大船渡のアワビ陸上養殖、山林火災からの復活と仕組み

大船渡のアワビ陸上養殖、山林火災からの復活と仕組み 養殖

最終更新: 2026-11-02

岩手県大船渡市三陸町綾里でアワビの陸上養殖を手がける水産会社が、2025年2月の大規模な山林火災で養殖中のアワビの大半を失いながらも、2026年10月末に一般消費者向けの出荷を再開した。被災から1年8カ月、生き残った稚貝を育て上げての再始動だ。この記事では、アワビの陸上養殖という仕組み自体の解説と、火災からの復活までの経緯を整理する。

アワビの陸上養殖とは?仕組みと大船渡市での取り組み概要

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アワビは天然では海岸の岩場に生息する貝で、国内流通の多くは漁師による採取(漁獲)に依存している。これに対し「陸上養殖」は、海から取水した海水を陸上の水槽に送り、人の管理下で育てる方式だ。海の環境変化や災害の影響を受けにくくできる一方、取水施設や水槽の維持にコストがかかる。

大船渡市三陸町綾里の水産会社(1982年創業、1986年設立)は、海底の地下数メートルから汲み上げた海水を、直径30〜50センチの塩化ビニール製送水管で引き込み、約250基の水槽でアワビを育てる完全陸上養殖を行ってきた。2020年には自社ECサイト開設にあわせて「三陸翡翠(ひすい)あわび」としてブランド化し、肉厚で軟らかい身質を売りにしてきた。火災前の年間生産量は、食用向けが約40万個、放流用の種苗が約200万個にのぼっていた(ASCII STARTUP、確認日2026年11月2日)。

項目 内容
事業者 岩手県大船渡市三陸町綾里の水産会社(1982年創業)
ブランド名 三陸翡翠あわび
養殖方式 完全陸上養殖(地下海水をポンプで汲み上げ、送水管で水槽へ)
水槽数 約250基
火災前の年間生産量 食用約40万個、放流用種苗約200万個

2025年2月の山林火災被害:送水管焼損でアワビほぼ全滅

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2025年2月26日、岩手県大船渡市で林野火災が発生した。消防庁・気象庁の発表によると、鎮圧宣言までに11日間を要し、最終的な焼失面積は約3,370ヘクタール、建物被害は222棟に達した。平成以降、国内で最大規模の林野火災とされ、最大で約4,600人に避難指示が出された(気象庁・消防庁、確認日2026年11月2日)。

この火災で、水産会社の養殖施設も送水管が焼損する被害を受けた。海水の送水が10日以上止まったことで、育成中のアワビ約250万個のほとんどが死滅し、被害総額は約5億円に上ったと報じられている(IBC岩手放送、ASCII STARTUP、確認日2026年11月2日)。同社は2011年の東日本大震災でも養殖施設が全壊し、その後復興を果たした経緯があり、今回は約14年を経て二度目の大きな被災となった(ASCII STARTUP、確認日2026年11月2日)。

奇跡の生存から出荷再開まで:1年8カ月の軌跡

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火災当時、生後数か月だった稚貝の一部が奇跡的に生き残った。報道によれば生存数はおよそ30万個とされ、クラウドファンディングや補助金を活用して送水施設を復旧させながら、この稚貝を育て続けてきた(岩手めんこいテレビ、確認日2026年11月2日)。

生き残った稚貝が6.5センチほどの出荷サイズまで成長したことを受け、同社は2026年10月30日、被災後初めてとなる一般消費者向けのアワビ出荷を行った。火災発生からは1年8カ月が経っていた。スチーム冷凍加工した商品約100セットあまりを手作業で用意したという(テレビ岩手、岩手めんこいテレビ、確認日2026年11月2日)。

時期 出来事
2011年3月 東日本大震災で養殖施設が全壊(1度目の被災)
2020年 自社ECサイト開設、「三陸翡翠あわび」ブランド化
2025年2月26日 大船渡市山林火災発生、送水管焼損でアワビ約250万個が死滅
2025年2月(火災当時) 生後数か月の稚貝約30万個が生存
2026年10月30日 被災後初の一般消費者向け出荷再開(約1年8カ月後)
2026年5月〜 稚貝出荷も再開、火災前水準への回復を目指す

