北海道の漁師の年収はいくら?海域差とホタテ禁輸の影響を解説

北海道の漁師の年収はいくら?海域差とホタテ禁輸の影響を解説 水産キャリア

最終更新: 2026-10-02

北海道の漁師の年収は、漁法・海域によって300万円台から1,000万円超までと幅が大きく、全国平均と比べると高めの水準にあるとされています。ただし「北海道の漁師は儲かる」というイメージの中心にあるホタテ漁は、2023年の中国による禁輸、2025年11月の輸出再開、そのわずか数日後の再凍結という外的要因で収入が大きく揺れ動いているのが実情です。

この記事では、まず全国統計と求人情報から北海道の漁師の年収の全体像を整理し、次にオホーツク・太平洋・日本海・道南という海域ごとの傾向、そして他サイトではあまり触れられていない「ホタテ禁輸問題が漁師の年収に与えた影響」を時系列で解説します。カニ漁・サケ漁(定置網)との違いや、北海道で漁師を目指す際の支援制度にも触れるので、北海道で漁師への転職を考えている方は参考にしてください。

北海道の漁師の年収の全体像|全国統計との比較

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北海道の漁師に特化した公的な年収統計は存在しないため、まずは全国統計と求人情報の両面から相場感を押さえておきましょう。

水産庁「令和6年版水産白書」によると、全国の漁労所得(売上から経費を差し引いた利益)は漁業形態によって次のように大きく異なります。

区分 漁労所得 時点
沿岸漁船漁業(個人経営体) 219万円 令和5年(2023年)
基幹的漁業従事者が65歳未満の漁船漁業 703万円 令和5年(2023年)
海面養殖業(個人経営体) 1,533万円 令和5年(2023年)

出典: 水産庁「令和6年版水産白書」漁業・養殖業の経営の動向(確認日2026-10-02)

ここで注目したいのは「基幹的漁業従事者が65歳未満」に絞ると所得が703万円まで上がる点です。沿岸漁業全体の平均(219万円)には高齢で漁獲量が少ない小規模漁家も含まれるため、実際に本格的に操業している現役世代の所得はこれより高い傾向にあります。北海道は全国でも漁業就業者の年齢構成が比較的若い地域とされており、このギャップは北海道の漁師の年収を考えるうえでも参考になります。

一方、求人サイトに掲載されている北海道の漁師求人を見ると、2026年10月時点でIndeed・求人ボックスには月給19万〜35万円、年収換算で350万〜530万円程度の求人が多く掲載されています。ホタテ養殖の求人では月給25万〜30万円(想定年収300万〜360万円)、定置網漁の求人では月給23万〜30万円(想定年収276万〜360万円)という条件が目立ちます(求人サイト調べ、2026年10月時点)。

これらはいずれも「固定給+歩合」が中心の雇用形態の相場であり、水揚げに直接収入が連動する個人経営の漁師(特にホタテの桁上げ漁業者など)の年収は、これとは別に大きく変動する点に注意してください。北海道全体の漁業生産規模や就業者数については北海道の水産業はなぜ全国1位?3つの理由と主要魚種・2026年の危機を解説で詳しく解説しています。

【海域別】北海道の漁師の年収傾向|オホーツク・太平洋・日本海・道南

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北海道は日本海・太平洋・オホーツク海の3つの海に囲まれており、海域ごとに獲れる魚種と働き方が大きく異なります。海域別の詳細な公的年収統計は公表されていないため、ここでは求人情報や主要魚種の特性から傾向を整理します。

海域 主要魚種 給与体系の傾向 年収の傾向
オホーツク海側(紋別・枝幸・猿払) ホタテ、サケ、毛ガニ 養殖は歩合の比重が大きい。乗組員求人は固定給+歩合 ホタテ漁関係者は好不漁・相場・輸出動向で振れ幅が最も大きい
太平洋側(釧路・根室) サンマ、スケトウダラ、花咲ガニ、サケ(定置網) 大型船の乗組員求人が多く、固定給の比重が比較的高い 漁期による変動はあるが、比較的安定した求人が多い
日本海側(稚内・留萌・小樽) ホッケ、ニシン、タラバガニ 小規模な沿岸漁業の個人経営が中心 個人経営のため経費・漁獲量による変動が大きい
道南(函館) イカ、ウニ、コンブ 季節雇用・養殖作業員の求人が中心 漁期が限定される分、年間を通じた収入の組み合わせが必要

