工程を経て約10%の再生ポリエチレンを使用する仕組みで、製造時の石油使用量削減や廃棄コストの軽減、違法投棄の防止につなげる狙いがある(情報元:ニチモウ株式会社)。
水産物の持続可能性に対する消費者意識の実態も明らかになった。MSC(海洋管理協議会)が2026年2月2日〜3月21日に世界23カ国・約3万1000人(日本は1178人)を対象に実施した調査によると、日本では「世界の海の現状に懸念がある」と答えた人が94%(2024年調査では89%)に達した一方、「持続可能な水産物を食べるべき」と考える割合は54%にとどまり、世界平均の73%を大きく下回った。MSC「海のエコラベル」の全体認知度は21%だが、Z世代では35%、ミレニアル世代でも25%と、若年層での認知度の高さが目立つという(情報元:MSCジャパン)。水産養殖の認証制度についてはASC認証とは?MSC認証との違いと日本の養殖水産物の広がりで詳しく解説している。
行政・法改正:福島県漁連、原発事故に伴う操業自粛海域を縮小へ
福島県漁連は、福島第一原発の事故に伴って続けてきた操業自粛海域を、現在の半径10キロ圏内から7キロ圏内へ縮小する方向で調整していることが分かった。海洋生物への放射性物質の影響がごく小さい水準に落ち着いていることなどを踏まえた判断とみられ、正式な決定は10月29日の組合長会議で行われる見通しだ。当初は8キロ圏内への縮小が検討されていたが、浪江町請戸地区を管轄する相馬双葉漁協が漁場拡大を求めて7キロへの再調整を要請した経緯がある。縮小が実現すれば2027年1月から新たな海域での操業が可能になる一方、東日本大震災のがれきが残る2カ所は引き続き禁漁区に指定される(情報元:福島民友新聞、TUFテレビユー福島)。
市場・価格動向:漁獲量は10年で100万トン減、佐渡の寒ブリも記録的不漁
全国の海面漁業漁獲量は現在約270万トンで、10年前の約371万トンから100万トン近く減少したと報じられた。サケ・マス類は記録的な不漁に見舞われており、サンマも1990年代〜2000年代には年間20万〜30万トンの水揚げがあったのが、直近は6万5000トンにまで落ち込んでいるという(情報元:@DIME)。サンマの不漁の背景はさんまが不漁な理由を徹底解説——漁獲量激減の原因・現状・今後の見通しで詳しく解説している。
新潟・佐渡でも冬の味覚である寒ブリの不漁が続いている。2025年の漁獲量は過去最低の36トンにとどまり、510トンを記録した2019年から大きく落ち込んだ。海水温の低下が鈍いことや海が荒れる日が少ないことが要因とみられる中、2026年の漁期入りに向けて大型定置網「大謀網」の設置作業が進められた(情報元:Infoseek)。寒ブリの産地や選び方はブリの旬はいつ?寒ブリの産地・栄養・選び方を水産のプロが解説で詳しく解説している。
今週の主要ニュース一覧
| 日付 | カテゴリ | トピック | 注目度 |
|---|---|---|---|
| 10/13 | 水産加工・流通 | MSC「海のエコラベル」23カ国調査、日本の認知度21% | 中 |
| 10/14 | 水産加工・流通 | ニチモウ、国内初のリサイクル漁網を海外まき網船へ納入 | 中 |
| 10/14 | 行政・法改正 | 福島県漁連、操業自粛海域を7キロ圏内に縮小へ | 高 |
| 10/14 | 市場・価格動向 | 不漁続く佐渡の寒ブリ、大謀網の設置進む | 中 |
| 10/16 | 漁業・養殖 | タイミー、岡山県漁業協同組合連合会と業務提携 | 中 |
| 10/17 | 市場・価格動向 | 日本の漁獲量、10年で100万トン近く減少 | 高 |
今週のまとめと来週の注目点
今週は、水産業の担い手不足にスポットワークという新しい働き方で対応する動きと、漁獲量の構造的な減少という根深い課題が同時に報じられた一週間だった。サケ・マス・サンマ・寒ブリと魚種を問わず不漁が続く状況は、気候変動や海洋環境の変化が業界全体に及んでいることを改めて示している。一方で、リサイクル漁網やMSC海のエコラベルといった持続可能性に向けた取り組みも進み、業界の構造転換への模索が続いている。
来週の注目点は次の通りだ。
- 福島県漁連の操業自粛海域縮小が10月29日の組合長会議で正式決定されるか
- タイミーと漁協の業務提携が他地域にも広がるか
- 寒ブリ・サケなど冬の魚種の漁が本格化する中での水揚げ・価格の動向
資源減少という長期課題と、人手不足・流通効率化という当面の課題にどう向き合うか、業界の動きを引き続き追っていく。
参考記事
- タイミー、岡山県漁業協同組合連合会と業務提携契約を締結|ニュース – 株式会社タイミー
- 国内初 「海外まき網船」へポリエチレン製リサイクル漁網を納入しました – PR TIMES
- 世界23カ国の消費者調査から見えた日本の消費者の意識 MSC「海のエコラベル」の認知はZ世代で高い結果に – PR TIMES
- 原発事故に伴う自粛海域縮小へ 福島県漁連、来年1月から第1原発7キロ圏(福島民友新聞) – Yahoo!ニュース
- 「気合入ってますよ」不漁続く佐渡の寒ブリ漁 定置網設置 新潟 – Infoseek
- サケが大ピンチ!100万トン近く減少している「日本の漁獲量」の現在地 – @DIME アットダイム


コメント