最終更新: 2026-09-19
水産業がさかんな地域を産出額で見ると、全国トップは北海道、次いで長崎県、愛媛県、宮城県、鹿児島県の順になる(農林水産省「令和4年漁業産出額」)。ただし「さかんな地域」の基準を漁獲量にするか、養殖業の産出額にするか、魚種別の産地シェアにするかによって、上位に入る顔ぶれは変わってくる。
この記事では、社会科の授業で扱われるような一般論ではなく、水産業界を目指す人や現役の漁業関係者が知りたい「具体的にどこが、何の分野で強いのか」を、公的統計データに基づいて整理する。移住や転職の候補地を探している人にとっても、地域選びの判断材料になるはずだ。
水産業がさかんな地域とは?何を基準に見るかで変わる

「水産業がさかんな地域」という言葉には、実は複数の見方がある。
| 基準 | 何を表すか | 代表的な地域 |
|---|---|---|
| 漁業・養殖業産出額 | 漁獲物・養殖物を金額換算した生産規模 | 北海道、長崎、愛媛 |
| 漁獲量(トン数) | 海で獲れた魚介類の重量 | 北海道、茨城、長崎 |
| 養殖業の産出額 | 魚類・貝類・海藻類の養殖生産の規模 | 鹿児島、広島、愛媛 |
| 漁業経営体数 | 漁業を営む個人・法人の数 | 北海道、長崎、宮城 |
金額ベースで見るか、量ベースで見るかによって順位が入れ替わるのは、単価が高い魚種(マグロ類やブリ類など)を扱う地域と、大量に水揚げする多獲性魚種(サバ・イワシなど)中心の地域とで、産出額と漁獲量の伸び方が違うためだ。以下では、それぞれの基準で具体的な数字を見ていく。
都道府県別 漁業・養殖業産出額ランキング

まず、水産業の生産規模を最も総合的に示す「漁業・養殖業産出額」の都道府県別ランキングを見てみよう。
| 順位 | 都道府県 | 産出額(令和4年) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 北海道 | 3,135億円 | 22.1%増 |
| 2位 | 長崎県 | 1,109億円 | 18.4%増 |
| 3位 | 愛媛県 | 979億円 | 15.2%増 |
| 4位 | 宮城県 | 922億円 | 40.8%増 |
| 5位 | 鹿児島県 | 770億円 | 16.9%増 |
出典: 農林水産省「令和4年漁業産出額」
北海道は漁獲量・養殖生産量とも全国トップで、サケ・スケトウダラ・ホタテガイなど魚種の幅も広い。長崎県は日本有数の好漁場である東シナ海・五島列島沖に面し、まき網漁業や養殖業(マグロ類、ブリ類)が盛んだ。愛媛県は宇和海を中心にマダイ・ブリ類の養殖生産量が全国トップクラスで、養殖だけで産出額の大部分を占める。宮城県は東日本大震災からの水産業復興が進み、カキ・ワカメなどの養殖業と沖合漁業の両方で高い産出額を維持している。
なお、漁獲量(重量)ベースで見ると、令和2年の統計では北海道989.0千トン、茨城県302.3千トン、長崎県251.1千トン、宮城県250.1千トン、静岡県186.5千トンの順となり、茨城県や静岡県のように大型まき網漁業でイワシ・サバ類を大量に水揚げする地域が上位に入ってくる(産出額ランキングとの違いに注意)。
魚種別に見る「地域の得意分野」

「水産業がさかんな地域」を1つのランキングだけで語るのは実は不十分だ。養殖業では魚種ごとに産地が大きく偏っており、それぞれの地域が異なる強みを持っている。
| 魚種 | 産出額1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| ぶり類(ハマチ・カンパチ含む養殖) | 鹿児島県 | 愛媛県 | 大分県 |
| まだい(養殖) | 愛媛県 | 熊本県 | 高知県 |
| かき類(養殖) | 広島県 | 岡山県 | 宮城県 |
| ほたてがい(養殖) | 北海道 | 青森県 | 宮城県 |
出典: 農林水産省「令和2年漁業産出額」主要魚種別海面養殖業産出額(e-Stat 統計表ID: 0002001226)
このデータからわかるのは、鹿児島・大分がぶり類養殖の「南の産地」、北海道・青森がほたてがい養殖の「北の産地」というように、水温や海流条件に応じて養殖適地がはっきり分かれているという点だ。広島県のかき類のように、1県で全国シェアの半分近くを占めるような極端な集中も珍しくない。水産業界での就職・転職を考える際は、都道府県単位だけでなく「その地域がどの魚種に強いか」まで見ておくと、志望する養殖業者や漁協の実態がイメージしやすくなる。
なぜこれらの地域で水産業が発展したのか

