漁師の仕事内容を徹底解説|業務の種類・一日の流れ・必要スキルまで

漁師の仕事内容を徹底解説|業務の種類・一日の流れ・必要スキルまで 水産キャリア

最終更新: 2026-06-27

農林水産省の統計によると、日本の漁業就業者数は約12万3,100人(2022年時点)。毎年減少が続く一方で、新規就業者の約7割は39歳以下の若手が占めている。「漁師の仕事って、実際に何をしているの?」「体力だけで務まるの?」と気になっている人も多いだろう。

しかし、漁師の仕事内容は「魚を獲る」だけではない。船の整備、漁具の修繕、市場での出荷、経営管理まで、想像以上に多岐にわたる。しかも漁法や漁場、季節によって業務内容がまったく異なるのが現実だ。

この記事では、漁師の仕事内容を漁法別・季節別に整理し、一日の流れ、求められるスキル、仕事のリアルな厳しさとやりがいまで現場目線で解説する。漁師を目指す人も、水産業界を知りたい人も、まずはここから全体像をつかんでほしい。

漁師の仕事内容とは?漁獲以外の業務が5割を超える

「漁師=魚を獲る人」というイメージが一般的だが、実際の業務は漁獲作業だけにとどまらない。漁に出ている時間と同じか、それ以上の時間を陸上作業に費やすのが現場の実態だ。

漁師の仕事は大きく分けて以下の4つに分類できる。

業務カテゴリ 具体的な作業内容 全体に占める割合(目安)
漁獲作業 出港・航行・投網・揚網・釣り・操業 約30〜40%
水揚げ・選別 魚種ごとの仕分け・氷詰め・計量・出荷準備 約15〜20%
船舶・漁具管理 船体整備・エンジン点検・網の修繕・ロープ結び 約20〜25%
事務・経営管理 漁獲記録・燃料管理・市場との交渉・売上計算 約10〜15%

このバランスは漁法や規模によって大きく変わる。沿岸漁業の個人経営なら事務作業の比率が上がるし、大型船の乗組員なら漁獲作業に集中する時間が長い。

特に見落とされがちなのが「漁具の手入れ」だ。網の破れを一つひとつ補修する作業(網繕い)は、ベテラン漁師でも1回あたり数時間かかることがある。この地道な作業が翌日の漁獲量を左右するため、手は抜けない。

漁業の種類別|仕事内容の違いを比較表で整理

日本の漁業は「沿岸漁業」「沖合漁業」「遠洋漁業」の3つに大きく分かれ、さらに養殖業を加えた4分類で考えるとわかりやすい。農林水産省の漁業産出額データ(e-Stat 統計表ID: 0001886486)によると、海面漁業の産出額は全国で約9,367億円、海面養殖業は約4,357億円に達している。

それぞれの仕事内容の違いを比較表にまとめた。

項目 沿岸漁業 沖合漁業 遠洋漁業 養殖業
操業海域 陸地が見える範囲 日本の200海里水域 世界中の海 沿岸の養殖場
出港〜帰港 日帰り(4〜12時間) 数日〜数週間 数か月〜1年以上 通い(日帰り)
主な漁法 定置網・刺し網・一本釣り 底引き網・巻き網 延縄・トロール いかだ・筏・陸上水槽
主な対象魚 アジ・イカ・タコ・イセエビなど サンマ・サバ・イカなど マグロ・カツオ・エビなど ブリ・マダイ・カキ・ノリなど
乗組員数 1〜3人 5〜20人 20〜50人以上 1〜5人
就業者の割合 約85% 約10% 約2% 約3%(兼業含む)
体力負担 中〜高 非常に高
収入の特徴 歩合制が中心 固定給+歩合 固定給が中心 経営次第

日本の漁師の約85%が沿岸漁業に従事しており、未経験者が最初に就く仕事も沿岸漁業が大半だ。沿岸漁業の中でもさまざまな漁法があり、それぞれで仕事内容は異なる。漁師の種類について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてほしい。

