最終更新: 2026-09-07
アワビは種類によって旬の時期が大きく異なる高級食材だ。北海道・東北で獲れるエゾアワビは晩秋から冬(11月〜翌1月頃)、千葉・三重など本州以南で獲れるクロアワビやメガイアワビは初夏から夏(5〜9月頃)に、それぞれ最も味がのるとされる。農林水産省の漁業産出額統計(令和5年)によると、国内の漁業産出額は全国計で約1兆6,578億円に上り、貝類もその一角を占める。一方で天然アワビは資源量の減少が著しく、農林水産省のデータでは国内の天然アワビ漁獲量は1970年のピーク時(約6,466トン)から2019年には829トンまで減少しており、最盛期の1割強にとどまる。種類・産地・季節によって旬の時期は大きく異なるため、正しい知識を持って本当に美味しい時期のアワビを選びたい。
アワビの旬はいつ?種類別に徹底解説
アワビと一口に言っても、日本近海には複数の種類が生息しており、それぞれ旬の時期が異なる。大きく分けると「エゾアワビ」「クロアワビ」「メガイアワビ」「マダカアワビ」の4種が代表的だ。
エゾアワビ(蝦夷鮑)の旬:11月〜翌1月頃(晩秋〜冬)
エゾアワビ(学名: *Haliotis discus hannai*)は、北海道・青森・岩手・宮城などの三陸沿岸を中心に漁獲される日本最大の流通量を誇るアワビだ。体長は最大で20〜25cm程度に達し、肉厚でコリコリとした食感が特徴。
北海道水産林務部の資料によると、エゾアワビの産卵期は8〜10月で、産卵前後にあたる夏(7〜9月)は資源保護のため天然アワビの禁漁期間とする地域が多い(渡島地方など)。産卵を終えて身が再び肥え太る晩秋から冬(11月〜翌1月頃)にかけてが市場での最盛期とされ、この時期のエゾアワビは肉厚で甘みが強い。
なお漁期・禁漁期の設定は地域や漁協によって細かく異なるため、購入時期の目安として捉えたうえで、産地の最新情報も確認したい。
クロアワビ(黒鮑)の旬:5〜9月頃(初夏〜夏)
クロアワビ(学名: *Haliotis discus*)は、本州から九州・朝鮮半島にかけて分布する種で、千葉県外房・三重県志摩・長崎県などで漁獲される。エゾアワビよりやや小ぶりだが、殻の色が濃い黒褐色で「和食の高級食材」として料理人に高く評価される種だ。
旬は初夏から夏(5〜9月、特に6〜8月頃)とされる。千葉県では漁業調整規則によりアワビ漁の漁期が4月1日〜9月15日と定められており、夏の終わりまでが漁のピークにあたる。産卵期を控えた夏場に身が充実し、刺身にすると磯の香りが際立つ。酒蒸しにすると柔らかく仕上がる。
メガイアワビ(女貝鮑)の旬:5〜8月頃(初夏〜夏)
メガイアワビ(学名: *Haliotis gigantea*)は名前の通り最大サイズに達する種で、静岡県・三重県・長崎県・千葉県などの太平洋岸に多く生息する。殻長は最大30cm以上に達することもある。
旬は初夏から夏(5〜8月頃)とされ、産卵期を控えた時期に身が太って柔らかくなる。柔らかい身質で、煮アワビや肝(内臓)を使った料理との相性が良い。肝は独特の苦みと旨みがあり珍味として珍重される。
マダカアワビ(間珠鮑)の旬:情報が限られる希少種
マダカアワビ(学名: *Haliotis madaka*)は4種の中では最もまれな種で、千葉県・徳島県などでわずかに漁獲される。身が厚く、高級料亭で使われることが多い。
漁獲量が少なく流通も限定的なため、他の3種に比べて旬の時期に関する情報自体が少ない。夏(梅雨時)を旬とする情報がある一方、通年を通じて入手が難しい希少種であるため、購入できる機会があれば貴重な時期と捉えたい。
| アワビの種類 | 主な産地 | 旬の時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| エゾアワビ | 北海道・岩手・宮城・青森 | 11〜翌1月頃(晩秋〜冬) | 流通量最多・肉厚でコリコリ |
| クロアワビ | 千葉・三重・長崎・高知 | 5〜9月頃(初夏〜夏、特に6〜8月) | 磯の香り強い・料理人に人気 |
| メガイアワビ | 静岡・三重・長崎・千葉 | 5〜8月頃(初夏〜夏) | 最大サイズ・肝が珍味 |
| マダカアワビ | 千葉・徳島など | 情報限定的(夏という情報あり) | 希少種・高級料亭向け |
アワビの主な産地と漁獲量(農水省データ引用)
