最終更新: 2026-10-12
世界三大珍味のひとつ「キャビア」。その原料となるチョウザメの卵は、実は日本国内でも養殖されている。2026年10月10日には岩手県大船渡市で、新しい国産キャビア「三陸キャビア 大船渡のしずく」のお披露目会が開かれたと報じられた。
本記事では、このニュースを起点に、チョウザメ養殖の仕組み、国内で採用されている「アクアポニックス」という技術、キャビア収穫までにかかる年数、岩手県での養殖の歴史を解説する。
チョウザメとは?キャビアになる魚の基本

チョウザメは「サメ」という名前がついているが、軟骨魚類のサメ(鮫)とは系統が異なる硬骨魚類で、見た目の体型や吻(ふん)の形がサメに似ていることから名付けられた。世界に約25種が知られ、成熟するまでに数年〜十数年かかる長命な魚とされる。
メスが持つ卵を塩漬け加工したものがキャビアで、成熟までの年数が長いことに加え、野生個体群の減少(ワシントン条約での国際取引規制)もあり、養殖によるキャビア生産の重要性が増している。
大船渡市のアクアポニックス施設「三陸キャビア 大船渡のしずく」

下水処理場の空きスペースを活用
大船渡市は下水処理施設「大船渡浄化センター」の未利用地を有効活用するため、施設の包括運営を担う事業者の関連3社が設立した「テツゲンメタウォーターアクアアグリ」(資本金1億円、テツゲン60%・メタウォーター37%・プラントフォーム3%出資)に土地を貸与し、2021年末ごろから施設整備が進められた。
温室4棟・計約2,000平方メートルの規模で、報道時点ではチョウザメ約2,500匹を9つの水槽で飼育しているとされ、国内最大規模のアクアポニックス施設とも報じられている。
アクアポニックスの仕組み
アクアポニックスとは、魚の養殖(アクアカルチャー)と植物の水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせた循環型の生産方式だ。チョウザメの排泄物を含む水をろ過・循環させて肥料として利用し、レタスやケールなど無農薬の葉物野菜を育てる。水を廃棄しないため、通常の養殖や農業に比べて環境負荷を抑えられる点が特徴とされる。
育てられた野菜は岩手県内のスーパーや道の駅などで販売されており、チョウザメ養殖と野菜生産を組み合わせることで事業全体の採算性を高める狙いがあるとみられる。
キャビア収穫までは1〜2年
報道によると、施設で飼育されているチョウザメからのキャビア収穫は、今後1〜2年程度を見込んでいるとされる。チョウザメは成熟が遅い魚であり、商品化までの期間の長さが養殖事業特有の課題であることがうかがえる。
岩手県とチョウザメ養殖の歴史

岩手県では、チョウザメ養殖そのものは今回が初めてではない。岩手県釜石市では、新日鉄釜石工場の敷地を利用して「釜石キャビア株式会社」がチョウザメ養殖を手がけてきた歴史があり、2007年7月には地元有志が中心となって事業を再スタートさせた。人工ふ化から卵を持つまでに8年程度を要するとされ、安定収穫には長い年月がかかる点は共通している。
今回の大船渡市のプロジェクトは、こうした岩手県内での養殖の歴史に、アクアポニックスという新しい循環型技術を組み合わせた取り組みという位置づけになる。朝日新聞の報道では「震災で途絶えた三陸産キャビア 復活」として紹介されており、東日本大震災の影響で停滞していた三陸地域のキャビア生産の機運が、新技術によって再び動き出した事例として注目されている。
チョウザメ養殖は国内でどこで行われている?

チョウザメ養殖は岩手県以外にも、宮崎県(都農町など)や北海道(美深町)、茨城県など各地で取り組みが進んでいる。地域ごとに清冽な水資源や既存の養殖技術を活かし、「国産キャビア」のブランド化を目指す動きが広がっている。
世界的に見ると、チョウザメの漁獲・養殖生産量は中国が圧倒的に多く、2024年時点で16万トンを超えるとされる(GLOBAL NOTE調べ)。日本国内の生産量はこれと比べれば小規模だが、地域活性化と結びついた養殖プロジェクトとして各地で広がりを見せている。
チョウザメ養殖に関するよくある質問(FAQ)
Q1. チョウザメ養殖からキャビアが取れるまでどのくらいかかりますか?
A. 大船渡市のプロジェクトでは1〜2年程度を見込んでいると報じられている。岩手県釜石市の事例では人工ふ化から卵を持つまで8年程度を要したとされ、個体の成熟速度や飼育条件によって差がある。
Q2. アクアポニックスとは何ですか?
A. 魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせた循環型の生産方式。魚の排泄物を含む水をろ過して肥料として利用し、野菜を無農薬で育てる。水を廃棄しないため環境負荷を抑えられるとされる。
Q3. 岩手県でチョウザメ養殖が行われるのは今回が初めてですか?
A. いいえ。岩手県釜石市では「釜石キャビア株式会社」が新日鉄釜石工場の敷地を利用して養殖を手がけてきた歴史があり、2007年に地元有志により事業が再スタートしている。
Q4. 日本以外でチョウザメ養殖が多い国はどこですか?
A. GLOBAL NOTE(1985〜2024年集計)によると中国が最大で、2024年時点で16万トンを超える生産量とされる。
関連記事: アサリの陸上飼育とは?熊本・長洲町の実証実験と資源減少の実態
まとめ:循環型技術が広げる国産キャビアの可能性
チョウザメ養殖についてのポイントを整理する。
- 2026年10月10日、岩手県大船渡市で新しい国産キャビア「三陸キャビア 大船渡のしずく」のお披露目会が開かれたと報じられた
- 運営する「テツゲンメタウォーターアクアアグリ」は下水処理場の未利用地を活用し、アクアポニックス(魚の排泄物を肥料にした野菜栽培との組み合わせ)という循環型技術を採用
- チョウザメ約2,500匹を9水槽で飼育し、キャビア収穫までは1〜2年を見込む
- 岩手県釜石市には新日鉄釜石工場の敷地を活用した養殖の歴史もあり、今回のプロジェクトはその延長線上にある取り組みといえる
チョウザメ養殖は、長い成熟期間という課題を抱えながらも、環境負荷の低い循環型技術と組み合わせることで、地域活性化の新しい事業モデルとして広がりを見せている。陸上養殖全体の仕組みに関心がある方は陸上養殖のメリット・デメリット|仕組み・費用・将来性を徹底解説もあわせてご覧ください。
参考情報
- お披露目会の報道(確認日2026年10月):震災で途絶えた三陸産キャビア 復活(朝日新聞)|dメニューニュース
- アクアポニックス施設の運営会社・規模・経緯(確認日2026年10月):魚と野菜を育て地域経済を潤す循環型農法、アクアポニックス設備が大船渡で始動|ニュースイッチ(日刊工業新聞社)、下水処理場の空きスペースでチョウザメ養殖 大船渡市、民間に貸与|河北新報
- 飼育数・水槽数・キャビア収穫見込み(確認日2026年10月):人と環境に優しい大船渡市の新事業|テレいわ屋(テレビ岩手)
- 岩手県釜石市の養殖の歴史(確認日2026年10月):東京シェフズ掲載の釜石キャビアの読み物から
- 世界のチョウザメ生産量ランキング(確認日2026年10月):世界のチョウザメの漁獲量・生産量 国別ランキング・推移|GLOBAL NOTE
- 関連記事:陸上養殖のメリット・デメリット|仕組み・費用・将来性を徹底解説


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