不漁の原因は海水温?近海で魚が獲れなくなった理由を解説

不漁の原因は海水温?近海で魚が獲れなくなった理由を解説 漁業・漁法

最終更新: 2026-09-24

近年の日本近海の不漁は、特定の魚種だけの問題ではありません。海水温の上昇、黒潮大蛇行による海流の変化、それにともなう魚の分布域シフトという、複数の魚種に共通する構造的な要因が背景にあります。2026年9月24日には茨城県で「マイワシ、マサバ不漁深刻」と報じられ、県水産試験場が漁場探索調査を大幅に強化する事態になりました。これは全国的な傾向の一例であり、水産庁「令和6年度水産白書」も海洋環境の変化を特集として取り上げています。

本記事では、サンマや秋鮭のような魚種別の解説記事とは異なり、複数の魚種を横断して「なぜ近年の日本の沿岸漁業は不漁になりやすいのか」という構造を解説します。あわせて、不漁が漁師の収入や経営判断にどう影響するのかという、転職・独立を検討する人にとって実務的な論点も取り上げます。サンマに特化した詳しい原因分析はさんまが不漁な理由を徹底解説、燃料費など固定費の詳細は漁師の燃料代はいくら?をあわせてご覧ください。

不漁の背景にある3つの構造要因

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まず、近年の不漁に共通する構造要因を整理します。いずれも単独で発生するのではなく、相互に関係しながら漁獲量に影響しています。

要因 内容 時点・出典
海水温の上昇 日本近海の年平均海面水温は長期的に100年あたり約1.33℃のペースで上昇しており、世界平均の上昇速度の2倍以上とされる。2024年は平年差+1.44℃で1908年の統計開始以降最高を記録、2025年は+1.00℃で歴代3位となった 水産庁「令和6年度水産白書」、時事通信2026年3月5日配信記事、2026年9月24日確認
黒潮大蛇行 黒潮が房総半島沖などで大きく南に蛇行する現象。2017年8月に発生し2025年4月に終息するまで7年9か月継続し、1965年以降で最長を記録した(従来の最長記録は1975年8月〜1980年3月の4年8か月)。沿岸に暖水が入り込み続けたことで生態系が攪乱された 気象庁「黒潮大蛇行の終息について」2025年8月29日発表、2026年9月24日確認
魚の分布域シフト 魚は種ごとに適した水温帯(適水温)を求めて回遊するため、海水温が上がると分布域が北上・沖合化する。沿岸の定置網漁や小型船漁は、魚群が届く前に漁期が終わってしまうケースが増えている 水産庁「令和6年度水産白書」、2026年9月24日確認

魚種別に見る不漁・豊漁の傾向

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海水温の上昇は、すべての魚種を一様に減らすわけではありません。冷たい水を好む魚種は減少・北上する一方、暖かい水を好む魚種は逆に漁獲量を伸ばしています。水産庁「令和6年度水産白書」と最新の報道をもとに、主要な魚種の傾向を整理しました。

魚種 近年の傾向 主な要因 時点・出典
サンマ 漁獲量が大きく減少 水温上昇で漁場がさらに沖合へ移動し、小型漁船の出漁が困難化。資源量自体が減少した可能性も指摘 水産庁令和6年度水産白書、2026年9月24日確認
スルメイカ 2016年以降、資源量が減少 産卵期の遅れ、魚体の小型化が報告されている 水産庁令和6年度水産白書、2026年9月24日確認
サケ 漁獲量が大きく減少 放流した稚魚の回帰率低下。稚魚に適した水温の期間短縮と餌環境の悪化が要因 水産庁令和6年度水産白書、2026年9月24日確認
マイワシ・マサバ(茨城県) 2026年8月末時点、波崎・銚子両漁港の水揚げ量は計2万4785トンで前年同期比88%減、産地価格の平均単価は3.4倍に上昇。マサバは2022年から不漁が継続 海洋環境の変化(水温上昇・黒潮大蛇行)が背景と分析されている 茨城新聞クロスアイ2026年9月24日配信(Yahoo!ニュース)、2026年9月24日確認
ブリ 1990年代以降、漁獲量が増加。北海道や太平洋北部・中部での漁獲が拡大 暖水を好む性質から、水温上昇にともない分布域が北上 水産庁令和6年度水産白書、2026年9月24日確認
サワラ 1999年以降、日本海での漁獲が増加 同上(分布域の北上) 水産庁令和6年度水産白書、2026年9月24日確認

