最終更新: 2026-10-18
ハタハタの旬は、産地によって大きく2つの時期に分かれます。秋田県では産卵のため沿岸に接岸する11〜12月が最盛期で、卵(ブリコ)を抱いた「子持ちハタハタ」が主役です。一方、鳥取県など山陰地方では、産卵前で脂がのった3〜5月の「シロハタ」が最もおいしいとされています。どちらも「ハタハタの旬」として紹介されますが、これは「卵を楽しむ旬」と「脂を楽しむ旬」という目的の違いによるもので、両方とも誤りではありません。
この記事では、秋田県・鳥取県それぞれの公式資料をもとに、旬の時期が分かれる理由、資源崩壊から全面禁漁を経た資源管理の歴史、現在も続く資源の危機、栄養成分まで確認して解説します。
ハタハタとは?基本データ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準和名 | ハタハタ(鰰) |
| 学名 | Arctoscopus japonicus |
| 分類 | スズキ目ハタハタ科 |
| 体長 | 成魚で20cm前後 |
| 生態 | 日本海・オホーツク海などに分布し、ふだんは砂泥底に潜って生活する |
| 主な産地 | 秋田県、鳥取県、島根県、新潟県、山形県、青森県など日本海側 |
ハタハタは秋田県の県魚で、2004年(平成16年)に指定されました。ふだんは水深100〜300m前後の砂泥底に潜って生活し、産卵期になると沿岸近くまで群れで接岸する習性を持ちます。この接岸のタイミングが、産地ごとの「旬」の時期を決める大きな要因です。
ハタハタの旬はいつ?秋田は11〜12月、鳥取は3〜5月

秋田県と鳥取県の旬・漁期の比較
| 項目 | 秋田県 | 鳥取県 |
|---|---|---|
| 漁期 | 10月〜翌6月 | 9月〜翌5月 |
| 旬(最盛期) | 10〜12月、特に11月下旬〜12月 | 3〜5月 |
| 旬の理由 | 産卵のため沿岸に接岸し、卵(ブリコ)を抱く個体が多くなる時期 | 産卵前で脂がのった個体が多くなる時期 |
| 呼び名 | 子持ちハタハタ | シロハタ |
| 主な漁法 | 定置網、底びき網、さし網 | 沖合底びき網 |
比較対象は、ハタハタの二大産地である秋田県(卵を目的とする最盛期)と鳥取県(脂を目的とする最盛期)の両県公式サイトの案内(2026年10月時点)です。
秋田県の公式サイトによると、ハタハタの漁期は10月から翌6月までで、なかでも11月下旬から12月にかけて産卵のため沿岸に大群で押し寄せる時期が旬とされています。この時期のメスは卵を抱えており、ホンダワラ類の海藻に産み付けられた卵は「ブリコ」と呼ばれ、秋田では正月料理などで親しまれています。
一方、鳥取県の公式サイトでは、ハタハタ(シロハタ)の漁期を9月から翌5月までとし、なかでも3〜5月ごろの産卵前で脂がのった個体が最もおいしいとしています。鳥取産のハタハタは山陰沖を回遊する個体を沖合底びき網で漁獲するため、卵を持つ前の、身の詰まった個体が中心になります。
このように「ハタハタの旬」は、産卵接岸時の卵を楽しむ秋田の旬(11〜12月)と、産卵前の脂を楽しむ山陰の旬(3〜5月)という、目的の異なる2つの最盛期が存在します。なお、北部日本海海域では新潟県や山形県、青森県でも漁獲されており、これらの産地も含めると漁期全体は秋から初夏まで続きます。「冬が旬」「春が旬」どちらの紹介を見ても、どの産地・どの目的(卵か脂か)を指しているかを確認すると理解しやすくなります。
ハタハタ漁の歴史:資源崩壊と3年間の全面禁漁

秋田県のハタハタ漁獲量は、1963年以降は毎年1万トンを超える水揚げが続いていましたが、1970年代後半から急激に減少し、1984年には74トンまで落ち込みました。県は1985年に全面禁漁を提案しましたが、漁業者の生活への影響が大きいとして合意には至りませんでした。その後も漁獲量は低迷を続け、1991年には過去最低の約70トンにまで落ち込みます。
秋田県のハタハタ漁獲量の推移
| 時期 | 漁獲量 | 状況 |
|---|---|---|
| 1960年代 | 年間1万トン超 | 最盛期 |
| 1984年 | 74トン | 急減 |
| 1991年 | 約70トン | 過去最低、禁漁の機運が高まる |
| 1992年9月〜1995年9月 | 0トン(禁漁) | 漁業者による自主的な3年間の全面禁漁 |
| 1995年(解禁直後) | 143トン | 禁漁明け |
| 2000年前後 | 1,000トン超 | 回復期 |
| 2008年 | 約2,900トン | 禁漁明け後のピーク |
| 2025年9月〜2026年6月 | 5.6トン | 記録的不漁、過去最低 |
危機感の高まりを受けて、秋田県の漁業者は1992年(平成4年)9月から3年間、自主的に全面禁漁を実施し、1995年(平成7年)9月に解禁しました。解禁後は資源が回復し、2008年(平成20年)には約2,900トンまで漁獲量が戻っています。
解禁後の資源管理:体長制限・卵の採捕禁止・広域協定