(求人サイト・業界情報をもとに水産ナビ編集部が傾向を整理。個別の年収は船・組合・その年の漁獲量によって変動する)

特にオホーツク海側は、ホタテの桁上げ漁業(養殖)が盛んで、好調な年には全国トップクラスの所得を記録する一方、後述するように国際情勢の影響を最も受けやすい海域でもあります。北海道の漁師求人全体の探し方・支援制度については北海道漁師求人2026年版|地域別年収・漁種・移住支援を解説で網羅的にまとめています。

【独自】ホタテ漁師の年収は中国禁輸でどう変わったか

「北海道の漁師は儲かる」というイメージの象徴が、オホーツク海側・猿払村のホタテ漁師です。しかし、その年収は近年、資源や天候だけでなく、国際情勢という漁師自身にはコントロールできない要因で大きく揺れ動いています。この章は他の年収記事ではあまり扱われていない切り口なので、時系列で整理します。

禁輸・再開・再凍結の経緯

時期 出来事
2023年8月 東京電力福島第一原発の処理水放出を理由に、中国が日本産水産物を全面禁輸
2025年11月5日 北海道産冷凍ホタテ約6トンが苫小牧港から中国向けに出荷され、禁輸後初めて輸出が再開
2025年11月中旬 高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言に中国が反発し、水産物の新規輸出申請を全面的に凍結

出典: 日本経済新聞、北海道新聞デジタル、時事通信(いずれも確認日2026-10-02)

つまり、2025年11月の輸出再開はわずか数日〜数週間で再び事実上停止した状態にあり、2026年10月時点でもホタテの対中輸出は正常化していません。北海道のホタテ漁業全体がこの禁輸・輸出先転換にどう対応してきたかはホタテ漁業の仕組みを徹底解説|地撒き・垂下式の違いから中国禁輸問題までで詳しく扱っているので、養殖の仕組みから知りたい方はあわせて読んでみてください。

猿払村の平均所得は年によって大きく変動している

ホタテ漁が盛んな猿払村(宗谷郡)は、しばしば「漁師の年収3,000万円」といった形でメディアに取り上げられる地域です。ただし、総務省「市区町村税課税状況等の調べ」を集計したデータベース(ねんしゅう.net調べ)で過去5年分の平均所得を確認すると、次のように年度ごとの変動が非常に大きいことがわかります。

年度 猿払村の平均所得
2021年 約441万円
2022年 約732万円
2023年 約873万円
2024年 約600万円
2025年 約752万円

出典: 総務省「市区町村税課税状況等の調べ」集計データ(ねんしゅう.net、確認日2026-10-02)。同村は漁業者の比率が高い自治体のため、村全体の平均所得はホタテ漁師の所得動向を強く反映するが、村民全体の平均値であり漁師個人の年収そのものではない点に注意。

この「平均所得」はホタテ漁師以外の住民も含む村全体の数値であり、個々の漁師の年収と同じではありません。ただし年度による振れ幅の大きさそのものが、ホタテ漁師の収入が水揚げ高・浜値・輸出動向によって大きく上下する歩合制の実態を映し出しているといえます。「年収3,000万円」という紹介のされ方だけを見ると実態を見誤りやすい部分で、禁輸が続く局面では当然、個々の漁師の歩合収入も圧迫されやすくなります。

なぜ輸出問題が漁師個人の収入に直結するのか

ホタテの桁上げ漁業者の多くは、水揚げ高から経費を差し引いた金額を組合の配分ルールに沿って受け取る歩合制、あるいは水揚げ実績に応じた増産手当・配当金を組み合わせた給与体系で収入を得ています。輸出先の中国市場が閉ざされると、浜値(漁協が買い取る単価)が下落しやすくなるほか、国内加工やアメリカ・東南アジア向けなど代替輸出先の開拓にもコストと時間がかかります。北海道のホタテ養殖の仕組みと輸出先転換の詳細はホタテ養殖の仕組みとは?陸奥湾93%死の危機と再生の道【2026年】でも触れているので、養殖側の事情まで知りたい方は参考にしてください。

カニ漁・サケ漁(定置網)の年収との違い

北海道では、ホタテ以外にもカニ漁やサケの定置網漁が「稼げる漁業」として知られています。ただし、年収の構造はそれぞれ異なります。

カニ漁(かご漁・沖合底びき網)は日本近海でおおむね500万〜800万円、遠洋では800万〜1,500万円程度という求人・メディア情報がありますが、漁期が11月〜3月頃の冬季に集中する期間限定の仕事です。歩合制の詳しい仕組みや好不漁による差についてはカニ漁師の年収はいくら?歩合制の仕組みと好不漁の差を解説で解説しています。