上位地域に共通する条件を整理すると、大きく3つの要因が見えてくる。
1. 海流・水温などの地理的条件
北海道周辺は親潮と対馬暖流がぶつかる好漁場で、冷水性の魚種(サケ・スケトウダラ・ホタテガイ)の生育に適している。一方、愛媛・鹿児島など西日本の養殖地帯は、黒潮の影響で水温が安定しており、マダイ・ブリ類など温暖な海域を好む魚種の養殖に向いている。
2. 港湾・漁港インフラの集積
長崎県には全国有数の水揚げ量を誇る漁港が複数あり、まき網船団の基地としての機能が整っている。水揚げから加工・流通までを地域内で完結できるインフラの集積は、産出額を押し上げる要因になる。
3. 養殖技術と漁業協同組合の産地戦略
愛媛県や広島県では、漁業協同組合や県の水産試験場が中心となって養殖技術の改良やブランド化(宇和島産ブリ、広島かきなど)を進めてきた歴史がある。単に海の条件が良いだけでなく、地域ぐるみで品質・ブランドを磨いてきたことが、産出額の高さに直結している。
水産業がさかんな地域で働く・暮らすことを考えるなら
水産業がさかんな地域は、そのまま「漁業・養殖業の求人が多い地域」でもある。実際に移住や転職を検討する場合は、地域ごとの支援制度や求人の実態を事前に調べておく必要がある。
北海道への移住や漁師求人については、水産業がさかんな北海道の特徴と漁業の仕事や漁師求人 北海道|未経験からの応募条件と生活情報で詳しく解説している。産地を問わず漁村への移住全般を検討している場合は、漁村移住ガイド|支援金・手続き・失敗しない7つの秘訣や漁師の移住支援制度まとめも参考になる。
なお、地域単位ではなく水産業界の企業規模で比較したい場合は、水産業界ランキング|売上・年収・セグメント別に主要企業を比較、養殖ビジネスに特化した企業を知りたい場合は水産養殖企業一覧|主要プレイヤーとビジネスモデルもあわせて確認してほしい。
よくある質問
Q1. 水産業がさかんな都道府県を1つだけ挙げるならどこですか?
漁業・養殖業産出額、漁獲量のいずれで見ても北海道が全国1位です(農林水産省「令和4年漁業産出額」、東京都「漁業の盛んな都道府県ランキング」)。魚種の幅広さと生産規模の大きさの両方で他県を上回っています。
Q2. 養殖業が特にさかんな地域はどこですか?
魚種によって異なります。ぶり類は鹿児島県、まだいは愛媛県、かき類は広島県、ほたてがいは北海道がそれぞれ産出額トップです(農林水産省「令和2年漁業産出額」)。
Q3. 水産業がさかんな地域は今後も安定していますか?
2023年漁業センサス(概数値)によると、全国の海面漁業経営体数は6万5,652経営体で、5年前と比べて17.0%減少しています。産出額上位の地域でも担い手不足は共通の課題であり、新規就業者の受け入れ体制や移住支援に力を入れる自治体が増えています。
関連記事: 漁師の燃料代はいくら?経費に占める割合となぜ高いのか、高騰対策まで解説
関連記事: 不漁の原因は海水温?近海で魚が獲れなくなった理由を解説
まとめ:地域選びは「金額」「量」「魚種」の3つの物差しで見る
- 産出額でみる水産業がさかんな地域は北海道・長崎・愛媛・宮城・鹿児島の順(令和4年)
- 漁獲量(重量)でみると茨城・静岡など多獲性魚種の水揚げが多い地域が上位に入る
- 養殖業は魚種ごとに産地が偏っており、ぶり類は鹿児島、まだいは愛媛、かき類は広島、ほたてがいは北海道が特に強い
- 産地の強さは海流・水温などの地理的条件と、漁協・自治体による長年のブランド化戦略の両方に支えられている
移住や転職の候補地として水産業がさかんな地域を検討する場合は、金額や漁獲量のランキングだけでなく、その地域がどの魚種・どの分野に強いのかまで確認しておくと、就業後のミスマッチを減らせる。具体的な移住支援制度や求人情報は、上で紹介した関連記事もあわせて確認してほしい。水産業界全体の統計データは水産業界の統計まとめページでも定期更新している。
参考情報
- 農林水産省「令和4年漁業産出額」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/gyosan/r4/)2026年9月確認
- 農林水産省「漁業産出額 確報 令和2年漁業産出額」主要魚種別海面養殖業産出額(e-Stat 統計表ID: 0002001226、https://www.e-stat.go.jp/)2026年9月確認
- 東京都「漁業の盛んな都道府県ランキングトップ5|国内の水産業の生産量と生産額」(https://sakana.metro.tokyo.lg.jp/materials/trend02.html)2026年9月確認、農林水産省統計(令和2年)を東京都が集計
- 農林水産省「2023年漁業センサス結果の概要(概数値)」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/gyocen/2023/)2026年9月確認


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