秋田県漁業調整規則では、全長6センチメートル以下のハタハタの採捕を禁止しています。また同規則第37条では、海藻などに放産されたハタハタの卵(ブリコ)の採捕そのものを禁止し、違反すると6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科される規定になっています。これは食用のブリコ(市場に出回るものは卵を持った親魚から得られる)とは別に、いったん産み付けられた卵を資源保護のために守るための規定です。
広域的な取り組みとしては、1999年(平成11年)に青森県・秋田県・山形県・新潟県の関係漁協が「北部日本海海域ハタハタ資源管理協定」を締結し、漁獲してよいサイズの統一など資源管理のルール化が図られました。笹川平和財団 海洋政策研究所の分析によると、2009年(平成21年)ごろからは、その年の資源量に応じて漁獲量の上限を設定する自主的な管理も行われるようになっています。
2026年、記録的不漁が示す新たな危機

2010年ごろから、秋田県のハタハタ漁獲量は再び減少傾向に転じています。2025年9月〜2026年6月の漁期では、漁獲量がわずか5.6トンと過去最低を記録しました。秋田県水産振興センターは、日本海の水温上昇などの海洋環境の変化によって資源の再生産が妨げられている可能性を指摘しており、乱獲とは異なる要因が主因とみられています。あわせて、ハタハタの資源には20〜30年周期で大きく増減する傾向があることも指摘されています。
この記録的不漁を受けて、秋田県の資源対策協議会では1992〜94年以来となる全面禁漁を求める意見が相次いで出されています。一方で、底びき網漁業者からは、ズワイガニなど他の魚種の漁獲機会を失うことへの懸念も示されており、2026年10月時点では禁漁の実施についてまだ結論が出ていません。水産資源をめぐる状況は水産業界データまとめページでも継続的に取り上げています。
ハタハタの漁法:秋田は定置網・底びき網、鳥取は沖合底びき網
秋田県では、ハタハタ漁に定置網、底びき網、さし網という3つの漁法が使われています。産卵のため沿岸に接岸する時期には、定置網漁が回遊してきた群れを待ち受ける形で漁獲する一方、沖合では底びき網漁も行われています。
鳥取県では、山陰沖を回遊するハタハタを沖合底びき網(沖底)で漁獲するのが主な漁法です。鳥取県水産試験場の調査でも、水深200m前後の沖合で底びき網によりハタハタが漁獲されていることが確認されています。
ハタハタの栄養:ビタミンB12とビタミンDが豊富
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の食品成分データベースによると、はたはた(生)の可食部100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです。
ハタハタの栄養成分(可食部100gあたり・生)
| 栄養素 | 含有量 |
|---|---|
| エネルギー | 101kcal |
| 水分 | 78.8g |
| タンパク質 | 14.1g |
| 脂質 | 5.7g |
| 炭水化物 | Tr(微量) |
| カルシウム | 60mg |
| 鉄 | 0.5mg |
| 亜鉛 | 0.6mg |
| ビタミンB12 | 1.7μg |
| ビタミンD | 2.0μg |
| コレステロール | 100mg |
| 食塩相当量 | 0.5g |
ハタハタは100gあたり101kcalと魚類のなかでは中程度のエネルギー量で、タンパク質とビタミンB12、ビタミンDをまとまった量含むのが特徴です。なお、この成分値は秋田・鳥取どちらの産地かを区別せず「はたはた(生)」として掲載されている値のため、産地や漁獲時期(卵の有無など)による個体差までは反映されていません。
ハタハタの食べ方:しょっつる鍋から塩焼きまで
秋田県の郷土料理として知られる「しょっつる鍋」は、ハタハタを塩漬けにして1年以上発酵させてつくる魚醤「しょっつる」で味付けした鍋料理です。しょっつるそのものの作り方や熟成期間については、自家製魚醤の作り方を解説した記事でハタハタを使った場合の熟成期間(2〜3年)や仕上がりの違いを確認できます。
そのほかの食べ方としては、卵を抱いたメスを卵ごと焼く塩焼きや、塩で短時間漬けて干す一夜干し、骨まで食べられるよう低めの温度でじっくり揚げる唐揚げなどが紹介されています。産卵前で脂がのった鳥取・山陰のシロハタは、刺身や唐揚げなど脂の風味を楽しむ食べ方に向いているとされています。
ハタハタに関するよくある質問
Q1. ハタハタの旬は結局いつですか?
産地と目的によって異なります。秋田県では産卵のため沿岸に接岸する11〜12月が「卵を楽しむ旬」、鳥取県など山陰地方では産卵前で脂がのった3〜5月が「脂を楽しむ旬」です。どちらも誤りではなく、どの産地・どちらの目的を指しているかで変わります。
Q2. 秋田県で8年間禁漁していたというのは本当ですか?
正確には8年間ではなく、1992年(平成4年)9月から1995年(平成7年)9月までの3年間、秋田県の漁業者が自主的に全面禁漁を行いました。その前段として1984年の74トンや1991年の約70トンという長期的な不漁期間があったため、禁漁そのものの長さと誤解されることがあります。
