定置網漁とスマート化|IoT監視システムで変わる持続可能な漁業

定置網漁とスマート化|IoT監視システムで変わる持続可能な漁業 漁業・漁法

最終更新: 2026-11-01

定置網漁の現場で、IoTセンサーを使って網の中の魚の量や水深・海水温を可視化する「スマート漁業」の取り組みが広がっている。漁師が出漁前に網の状況を把握できるようになり、無駄な出漁を減らして資源管理につなげる動きだ。定置網そのものの仕組みは別記事「定置網漁の仕組みとは?構造・種類を図解でわかりやすく解説」で解説しているので、ここではIoT・スマート化の技術動向と現場の活用例を中心に紹介する。

定置網のスマート化とは

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定置網漁は、海中に網を固定して魚群の通り道を誘導する伝統的な漁法だが、網の中にどれだけ魚が入っているかは、実際に網を上げるまで分からないという課題があった。これに対し、ブイに取り付けた超音波センサーで網内の魚群量や水深、潮の流れなどを計測し、データを陸上や漁船にリアルタイムで送信する技術が各地で導入されている。

水産庁の委託事業や総務省の地域デジタル基盤活用推進事業などを通じて、こうした技術は磯焼け対策や養殖業の効率化とあわせて全国的な実証が進められており、国は2027〜2028年ごろにかけて他地域への横展開を計画している。

北海道・羅臼町の取り組み:出漁回数を減らして資源を守る

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北海道羅臼町では、有限会社阿保水産代表の芦崎拓也さんが、定置網漁で資源管理を意識した経営に取り組んでいる。読売新聞(2026年10月31日)の報道によると、芦崎さんは水深や魚の出入りを計測する監視システムを使って漁の効率化を進め、「持続可能な定置網漁を実践」しているという。

別の報道(TOMOSU)によれば、芦崎さんは出航回数を前年の半分以下に抑える方針に切り替え、その結果「どこよりも先に網を上げて漁を終えた」という年もあったという。経費と漁獲量の基準をオープンにする経営方針を取り、従業員の離職はゼロのまま、休日と給与の両方を増やすことができたと紹介されている。羅臼町は「鮭の聖地」として日本遺産に認定された地域でもあり、世界自然遺産・知床の海を漁場とする立場から、資源管理への意識が高い地域だ。

なお、芦崎さんが具体的にどの製品・型式の監視システムを使っているかは報道からは特定できないが、見出しにある「水深や魚の出入りを計測」という内容は、次に紹介する全国的なスマート定置網技術と同じ方向性にある。

全国に広がるスマート定置網の実証事例

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羅臼町のような個別の取り組みにとどまらず、定置網のIoT化は全国各地で実証が進んでいる。

地域・事業 技術の概要
長崎県五島市(2026年2月実証) 通信が不安定な漁場向けに「Wi-Fi HaLow」を活用し、陸上から1.5km離れた定置網の水中映像をリアルタイムモニタリング
「魚っちV」(石川県、NTTドコモ関西支社など5者共同開発) 省電力の通信規格「LTE-M」を使い、魚群探知機センサーで網内の魚群量や漁具の形状変化を計測してクラウドに送信。2019年11月から石川県内で導入
国内初のLPWA定置網モニタリング(2019年、TIS) 海上でLPWA通信を使った定置網モニタリングシステムを提供開始
離島・全国の海洋モニタリング導入 水温・潮位などのデータを漁業者がスマートフォンで確認できる仕組みで、離島6自治体を含む全国45自治体に導入

これらの技術は、超音波センサーによる反射強度から魚群量を推定したり、水中カメラの映像を遠隔地から確認したりする点で共通している。通信環境が不安定な沖合の漁場でも使えるよう、LTE-MやWi-Fi HaLowなど省電力の無線通信規格が活用されているのが特徴だ。

スマート化で期待される効果と課題

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網の状況を事前に把握できれば、魚が少ない日の無駄な出漁を減らし、燃料費や人件費を抑えられる。これは個々の経営効率化だけでなく、必要以上に漁獲しない資源管理にもつながる。一方で、センサー機器の導入・維持コストや、通信が届きにくい沖合の漁場での安定運用、高齢の漁業者への操作教育など、普及に向けた課題も残る。水産系の教育現場でも、こうした技術への対応が進みつつあり、秋田県の水産高校では2025年に船内LANシステムを搭載した新しい実習船を導入している(詳しくは「男鹿海洋高校の学科・偏差値・実習船|スマート漁業を学ぶ秋田県内唯一の水産校」を参照)。

よくある質問

Q1. 定置網のスマート化とは何をすることですか?

ブイや水中センサーを使い、網内の魚群量・水深・水温などのデータを陸上や漁船にリアルタイムで送信する技術の導入を指す。網を上げる前に状況を把握できるのが特徴だ。

Q2. どんな効果がありますか?

出漁判断の精度が上がり、無駄な出漁を減らせる。資源管理や燃料費・人件費の削減にもつながる。

Q3. 羅臼町ではどんな取り組みがありますか?

阿保水産代表の芦崎拓也さんが、監視システムを使った漁の効率化と、出航回数を抑える資源管理型の経営を実践していると報道されている。

Q4. 全国でどのくらい広がっていますか?

長崎県五島市のWi-Fi HaLow実証や、関西の「魚っちV」、離島を含む全国45自治体の海洋モニタリング導入など、各地で実証・導入が進んでいる。

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まとめ:技術で支える「獲りすぎない」漁業

  • 定置網のスマート化は、センサーで網内の魚群量・水深・水温を可視化し、出漁判断の精度を上げる技術
  • 北海道羅臼町では資源管理を意識した経営と監視システムの活用が報道されている
  • 長崎県五島市のWi-Fi HaLow実証や「魚っちV」など、全国各地で実証・導入が進む
  • コストや通信環境、操作教育などの課題を抱えつつも、2027〜2028年ごろの横展開が計画されている

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産業界に特化した専門メディアです。

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