最終更新: 2026-10-24
秋田県男鹿市五里合地区で、地元の漁業者でつくる「五里合クルマエビ生産研究会」が、クルマエビの陸上養殖に取り組んでいる。秋田県水産振興センターの指導を受けながら、2022年度に50匹を出荷したのを皮切りに試行錯誤を重ねてきたが、2025年度は養殖がうまくいかず出荷ができなかった。秋田県では漁獲量の減少が続くなか、「とる漁業」から「育てる漁業」への転換で所得向上を目指す動きとして注目されている(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。この記事では、実証試験の仕組みと規模、これまでの出荷実績の推移、養殖の難しさを整理する。
実証試験の概要:誰が、どこで、何に取り組んでいるか

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | 秋田県男鹿市五里合地区(五里合漁港) |
| 主体 | 五里合クルマエビ生産研究会(地元漁業者) |
| 指導 | 秋田県水産振興センター |
| 開始 | 2022年度に初出荷(50匹) |
| 2026年度 | 実証試験5年目 |
| 目的 | 「とる漁業」から「育てる漁業」への転換、高級食材での所得向上 |
研究会を率いる漁業者は、クルマエビが「1キロ1万円以上」で取引される高級食材であることに着目し、漁獲量が減少するなかで新たな収益源として陸上養殖に取り組んでいる(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。
養殖の仕組みと規模:いけす4基・4000匹の飼育

五里合漁港には直径4〜5メートルのいけすが4基設置されており、2026年度は現在そのうち2基を使って約4000匹のクルマエビを育成している。稚エビは体長3センチ程度から導入し、11〜15センチの出荷サイズになるまで約半年かけて育てる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設備 | 直径4〜5mのいけす4基(うち2基を使用) |
| 飼育数(2026年度) | 約4000匹 |
| 稚エビの導入サイズ | 体長約3cm |
| 出荷サイズ | 11〜15cm |
| 成長期間 | 約半年 |
| 単価の目安 | 1キロ1万円以上 |
2026年度は7月に稚エビ1万匹を放流し、そのうち4000匹が生存した計算になる。放流数の4割程度が生存している状況だ(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。
出荷実績の推移:50匹から1200匹、そして出荷ゼロの年も

研究会の出荷実績は右肩上がりではない。2022年度に50匹を出荷したのち、2024年度には1200匹まで増えたが、2025年度は養殖がうまくいかず出荷できなかった。2026年度は12月から2027年1月にかけて1000〜1500匹の出荷を目指している。
| 年度 | 出荷実績 |
|---|---|
| 2022年度 | 50匹 |
| 2024年度 | 1200匹(2年間での増加) |
| 2025年度 | 出荷なし |
| 2026年度(目標) | 1000〜1500匹(12月〜2027年1月予定) |
出荷したクルマエビは男鹿市内の道の駅「オガーレ」で販売されている(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。2025年度に出荷ゼロとなったことは、陸上養殖が安定した事業として確立するまでにまだ試行錯誤が必要な段階にあることを示している。
なぜ難しいのか:クルマエビはストレスに弱い

研究会を率いる漁業者は「エビを生かすことが一番難しい。どうしたら死なないのか、どうしたら生きてくれるのか」と課題を語っている(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。クルマエビは環境の変化やストレスに弱い甲殻類で、水質・水温の管理がわずかにずれるだけで死亡率が大きく変わるとされる。
この難しさは、エビ養殖は儲かる?日本の現状と種類・方法・産出額を解説で紹介した通り、クルマエビが「砂に潜る習性があり密度管理が難しい」とされる種であることとも関係している。同記事で解説した陸上養殖の主流種はバナメイエビだが、男鹿市の研究会はあえて在来種のクルマエビに取り組んでいる点が特徴的だ。
支援体制:2026年度予算で稚エビ購入費を計上

男鹿市は2026年度当初予算で、研究会向けの稚エビ購入費として250万円余りを計上し、取り組みを後押ししている(秋田テレビ、確認日2026年10月24日)。漁獲量の減少に悩む地域にとって、陸上養殖は漁業者の所得を補う手段として自治体からも期待されていることがうかがえる。
陸上養殖全般の仕組みやコスト構造については、陸上養殖のメリット・デメリットで詳しく解説している。水産業界全体の統計データは水産業界データハブでも確認できる。
クルマエビ陸上養殖に関するよくある質問
Q1: 男鹿市のクルマエビ陸上養殖はすでに安定した事業になっているのか
いいえ。2022年度の50匹から2024年度の1200匹まで出荷量が増えた一方、2025年度は養殖がうまくいかず出荷ができなかった。2026年度で実証試験5年目を迎えており、安定した事業として確立するにはまだ試行錯誤が必要な段階だ。
Q2: なぜクルマエビの陸上養殖は難しいのか
クルマエビは環境の変化やストレスに弱い甲殻類で、水質・水温管理のわずかなずれが死亡率に直結するとされる。研究会を率いる漁業者自身も「エビを生かすことが一番難しい」と課題を語っている。
Q3: 出荷されたクルマエビはどこで買えるのか
男鹿市内の道の駅「オガーレ」で販売されている。出荷数が年度によって変動するため、常時入手できるとは限らない。
まとめ:男鹿市のクルマエビ陸上養殖のポイント
- 秋田県男鹿市五里合地区で、地元漁業者による「五里合クルマエビ生産研究会」が陸上養殖に取り組んでいる
- 直径4〜5mのいけす4基(2基使用)で約4000匹を育成、出荷サイズまで約半年
- 2022年度50匹→2024年度1200匹と増えたが、2025年度は出荷ゼロ。2026年度は1000〜1500匹の出荷を目指す
- クルマエビはストレスに弱く、水質管理の難しさが最大の課題
- 男鹿市が2026年度予算で稚エビ購入費約250万円を計上し後押ししている
「とる漁業」から「育てる漁業」への転換は一朝一夕には進まないが、男鹿市の取り組みは漁獲量減少に悩む地域漁業にとって一つのモデルケースとなりうる。今後の出荷実績の推移に注目したい。
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