農林水産省の漁業産出額統計によると、海面漁業全体の産出額は年々変動しているが、アワビ類は貝類の中でも高単価な品目の一つだ。天然アワビの主な産地と特徴を以下にまとめる。
北海道(エゾアワビの主産地)
北海道は日本最大のエゾアワビ産地で、オホーツク海沿岸・根室・知床・日高・函館方面などで漁獲される。礼文島・利尻島産のアワビは昆布を豊富に食べた極上品として知られ、漁業者が素潜りで採取する伝統的な磯漁が今も続く。
2000年代以降、密漁の被害や海水温上昇による昆布(餌)の減少が重なり、漁獲量は大幅に減少している。近年は養殖事業への転換も進んでいる。
岩手県(三陸エゾアワビ)
岩手県は三陸リアス海岸の豊かな海域を誇り、山田町・大槌町・釜石市・大船渡市などがアワビ漁の主要産地だ。2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けたが、漁業者と漁協が一丸となって復興を遂げ、現在も三陸産ブランドとして全国に出荷されている。
三陸のアワビは昆布やわかめを主食にした「磯根資源」として管理されており、素潜り漁の他に蓄養(漁獲後の一時飼育)も行われる。
千葉県(クロアワビ・エゾアワビ混在)
千葉県外房(鴨川・白浜・千倉)は、クロアワビとエゾアワビの両方が水揚げされる数少ない産地だ。黒潮の影響を受けた温暖な海域で、磯根漁師(海女・海士)が伝統的な素潜りで採取する。千葉県ではアワビ漁の漁期が漁業調整規則で4月1日〜9月15日と定められている。
千葉産のクロアワビは「外房アワビ」としてブランド化が進んでおり、高級寿司店や料亭への直接流通が多い。
三重県(志摩・英虞湾)
三重県志摩市・鳥羽市は、日本最多の女性海女が活躍する産地で、伊勢海老と並んでアワビが地域を代表する高級水産物だ。三重県のプライドフィッシュ公式資料によると、平成23年(2011年)時点で三重県の伊勢海老漁獲量は213トン・全国シェア19.0%で全国1位となっている(漁獲量の全国順位は年によって変動する)。
海女によって採取されたアワビは「志摩のアワビ」として伊勢神宮への奉納品(のしアワビ)としても知られ、古くからの伝統的な食文化を持つ。農林水産省「うちの郷土料理」にも三重県の食文化として記録されている。
| 産地 | 主な種類 | 漁法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | エゾアワビ | 素潜り・籠漁 | 国内最大産地・昆布食いの極上品 |
| 岩手県 | エゾアワビ | 素潜り | 三陸リアス海岸・震災復興ブランド |
| 千葉県外房 | クロアワビ・エゾアワビ | 素潜り(海女・海士) | 外房ブランド・高級寿司店直送 |
| 三重県 | クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビ | 素潜り(海女) | 伊勢神宮奉納の歴史・海女数全国一 |
| 長崎県 | クロアワビ・マダカアワビ | 素潜り | 離島産・対馬・五島列島 |
| 静岡県西伊豆 | メガイアワビ | 素潜り・磯根 | 太平洋黒潮の恵み |
アワビの栄養成分と健康効果(文科省データに基づく)
アワビは古来から「精力のつく食材」「長寿の食材」として珍重されてきたが、現代の食品科学でも優れた栄養プロファイルが確認されている。文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」には、くろあわび・まだかあわび・めがいあわびがそれぞれ別項目として収載されている。ここでは代表としてくろあわび(生)の数値を紹介する。
くろあわび(生・可食部100g当たり)の主な栄養成分
| 栄養素 | 値 | 主な健康効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 76 kcal | 低カロリー高タンパク食材 |
| たんぱく質 | 14.3 g | 筋肉・臓器の構成材料 |
| 脂質 | 0.8 g | 低脂質で消化負担が軽い |
| 鉄 | 2.2 mg | 赤血球生成に関与 |
| ビタミンB1 | 0.15 mg | 糖質代謝・神経機能 |
| ビタミンB12 | 0.4 μg | 赤血球生成・神経機能維持 |
| ナイアシン当量 | 2.6 mg | エネルギー代謝・皮膚健康 |