沿岸漁業の仕事内容

日本の漁業の大半を占める沿岸漁業では、小型船(5トン未満が主流)を使って日帰りで操業する。朝暗いうちに出港し、午前中に帰港して水揚げ・選別するのが一般的なパターンだ。

漁法によって仕事内容が変わるのが沿岸漁業の特徴でもある。定置網漁なら決まった場所に設置した網を引き揚げる作業が中心になり、一本釣りなら魚のいるポイントを読む経験と技術が求められる。

沖合・遠洋漁業の仕事内容

沖合漁業では数日から数週間の航海に出る。船上での生活が基本となるため、操業時間以外にも調理当番や船内清掃、見張り番など、生活に関わる業務が加わる。

遠洋漁業になると航海は数か月から1年以上に及ぶ。マグロ延縄漁の場合、1回の操業で100km以上の縄を仕掛けることもある。体力だけでなく、長期間の共同生活に耐える精神力も不可欠だ。マグロ漁師の仕事についてはこちらの記事で詳しく解説している。

養殖業の仕事内容

養殖業は「育てる漁業」として近年注目が高まっている。e-Stat(統計表ID: 0002001226)のデータによれば、海面養殖業の産出額は全国で約4,357億円。そのうちブリ類が約1,065億円と最大のシェアを占め、続いてノリ類(約1,043億円)、クロマグロ(約471億円)となっている。

養殖業の仕事内容は、餌やり、生簀の管理、水質チェック、出荷作業が中心だ。天然漁業と比べて計画的に作業できる反面、赤潮や台風などの自然災害リスクへの備えが欠かせない。

漁師の一日の流れ|季節と漁法で変わる現場のリアル

漁師の一日は漁法と季節によってまったく異なる。ここでは代表的な3つのパターンを紹介する。

パターン1: 沿岸漁業(定置網漁)の一日

時刻 作業内容
3:00〜3:30 起床・出港準備
3:30〜4:00 出港・漁場へ移動
4:00〜7:00 網の引き揚げ・魚の取り込み
7:00〜8:00 帰港・水揚げ
8:00〜10:00 選別・氷詰め・出荷
10:00〜12:00 網の修繕・漁具点検
12:00〜13:00 昼食・休憩
13:00〜15:00 翌日の準備・船体整備
15:00以降 自由時間

定置網漁は比較的規則的なスケジュールで動ける。朝が早い分、午後は自由時間になることが多い。ただし、繁忙期(春のブリや秋のサンマなど)は1日2回操業することもある。漁師の一日のスケジュールをさらに詳しく知りたい方はこちら

パターン2: 沖合漁業(底引き網漁)の一日

沖合漁業では船上で数日間生活しながら操業する。1日の中で投網と揚網を3〜5回繰り返し、合間に選別・冷凍処理を行う。睡眠は交代制で3〜4時間ずつ取ることが多く、体力的に最もハードな部類に入る。

パターン3: 養殖業の一日

養殖業は比較的規則的な労働時間で働ける。朝6〜7時に作業を始め、餌やり、生簀の点検、水質測定を行い、夕方16〜17時には作業が終わるケースが多い。ただし出荷時期は早朝から深夜まで作業が続くこともある。

季節による仕事内容の変化

漁師の仕事は季節によって内容が大きく変わる。6月であれば、旬を迎えるアユやスズキ、イサキの漁が盛んになる時期だ。

季節 主な業務 特徴
春(3〜5月) 定置網漁の最盛期・イカナゴ漁 水温上昇で魚種が増加
夏(6〜8月) アユ・スズキ漁・素潜り漁 台風対策の船舶管理が重要
秋(9〜11月) サンマ・カツオ漁の最盛期 出荷量が年間で最も多い時期
冬(12〜2月) カニ漁・ブリ漁・ノリ養殖 荒天で出港できない日が多い

冬場は海が荒れる日が多く、出港できない「休漁日」が増える。この時期は漁具の大規模な修繕や、翌シーズンに向けた準備作業が中心になる。陸上で過ごす時間が長くなるため、副業を持つ漁師も少なくない