※ この表は各魚種について水産庁「令和6年度水産白書」および直近の報道で言及された傾向を編集部が横断的に整理したものです。統計の対象年・調査方法は魚種ごとに異なるため、漁獲量そのものの単純な比較はできません。傾向を把握する目的での参照にとどめてください。サンマの不漁理由をさらに詳しく知りたい方はさんまが不漁な理由を徹底解説で5つの要因を分析しています。

なぜ海水温が上がると魚が獲れなくなるのか

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魚は種ごとに生育・産卵に適した水温帯を持ち、その水温を求めて回遊します。海水温が上昇すると、魚が好む水温帯そのものが北や沖合へ移動するため、魚の分布域も追随して変化します。

沿岸の定置網漁や小型船による漁は、行動範囲が限られているため、魚群が沿岸まで来遊しなくなると漁獲が成立しにくくなります。実際にサンマでは、水温上昇によって漁場がさらに沖合へ移動し、小型漁船が出漁できないまま漁期が終わるケースが増えていると水産庁は説明しています。

影響を受けるのは漁業だけではありません。養殖業でも、秋季の高水温によってノリの生産開始が遅れたり収穫量が減少したりするほか、食害の増加も報告されています。2023年には青森県の陸奥湾で想定を超える高水温が発生し、ホタテガイの大量へい死が起きました。いずれも水産庁「令和6年度水産白書」が2026年9月24日時点で公表している内容です。

黒潮大蛇行とは何か、漁業にどう影響したか

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黒潮大蛇行とは、日本の南岸を流れる黒潮が、房総半島沖などで大きく南へ蛇行して流れる状態を指します。2017年8月に発生した今回の大蛇行は、2025年4月に終息するまで7年9か月続き、1965年以降で最も長い継続期間となりました(気象庁2025年8月29日発表)。

大蛇行が続いていた期間は、沿岸に暖水が入り込みやすくなることで地域差のある影響が生じていました。たとえば暖かい海を好むカツオが熊野灘から遠州灘で豊漁になる一方、房総半島の外房地域や伊豆諸島・八丈島近海では不漁になるなど、同じ魚種でも海域によって明暗が分かれる現象が起きていたことが報じられています。

2025年4月に大蛇行そのものは終息しましたが、海水温の長期的な上昇傾向は続いており、2025年の日本近海の年平均海面水温は平年差+1.00℃で統計開始以降3番目に高い水準でした。大蛇行の終息が、不漁からの即座の回復を意味するわけではない点には注意が必要です。

不漁がすべて温暖化のせいとは限らない

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ここまで海水温上昇や黒潮大蛇行の影響を見てきましたが、不漁の原因を温暖化だけに求めるのはフェアではありません。マイワシやマサバのような多獲性浮魚類には、地球温暖化とは別に「レジームシフト」と呼ばれる数十年周期の自然な資源変動があることが、研究者の間で広く知られています。

レジームシフトとは、北太平洋の海面水温が数十年単位で寒冷な状態と温暖な状態を行き来する現象で、この周期にあわせてマイワシなどの資源量が大きく増減することが知られています。1988〜89年ごろには北太平洋中部の海面水温が寒冷から温暖な状態へ転じたのにともない、マイワシの漁獲量が豊漁から不漁へと一転した例が報告されています。この学説の起点は、水産研究者の川崎健氏が1983年に発見した、世界各地のマイワシ漁獲量の同期した変動です。

つまり、マイワシ・マサバのような魚種の不漁は、地球温暖化による水温上昇と、より短い周期で起きる自然な資源変動サイクルの両方が絡んでいる可能性があり、どちらか一方だけで説明するのは慎重であるべきです。茨城県の事例についても、報道では海洋環境の変化が背景として分析されていますが、要因の内訳まで定量的に切り分けられているわけではありません。

不漁は漁師の収入・経営にどう影響するか

不漁が続く年ほど、漁師にとって深刻なのは「収入が減る一方で、支出は減らない」という構造です。漁船はエンジンを動かして漁場まで往復する以上、燃料は魚が獲れても獲れなくても同じだけ消費されます。水産庁「令和6年度水産白書」によると、油費(燃料費)は漁労支出のうち直近5か年平均で約16%を占め、人件費と並ぶ大きな固定的コストです。不漁の年は、この固定費を少ない水揚げ金額で賄わなければならなくなり、漁業所得を直接的に圧迫します。燃料費の詳しい内訳や高騰時に使える公的制度については漁師の燃料代はいくら?で解説しています。

行政側も対策を強化しています。茨城県では、当初計画で年間3回・計7日間だった漁場探索調査を、17回・計48日間へと大幅に拡大し、調査指導船が衛星データや操業実績から新たな魚群の位置を予測。実際に捕獲して魚種を確認したうえで、近海の巻き網船団へ直接情報提供する体制をとっています。こうした情報提供は、漁業者が魚群を探すために消費する燃料や時間を減らし、漁獲効率を高める狙いがあります。

これから漁師を目指す人にとっては、「不漁でも一定の固定費が発生する」という収支構造を理解しておくことが、独立や転職後のギャップを減らす材料になります。多魚種を組み合わせた漁業への転換や、直売・加工による付加価値化など、単一魚種への依存度を下げる経営判断が今後より重要になっていくと考えられます。水産業全体が抱える構造的な課題については水産業の課題とは?、水産白書の全体像は水産白書とは?でも詳しく解説しています。

不漁の原因に関するよくある質問

Q1: 近海の不漁は今後も改善する見込みはありますか?