種類(くろあわび/まだかあわび/めがいあわび)によって数値はやや異なる。なお同成分表にはアワビの亜鉛・タウリンの数値は収載されていないが、貝類全般はミネラル分やタウリンを含む食材として知られる。
アワビとタウリン、肝機能
貝類には一般にタウリンが多く含まれることが知られており、アワビもタコやサザエなどと同様にタウリンを含む食材の一つとされる。タウリンは肝細胞の保護作用や胆汁酸の抱合(コレステロールを排出する)に関与することが研究で示されている。ただし文科省の成分表にアワビのタウリン含有量そのものの数値は収載されていないため、具体的な含有量を断定した表記は避けたい。
アワビの肝(内臓)の栄養
アワビの「肝」と呼ばれる中腸腺(緑色の部分)は栄養価の高い部位だ。ビタミンA(β-カロテン由来)やビタミンB群が豊富とされ、刺身の付け合わせとして、あるいは肝和えとして食べられる。ただし過剰摂取は光線過敏症(光過敏症)を引き起こすことがあるため、大量摂取は避けるべきだ(海藻由来のクロロフィルの代謝産物であるフェオフォルバイドが関与するとされる)。
低カロリー高タンパクで優れた食材
アワビはたんぱく質が100gあたり14g前後、脂質は1g未満という低脂質食材であり、ダイエット中でも食べやすい魚介類だ。高級食材のイメージが強いが、栄養バランスの面では優秀な食品といえる。
旬のアワビを選ぶコツと保存・食べ方
旬の時期に美味しいアワビを選ぶためには、いくつかの重要なポイントがある。
鮮度の見分け方
生きたアワビ(活アワビ)を選ぶ際は、次のポイントを確認したい。
- 殻にしっかり張りついて動いているもの(元気があるもの)
- 殻の表面に汚れやフジツボの付着がある程度のもの(天然物の証拠)
- 触れると素早く縮むもの(反応の速さが鮮度の目安)
- 身が殻からはみ出してプリッとしているもの
一方、身が殻から離れてブヨブヨしているものは避けたい。臭いが強すぎるものや、アンモニア臭がするものも鮮度が落ちているサインだ。
保存方法
活アワビは「生かしたまま」保存するのが基本だ。新聞紙や濡れたタオルで包み、冷蔵庫の野菜室(5〜8℃)に入れれば2〜3日は保存できる。海水を入れた容器に入れるとさらに長持ちするが、真水は絶対に避ける(浸透圧の差でアワビが弱る)。
蒸しアワビや煮アワビ、冷凍アワビといった加工品は購入時の状態で保存し、解凍は冷蔵庫でゆっくり行う。一度解凍したものは再凍結を避ける。
旬のアワビの食べ方
刺身は、晩秋〜冬のエゾアワビ、初夏〜夏のクロアワビ・メガイアワビなど、それぞれの旬の時期に薄切りにするのが最高だ。肝醤油(内臓を溶いた醤油)につけて食べる食べ方は、磯の風味が一体となる絶品の組み合わせ。
アワビのコリコリ食感を活かした厚切りステーキは、バター醤油やにんにく醤油との相性が抜群。加熱しすぎると固くなるので、短時間の加熱が鉄則だ。
酒蒸しは、初夏〜夏が旬のクロアワビ・メガイアワビにおすすめの調理法だ。日本酒と昆布出汁でじっくり蒸すと、身が柔らかくなり旨みが凝縮される。蒸し汁も絶品のソースになる。
蒸したアワビを薄切りにして炊き込みご飯に使うと、磯の香りが全体に広がる。旬の時期に合わせて仕入れたアワビを使えば、季節感のある一品になる。
産地直送・通販での入手方法
アワビは鮮度が命のため、産地直送の活アワビを購入するのがベストだ。岩手県・北海道・千葉県外房などの漁協や加工業者が直販サイトを運営していることが多い。購入の際は「漁獲日」「種類(エゾ/クロ)」「サイズ」を確認し、クール宅急便での配送を選択する。
アワビの旬に関するよくある質問(FAQ)
#### Q1: スーパーで売っているアワビは旬のものですか?
A: スーパーで流通するアワビの多くは、中国・韓国・南アフリカ産の養殖アワビや冷凍品です。国産天然アワビはほぼ鮮魚売り場では見かけず、産地市場や百貨店の鮮魚売り場、産地直送通販を利用するのが現実的な入手方法です。種類によって旬の時期が異なるため、購入時は「産地」「種類」「漁獲時期」を確認するのがおすすめです。
#### Q2: アワビの肝(内臓)は食べても大丈夫ですか?
A: 適量であれば問題ありませんが、アワビが食べた海藻(ホンダワラなど)に含まれるクロロフィルの代謝産物・フェオフォルバイドが中腸腺に蓄積することがあります。大量に食べると光線過敏症(顔や手の露出部に炎症・かゆみ)を引き起こすことがあるとされ、特に生肝は食べ過ぎに注意したい。気になる場合は加熱調理(肝和え・バターソテーなど)にすると安心感が増す。