漁師に求められるスキルと適性|体力だけでは続かない

漁師の仕事は「体力があれば誰でもできる」と思われがちだが、実際に長く続けるにはさまざまなスキルと適性が必要だ。

必須スキル

操船技術: 小型船舶操縦士免許は沿岸漁業でほぼ必須。免許がなくても乗組員として乗れるが、自分で船を出せるかどうかでキャリアの幅が大きく変わる。漁業に必要な資格の一覧はこちらにまとめている。

気象・海象の読み: 天候や潮の動きから漁場を判断する力は、漁獲量に直結する。ベテラン漁師は風向き・雲の形・潮の色から翌日の天気を予測できるという。魚群探知機やGPSなどの機器に頼る部分も増えているが、最終判断はやはり経験がものをいう。

網・ロープの扱い: 網の補修(網繕い)や各種ロープの結び方は、漁師の基本技術だ。特に定置網漁では、網の状態が漁獲量を左右するため、繊細な手仕事ができるかどうかが重要になる。

あると強いスキル

エンジン整備: 洋上でエンジントラブルが起きたとき、基本的な修理ができると頼りにされる。大型船にはエンジニア(機関士)が乗っているが、小型船では船長自身がすべて対応する。

水産物の目利き: 魚のサイズや鮮度を瞬時に見分けて、適切な処理(活け締め・神経締めなど)を施す技術。高値で売れるかどうかはこの技術次第でもある。

経営感覚: 個人経営の漁師は、燃料費・人件費・漁具費を管理しながら売上を最大化する経営者でもある。近年は直販やネット販売に乗り出す漁師も増えており、マーケティングの知識も武器になる。

向いている人・向いていない人

向いている人の特徴 向いていない人の特徴
朝が早くても苦にならない 規則正しい生活リズムが崩れるとつらい
天候に左右される仕事を受け入れられる 毎日同じルーティンで働きたい
チームワークを大切にできる 一人で黙々と作業したい
体を動かすことが好き デスクワーク中心の仕事を希望
自然の中で働くことに魅力を感じる 屋内環境で安定して働きたい

現場の漁師に聞くと、「体力よりも、天候に左右される不安定さを受け入れられるかが大事」という声が多い。漁に出れば1日で数十万円を稼ぐこともあれば、荒天続きで1週間収入ゼロということもある。漁師の年収や収入の仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説している。

漁師の仕事の厳しさとやりがい|現場のリアルな声

仕事のきつさ

漁師の仕事がきついと言われる理由は、主に以下の3つだ。

1つ目は体力的な負担。網の引き揚げや魚の運搬は重労働で、特に冬場の冷たい海水を浴びながらの作業は相当にこたえる。未経験で入った人の多くが、最初の1〜2か月で全身の筋肉痛に悩まされる。

2つ目は不規則な生活リズム。沿岸漁業でも朝3時起きが当たり前で、沖合漁業では交代制の睡眠で3〜4時間しか眠れない日が続く。生活リズムが合わずにリタイアする人も少なくない。

3つ目は収入の不安定さ。漁獲量は天候・海況・魚の回遊状況に左右されるため、月によって収入が大きく変動する。歩合制が多い沿岸漁業では、この変動幅がさらに大きくなる。

こうした現実を知った上で判断したい方は、「漁師 やめとけ」と言われる理由をまとめた記事も参考にしてほしい。

仕事のやりがい

一方で、漁師を続ける人が口をそろえて言うのは「自然相手の仕事だからこその達成感」だ。

狙った魚が大漁だったときの充実感、自分の判断で漁場を選んで結果が出たときの手応え、育てた養殖魚が高値で取引されたときの喜び。こうした「自分の腕と判断で稼ぐ」実感は、サラリーマンではなかなか味わえないものだ。

また、地域コミュニティとの結びつきの強さも漁師ならではの魅力だ。漁協を中心としたネットワークの中で、先輩漁師から技術を学び、地域の祭りや行事にも参加する。人間関係が濃い分、移住者を温かく迎える地域も増えている。

最近では、徳島県の「とくしま漁業アカデミー」のように、未経験者を受け入れて一人前の漁師に育てるプログラムが各地で整備されつつある(2026年6月 徳島新聞報道)。未経験から漁師を目指す方法についてはこちらの記事で詳しく解説している。

よくある質問(FAQ)

Q1. 漁師の仕事に学歴は必要?