サケの定置網漁は秋季(9〜11月頃)に漁期が集中する季節雇用が中心で、乗組員は固定給+歩合という給与体系が一般的です。ホタテやカニのように年収1,000万円級の求人情報は多くありませんが、漁期中の短期集中型の働き方という点ではカニ漁と共通しています。いずれの漁法も「年間を通じた安定収入」ではなく「漁期中にどれだけ稼げるか」という視点で年収を捉える必要がある点は共通しています。

北海道で漁師を目指すなら知っておきたい支援制度

北海道は新規就漁者への支援が全国でも手厚い地域です。東京23区在住・通勤者を対象とした「UIJターン新規就業支援事業」では、国・道・市町村が共同で移住支援金を支給しており、世帯で移住する場合は最大100万円、単身の場合は最大60万円が目安とされています(子どもの人数に応じた加算制度もありますが、金額や要件は年度・自治体によって変わるため、応募前に北海道庁または移住先市町村の窓口で最新の条件を確認してください)。

出典: 北海道庁「UIJターン新規就業支援事業」(確認日2026-10-02)

このほか、北海道漁業研修所での技術研修や、漁師.jp(全国漁業就業者確保育成センター)を通じた求人紹介なども利用できます。求人の具体的な探し方、寮完備求人の実態、地域別の支援制度の詳細は北海道漁師求人2026年版|地域別年収・漁種・移住支援を解説と北海道の漁師求人で住み込みは?寮の実態と漁期別探し方にまとめているので、転職を具体的に検討している方はあわせて確認してください。

北海道の漁師の年収に関するよくある質問

Q1: 北海道の漁師の年収は本当に全国平均より高いのですか?

求人情報ベースで見ると、北海道の漁師求人は年収350万〜530万円程度のものが多く、全国の沿岸漁船漁業の漁労所得(219万円、令和5年)と比べると高めの水準にあります。ただしこれは雇用される乗組員の求人相場であり、個人経営のホタテ漁師などは好不漁や輸出動向によって年による差がそれ以上に大きくなります。

Q2: ホタテ漁師は中国禁輸が続く今でも稼げますか?

2025年11月に一度は輸出が再開されたものの、同月中に新規輸出申請が事実上凍結された状態が続いており、対中輸出は正常化していません(2026年10月時点)。国内加工や他国向け輸出への転換が進められていますが、浜値への影響は避けられず、「禁輸前と同水準で稼げる」とは言い切れない状況です。

Q3: 北海道のどの地域の漁師が一番稼げますか?

一概には言えません。ホタテ養殖が盛んなオホーツク海側は好調な年の所得水準が高い一方、国際情勢の影響を最も受けやすい海域でもあります。安定性を重視するなら、大型船の乗組員求人が多い太平洋側(釧路・根室)も選択肢になります。年収だけでなく、漁期の長さやリスクの許容度も踏まえて選ぶことが重要です。

まとめ:北海道の漁師の年収は「海域」と「外的要因」で見る

  • 全国の沿岸漁船漁業の漁労所得は219万円(令和5年)だが、北海道の漁師求人は年収350万〜530万円程度のものが多い(2026年10月時点)
  • オホーツク海側のホタテ漁は好調時の所得水準が高い一方、中国禁輸・輸出再開・再凍結という国際情勢の影響を最も受けやすい
  • 猿払村の平均所得は2021年441万円から2023年873万円まで年度によって大きく変動しており、「年収3,000万円」という紹介のされ方だけでは実態を見誤りやすい
  • カニ漁・サケ定置網漁も歩合制・季節限定型という点はホタテと共通するが、漁期や給与体系の重心は異なる
  • 北海道にはUIJターン移住支援金など手厚い支援制度があるが、具体的な金額・要件は必ず最新情報を確認する

北海道で漁師を目指すなら、年収の「幅」の大きさとその背景にある外的要因まで理解したうえで判断することをおすすめします。まずは北海道漁師求人2026年版|地域別年収・漁種・移住支援を解説で具体的な求人の探し方を確認し、漁師という仕事全体の始め方を知りたい方は漁師になるには?未経験からの具体的な手順と年収を徹底解説もあわせて読んでみてください。水産業界全体の最新データは水産業界の統計まとめページで定期更新しています。

参考情報

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。

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