海水温の長期的な上昇傾向は続いており、2025年も日本近海の年平均海面水温は統計開始以降3番目に高い水準でした。海洋環境の変化が構造的な要因である以上、短期間での大幅な改善は見込みにくいとされています。ただしマイワシ・マサバのようにレジームシフトの影響を受ける魚種では、周期的な資源変動によって数年〜数十年単位で状況が変わる可能性もあります。

Q2: 黒潮大蛇行はもう終わったのに、なぜ不漁が続いているのですか?

黒潮大蛇行そのものは2025年4月に終息しましたが、これは「異常な蛇行状態」が解消されたことを意味するもので、海水温の長期的な上昇傾向とは別の現象です。大蛇行が終息した後も、日本近海の年平均海面水温は依然として平年より高い状態が続いているため、不漁の要因が一度に解消されるわけではありません。

Q3: 不漁の中でも漁獲量が増えている魚種はありますか?

あります。ブリは1990年代以降、北海道や太平洋北部・中部での漁獲量が増加しており、サワラも1999年以降、日本海での漁獲が増加しています。いずれも比較的暖かい水を好む魚種で、水温上昇にともなって分布域が北上したことが背景にあると水産庁は説明しています。

まとめ:不漁は複数魚種に共通する構造的な問題

  • 近年の不漁は、海水温の長期的な上昇、黒潮大蛇行による生態系の攪乱、それにともなう魚の分布域シフトという、複数の魚種に共通する構造要因が背景にある
  • サンマ・スルメイカ・サケなど冷たい水を好む魚種は減少・北上傾向にある一方、ブリ・サワラなど暖かい水を好む魚種は漁獲量を伸ばしている
  • マイワシ・マサバのような多獲性魚種には、温暖化とは別に数十年周期のレジームシフトという自然な資源変動も関係しており、要因を単純化しすぎないことが重要
  • 不漁の年は水揚げが減っても燃料費などの固定費は変わらず発生するため、漁師の収入・経営を圧迫する構造がある
  • 茨城県のように、行政が漁場探索調査を強化して漁業者に情報提供する取り組みも広がっている

サンマの不漁理由をさらに詳しく知りたい方はさんまが不漁な理由を徹底解説を、漁師の経費構造を知りたい方は漁師の燃料代はいくら?を、あわせてご覧ください。

参考情報

  • 水産庁「令和6年度水産白書 第1部 特集 我が国周辺海域における水産資源及び漁業・養殖業への影響」(2026年9月24日確認) https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_f_2_1.html
  • 水産庁「令和6年度水産白書 第1部 特集 我が国近海等での海洋環境の変化」(2026年9月24日確認) https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_f_1_1.html
  • 水産庁「令和6年度水産白書 第1部 (2)漁業・養殖業の経営の動向」(2026年9月24日確認) https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_2_2.html
  • 気象庁「黒潮大蛇行の終息について~過去最長の7年9か月継続~」2025年8月29日発表(2026年9月24日確認) https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html
  • 時事通信「海面水温、史上3位の高さ 昨年の日本近海平均」2026年3月5日配信(2026年9月24日確認) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026030501139&g=soc
  • 茨城新聞クロスアイ「マイワシ、マサバ不漁深刻 茨城県、漁場の探索調査強化 巻き網船団に情報提供」2026年9月24日配信(Yahoo!ニュース、2026年9月24日確認) https://news.yahoo.co.jp/articles/23df647d021d78cee5596b4cb9617a0ed9cfa715
  • 笹川平和財団 海洋政策研究所「資源変動と海洋生態系~マイワシを例に~」Ocean Newsletter第257号(2026年9月24日確認) https://www.spf.org/opri/newsletter/257_2.html
  • さんまが不漁な理由を徹底解説——漁獲量激減の原因・現状・今後の見通し
  • 漁師の燃料代はいくら?経費に占める割合となぜ高いのか、高騰対策まで解説
  • 水産業の課題とは?5つの構造的問題
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この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。

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