学歴は問われない。中卒・高卒で漁師になる人も多い。ただし、水産高校や水産系大学を卒業していると、基礎知識を持った状態でスタートできるため、現場での習得スピードが上がる。水産大学校では4年間の専門教育を受けられる。

Q2. 漁師の仕事は女性でもできる?

近年、女性漁師は増加傾向にある。特に養殖業やノリ・ワカメ漁では女性が活躍する場面が多い。一方、遠洋漁業の大型船では居住スペースや設備の問題から、女性の受け入れ体制が整っていない船もまだ存在する。沿岸漁業や養殖業から始めるケースが多い。

Q3. 漁師の仕事で使う主な道具は?

漁法によって異なるが、共通して使う主な道具は以下の通り。漁網(刺し網・定置網・巻き網など)、釣り具(竿・リール・仕掛け)、魚群探知機、GPS、無線機、クーラーボックス・氷、ナイフ・包丁(活け締め・神経締め用)、防水作業着・長靴。漁船自体も最も高額な「道具」であり、小型船でも数百万円、大型船になると数億円の投資が必要だ。

Q4. 漁師の仕事は何歳まで続けられる?

個人差はあるが、70代でも現役で操業している漁師は珍しくない。沿岸漁業は比較的自分のペースで続けられるため、体力に合わせて漁法や操業時間を調整しながら長く働ける。ただし、沖合・遠洋漁業の乗組員としては、体力的に50〜60代が限界とされることが多い。

Q5. 漁師の仕事に転職するにはどうすればいい?

まずは各地の漁業就業支援センターや漁業体験プログラムに参加するのがおすすめだ。いきなり独立するのではなく、既存の漁師のもとで「乗組員」として経験を積むのが一般的なルートになる。自治体によっては移住支援制度や住居の提供を行っているところもある。[漁師への転職で失敗しないためのポイント](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fisherman-career-change-failure/)もあわせて確認しておきたい。

まとめ|漁師の仕事内容を理解して次の一歩を踏み出そう

漁師の仕事内容は「魚を獲る」だけではなく、漁具の管理、水揚げ・選別、船舶整備、経営管理まで多岐にわたる。漁法(沿岸・沖合・遠洋・養殖)によって業務内容が大きく異なり、季節ごとに対象魚や作業内容も変化する。

体力は確かに必要だが、それ以上に「自然相手の不確実さを楽しめるか」「チームで働けるか」「地道な準備作業を続けられるか」が、長く漁師を続けられるかどうかの分かれ目だ。

漁師の仕事に興味を持った方は、以下の記事もチェックしてみてほしい。

  • [漁師になるには?未経験からの具体的なステップ](https://suisan-navi.jp/fisherman-career-guide/)
  • [漁師の年収はいくら?漁法別の収入事情](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fisherman-salary/)
  • [漁業に必要な資格一覧](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fishery-qualifications-guide/)

水産業界の最新データや統計情報については、水産業界の統計データまとめページも参考にしてほしい。

参考情報

  • 農林水産省「漁業産出額」(e-Stat 統計表ID: 0001886486)
  • 農林水産省「主要魚種別の海面養殖業産出額」(e-Stat 統計表ID: 0002001226)
  • 水産庁「漁業の就業者をめぐる動向」(令和5年度 水産白書)
  • 水産庁「漁業構造動態調査」(2022年時点)
  • 徳島新聞「とくしま漁業アカデミーの田中翼さん 未来を支える人材に」(2026年6月26日)



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