#### Q3: アワビとサザエは旬が似ていますか?
A: サザエは年中流通しますが、旬は春〜夏(3〜8月)とされます。アワビと同じ磯根貝類ですが、種類によって旬の時期や産地が異なります。アワビのほうがはるかに高価で漁獲量も少ない高級食材です。両者ともに昆布やわかめを主食にするため、昆布の豊富な三陸・北海道産が特に評価されます。
#### Q4: 天然アワビと養殖アワビの味の違いは?
A: 天然アワビは磯の岩礁に付着した天然の海藻(昆布・ワカメ・天草など)を食べて育つため、磯の香りが強く旨みが凝縮されています。養殖アワビは配合飼料や乾燥昆布を使って育てられることが多く、天然に比べると磯の風味がやや劣りますが、安定した品質と年間を通じた供給が可能です。価格は天然が養殖より高くなることが多いです。
#### Q5: アワビの漁獲量はなぜ減っているのですか?
A: 主な原因は複合的で、(1)密漁(令和6年の全国摘発件数は1,661件、水産庁調べ)、(2)海水温上昇による餌(昆布・ワカメ)の減少、(3)磯焼け(海藻が消失する現象)の広がり、(4)イシダイ・ウニなどの天敵増加、が挙げられます。農林水産省と各都道府県は種苗放流による資源回復事業を継続していますが、農林水産省のデータでは国内の天然アワビ漁獲量は1970年のピーク時(約6,466トン)から2019年には829トンまで減少しており、最盛期の1割強にとどまっています。
#### Q6: アワビはどんな料理に使うのがおすすめですか?
A: 種類ごとの旬(エゾアワビなら晩秋〜冬、クロアワビ・メガイアワビなら初夏〜夏)に合わせて選ぶと、刺身が特に美味しい調理法です。それ以外では酒蒸し、バター醤油ステーキ、アワビご飯、煮アワビ(甘辛醤油煮)が代表的な調理法です。茶碗蒸しの具材やリゾットに使うと旨みが料理全体に広がります。肝は刺身の肝醤油、バターソテー、パスタソースなどに活用できます。
#### Q7: アワビの月別旬カレンダーを教えてください。
A: 種類・産地によって旬が異なりますが、目安となる時期は次の通りです。11〜翌1月頃:エゾアワビ(北海道・岩手・宮城)が最盛期、5〜8月頃:メガイアワビ(静岡・三重・長崎・千葉)、5〜9月頃(特に6〜8月):クロアワビ(千葉・三重・長崎)、通年ながら夏(梅雨時)が良いとされるマダカアワビ(希少・千葉県など)。エゾアワビは晩秋〜冬、クロアワビ・メガイアワビは初夏〜夏が中心となるため、アワビは年間を通じて何らかの種類が旬を迎えている「通年高級食材」といえます。
まとめ:旬は種類によって大きく異なる
アワビの旬は種類によって大きく異なる。エゾアワビ(北海道・岩手・宮城)の旬は晩秋から冬(11月〜翌1月頃)、クロアワビ(千葉・三重・長崎)とメガイアワビ(静岡・三重・長崎・千葉)の旬は初夏から夏(5〜9月頃)で、種類ごとに楽しめる時期が異なるため、年間を通じてアワビを楽しむことができる。
天然アワビは漁獲量が年々減少しており、かつてよりも高価になっている食材だ。だからこそ旬の時期に正しい知識を持って選び、その季節ならではの味わいを存分に堪能したい。産地直送で活アワビを入手し、刺身・酒蒸し・ステーキなど様々な料理法で旬の風味を楽しもう。
魚の旬や選び方については、さんまの旬と栄養やウニの旬、毛ガニの旬もあわせてご覧いただきたい。日本の水産業全体のデータについては水産ナビ データハブも参照されたい。
参考情報
- 北海道水産林務部「エゾアワビ」(確認日: 2026-09-26)
- 旬の食材百科「クロアワビ」(確認日: 2026-09-26)
- 旬の食材百科「メガイアワビ」(確認日: 2026-09-26)
- 田村蓄養場「あわびの種類」(確認日: 2026-09-26)
- プライドフィッシュ「千葉県のアワビ」(確認日: 2026-09-26)
- プライドフィッシュ「三重県の伊勢えび」(確認日: 2026-09-26)
- 文部科学省 食品成分データベース「あわび(くろあわび、生)」(確認日: 2026-09-26)
- 農林水産省「令和5年漁業産出額」(確認日: 2026-09-26)
- TSURINEWS「アワビが絶滅危惧種に指定 50年間で10分の1に迫る勢いで漁獲量が減少」(農林水産省データ引用)(確認日: 2026-09-26)
- 水産庁「密漁を許さない~水産庁の密漁対策」(確認日: 2026-09-26)


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