Q3. ブリコとは何ですか?
ハタハタのメスが産卵期にホンダワラ類の海藻などに産み付ける卵のことです。秋田では正月料理などに使われる食材として親しまれていますが、いったん放産された卵の採捕は秋田県漁業調整規則で禁止されています。
Q4. 2026年のハタハタは不漁と聞きましたが、どんな状況ですか?
2025年9月〜2026年6月の秋田県の漁期は漁獲量5.6トンと過去最低を記録しました。秋田県水産振興センターは日本海の水温上昇など海洋環境の変化を要因の一つとして挙げており、資源対策協議会では再度の全面禁漁を求める声も出ていますが、2026年10月時点では結論は出ていません。
まとめ:ハタハタの旬は地域と目的で見方が変わる
ハタハタについてまとめると以下の通りです。
- 旬は産地と目的で2つに分かれる。秋田は卵を楽しむ11〜12月、鳥取など山陰は脂を楽しむ3〜5月
- 秋田県では1991年に約70トンまで資源が崩壊し、1992〜1995年の3年間、自主的な全面禁漁を実施した(8年間ではない)
- 解禁後は体長制限・卵の採捕禁止・広域の資源管理協定により資源が回復し、2008年には約2,900トンまで戻った
- 2025〜26年の漁期は漁獲量5.6トンと再び過去最低を記録し、資源管理のあり方が議論されている
- 栄養は100gあたり101kcal・タンパク質14.1g・ビタミンB12 1.7μg・ビタミンD2.0μgで、ビタミン類がまとまって含まれている
月別の旬の魚全体を確認したい方は旬の魚カレンダーの記事も参考にしてください。ハタハタを使った加工品に興味がある方は、自家製魚醤(しょっつる)の作り方もあわせてご覧ください。
参考情報
- ハタハタ(秋田県公式サイト) — 旬(10〜12月)、漁期(10月〜翌6月)、産卵期(11月下旬〜12月)、漁法(定置網・底びき網・さし網)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- ハタハタ(シロハタ)(鳥取県公式サイト) — 鳥取県の漁期(9月〜翌5月)、旬(3〜5月)、シロハタの呼称、脂のった特徴の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 令和6年度 沖底漁期前調査結果(鳥取県水産試験場) — 鳥取県沖合での底びき網によるハタハタ漁獲(水深約207m)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 令和6年漁期の秋田県ハタハタ漁獲状況について(秋田県水産振興センター) — 近年の漁獲量データの確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 漁業者の合意と努力、結実 全面禁漁による資源回復(秋田魁新報電子版) — 1992〜95年の禁漁期間、資源崩壊までの経緯(1963年以降1万トン超、1984年74トン、1991年70トン)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 記録的不漁のハタハタ、資源対策待ったなし「禁漁」に不安の声も(秋田魁新報電子版) — 2025〜26年漁期の漁獲量(5.6トン)、再禁漁を求める議論の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 「秋田のハタハタ」空前の不漁 名物復活へ、禁漁求める声も(時事ドットコム) — 不漁の要因(日本海の水温上昇、20〜30年周期説)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 秋田県ハタハタ漁獲量は、なぜ回復したか(笹川平和財団 海洋政策研究所) — 体長制限、1999年の北部日本海海域ハタハタ資源管理協定、2009年以降の資源量に応じた漁獲管理の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- はたはた卵の採捕等の禁止について(秋田県公式サイト) — 漁業調整規則第37条・第38条の卵の採捕禁止規定、罰則の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 文部科学省 食品成分データベース はたはた/生 — はたはた(生)100gあたりの栄養成分値の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- ハタハタ(新潟大学 佐渡自然共生科学センター) — 学名(Arctoscopus japonicus)、分類(スズキ目ハタハタ科)、体長(約20cm)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- しょっつる鍋(農林水産省 うちの郷土料理) — しょっつる鍋がハタハタと魚醤「しょっつる」を使う秋田の郷土料理であることの確認に使用(確認日: 2026-10-18)
この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。
詳しくは編集部についてをご覧ください。


コメント