なお、稚貝の出荷は2026年5月から別途再開しており、同社は2027年12月までに火災前の出荷体制への復帰を目指しているという(岩手めんこいテレビ、確認日2026年11月2日)。

ふるさと納税返礼品「三陸翡翠あわび」の入手方法

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出荷再開にあわせ、岩手県大船渡市のふるさと納税返礼品としてアワビが提供されている。6.5センチ程度に育ったアワビをスチーム冷凍加工した、30グラム×6個入りのセットで、楽天ふるさと納税などのポータルサイトから申し込める。2026年11月30日・12月25日発送分を受け付け中で、12月までの寄付分に対して合計3,000個(6個入り×500セット)が用意されている(ASCII STARTUP、岩手めんこいテレビ、確認日2026年11月2日)。出荷数量が限られているため、確実に入手したい場合は早めの申し込みがすすめられる。

なぜ陸上養殖なのか?海面養殖・天然採取との違い

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アワビの国内流通は、漁師が海に潜って採る天然採取が中心で、養殖も行われているものの、サーモンやブリのように海上のいけすで育てる「海面養殖」は一般的ではない。これは、アワビが岩場に付着して海藻を食べる習性を持ち、いけす内での管理に向かないためだ。陸上の水槽であれば水温・水質・餌の量を人の手で細かく調整できるため、アワビの陸上養殖は国内各地で取り組まれている。

一方で今回の事例が示すように、陸上養殖は海からの取水設備に依存するため、災害で取水施設そのものが損傷すると、海上のいけすよりもむしろ復旧に時間がかかる場合がある。サバやクルマエビなど他の魚種でも陸上養殖の取り組みが広がっているが、水の確保という基本インフラの弱さは共通の課題だ。クルマエビの陸上養殖に挑む秋田県男鹿市の事例は「クルマエビ陸上養殖、秋田・男鹿市の挑戦」で紹介している。

よくある質問

Q1: アワビの陸上養殖と天然のアワビは味が違うのか

今回の記事で参照した報道の範囲では、品質面の違いについての検証データは確認できなかった。生産者側は「肉厚で軟らかい」とブランドの特徴を説明している(ASCII STARTUP、確認日2026年11月2日)が、客観的な比較調査ではないため、購入時の参考情報として捉えてほしい。

Q2: 被災前の生産量にはいつ戻る見込みか

報道によれば、稚貝の出荷は2026年5月から再開しており、2027年12月までに火災前の出荷体制への復帰を目指しているという(岩手めんこいテレビ、確認日2026年11月2日)。食用アワビの出荷量が火災前の水準(年間約40万個)に戻るかどうかは、今後の報道を確認したい。

Q3: なぜ陸上養殖のアワビが火災の被害を受けたのか

アワビそのものは燃えなくても、陸上養殖は海水を汲み上げて水槽へ送る送水管や取水施設に依存している。今回は送水管が焼損して海水の供給が10日以上止まり、水槽内のアワビが死滅した。海の中で育てる養殖とは異なり、陸上の設備が被災すると生育環境そのものが維持できなくなる点が陸上養殖特有のリスクといえる。

まとめ:大船渡のアワビ陸上養殖のポイント

  • 大船渡市三陸町綾里の水産会社が、海底から汲み上げた海水で育てる完全陸上養殖で「三陸翡翠あわび」を生産
  • 2025年2月26日の大船渡市山林火災(平成以降国内最大規模、焼失面積約3,370ha)で送水管が焼損し、アワビ約250万個が死滅、被害額は約5億円
  • 生後数か月だった稚貝約30万個が生存し、育成を継続
  • 2026年10月30日、被災後初の一般消費者向け出荷を再開(火災から1年8カ月)
  • ふるさと納税返礼品(30g×6個セット)として岩手県大船渡市から提供中
  • 稚貝出荷は2026年5月に再開済み、2027年12月までに火災前水準への復帰を目指す

陸上養殖は災害リスクを分散できる面もあるが、取水施設という共通インフラが被災すれば一気に生育環境を失うという弱点も今回の事例で浮き彩になった。復興を支えるには、ふるさと納税のような消費者側からの継続的な応援も力になる。アワビの基本的な旬や産地については「アワビの旬はいつ?種類別・産地別の旬カレンダーと栄養・選び方完全ガイド」もあわせて参考にしてほしい。

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産業界に特化した専門メディアです。

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