アサリの陸上飼育とは?熊本・長洲町の実証実験と資源減少の実態

アサリの陸上飼育とは?熊本・長洲町の実証実験と資源減少の実態 養殖

最終更新: 2026-10-15

熊本県長洲町で、大林組・味の素・熊本北部漁業協同組合・西日本工業大学が、アサリの稚貝を陸上の水槽で育てる実証試験を2026年10月14日に発表した。全国的にアサリの漁獲量が長期的に減少を続けるなか、味の素の工場から出る副生液を使って餌代を10分の1程度に抑える技術で、2028年度までに飼育技術を確立し、将来的な商業化を目指す取り組みだ。この記事では、実証試験の仕組みとスケジュール、アサリ資源が減少してきた背景を整理する。

実証試験の概要:誰が、どこで、何を始めたのか

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項目 内容
場所 熊本県玉名郡長洲町(有明海沿岸)
関係者 大林組、味の素(九州事業所)、熊本北部漁業協同組合、西日本工業大学
開始 2026年夏から飼育を開始、2026年10月14日に試験施設を公開・発表
目的 アサリの稚貝を陸上の水槽で育て、資源回復と養殖の実用化につなげる
今後の計画 2028年度までに飼育技術を確立し、他地域・他の二枚貝への展開を目指す

長洲町は有明海に面した伝統的なアサリの産地で、大林組と味の素は2025年に協定を締結し、熊本北部漁業協同組合・西日本工業大学と共同でこの実証試験を進めている(日本経済新聞・PR TIMES、確認日2026年10月15日)。

どういう仕組みか:味の素工場の副生液で餌代を10分の1に

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今回の実証試験の特徴は、珪藻(ケイ藻)を培養する水槽とアサリを飼育する水槽を組み合わせた屋外設備にある。餌となる珪藻を育てる際、味の素九州事業所の製造工程で生じる「副生液」(窒素分を多く含む液体)を栄養材として活用する。これにより、珪藻のみで餌を用意する場合と比べて餌料費を10分の1程度まで低減できる見込みだという(日本経済新聞・PR TIMES、確認日2026年10月15日)。米ぬかなど他の循環資源も代替餌料として組み合わせる計画で、コストを抑えながら安定的に餌を確保できる体制を目指している。

アサリは成長するまでに3年程度を要するため、資源が一度減少すると回復に長い時間がかかる。陸上の水槽で稚貝を育てて資源を補う今回のような手法は、全国的にも珍しい取り組みとされる(KAB熊本放送・RKK熊本放送、確認日2026年10月15日)。

なぜ今、陸上飼育が必要なのか:アサリ漁獲量の長期的な減少

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今回の実証試験の背景には、全国的なアサリ漁獲量の深刻な減少がある。農林水産省の海面漁業生産統計調査(2023年)によると、全国のアサリ類漁獲量は1983年に約16万トンでピークを迎えた後、長期的な減少傾向が続いており、2023年には約5,500トンまで落ち込んでいる(確認日2026年10月15日)。

長洲町周辺の有明海でも、夏場の高水温や豪雨による淡水の流入がアサリの生育に影響しているとみられ、熊本北部漁業協同組合にとっても資源の確保が課題になっている(TKUテレビ熊本・日本経済新聞、確認日2026年10月15日)。海水温の上昇という環境要因は、赤潮と養殖業への対策で取り上げた養殖現場の課題とも共通する部分がある。

陸上養殖という選択肢:メリットと課題

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海面での漁業に頼らず、陸上の設備でアサリを育てるという発想は、気象条件や海水温の影響を受けにくくできる点が利点とされる。一方で、設備投資や餌料費などのコストが課題になりやすく、今回の実証試験もその餌料費を抑える工夫が核心にある。陸上養殖全般の仕組み・費用・メリットとデメリットについては陸上養殖のメリット・デメリットで詳しく解説している。

今後の見通し:2028年度の技術確立を目指すが商業化の時期は未定

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大林組は2028年度までに飼育技術を確立し、その後は長洲町以外の地域や、アサリ以外の二枚貝への展開も目指す方針を示している(日本経済新聞、確認日2026年10月15日)。一方、大林組自身のプレスリリースでは「本実証を通じて実用化に向けた課題を抽出し、その解決策を検討する」とされているのみで、商業規模での生産開始の具体的な時期までは明らかにされていない(PR TIMES・財経新聞、確認日2026年10月15日)。

水産ナビでは、養殖業界の技術動向について陸上養殖のメリット・デメリットや赤潮と養殖業への対策でも取り上げている。水産業界全体の統計データは水産業界の統計まとめで定期更新している。

アサリの陸上飼育に関するよくある質問

Q1: アサリの陸上飼育はすでに商業化されているのか

いいえ、2026年10月時点では実証試験の段階であり、商業規模での生産は始まっていない。大林組は2028年度までに技術を確立する計画を示しているが、実用化に向けた課題の抽出が現在の段階だ。

Q2: 餌代を10分の1に抑えられるのはなぜか

味の素九州事業所の製造工程で出る副生液(窒素分を多く含む液体)を、アサリの餌となる珪藻の栄養材として活用しているため。珪藻のみで餌を用意する場合と比べてコストを大きく抑えられる見込みだ。

Q3: なぜ熊本県長洲町でアサリの陸上飼育が始まったのか

長洲町は有明海に面した伝統的なアサリの産地だが、夏場の高水温や豪雨による淡水流入などの影響で資源の確保が課題になっている。全国的にもアサリ漁獲量が長期的に減少しているなか、資源回復と養殖の実用化を目指して始まった取り組みだ。

まとめ:アサリ陸上飼育のポイント

  • 熊本県長洲町で大林組・味の素・熊本北部漁業協同組合・西日本工業大学が2026年夏からアサリの陸上飼育実証試験を開始
  • 味の素工場の副生液を珪藻の栄養材に活用し、餌料費を10分の1程度に低減する見込み
  • 全国のアサリ漁獲量は1983年の約16万トンから2023年には約5,500トンまで減少しており、資源回復が課題
  • 2028年度までに飼育技術を確立し、他地域・他の二枚貝への展開を目指す。商業化はまだ先の段階

参考情報

  • アサリ陸上飼育の実証試験を熊本県長洲町で開始(株式会社大林組 プレスリリース、PR TIMES、確認日2026年10月15日):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000174.000118168.html
  • アサリ陸上飼育の実証試験を熊本県長洲町で開始(株式会社大林組 プレスリリース、財経新聞、確認日2026年10月15日):https://www.zaikei.co.jp/releases/3662242/
  • 大林組が熊本でアサリ陸上飼育 味の素と実証、餌代10分の1に(日本経済新聞、確認日2026年10月15日):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC143WU0U6A011C2000000/
  • 資源回復へ 産学官で県産アサリ稚貝を陸上で飼育 試験施設公開【熊本】(TKUテレビ熊本、Yahoo!ニュース配信、確認日2026年10月15日):https://news.yahoo.co.jp/articles/c0020fa18e0e05aced94cc50c14a01a630f312b2
  • 海水温の上昇からアサリを守る!陸上養殖の実証実験 官民連携でエサのコスト軽減にも(KAB熊本放送、Yahoo!ニュース配信、確認日2026年10月15日):https://news.yahoo.co.jp/articles/53fc4ed3feb52caa5394ec957cf8e3dbc491cffc
  • 高水温からアサリを守れ! 全国的にも珍しい「陸上飼育」実証実験スタート 熊本・有明海(RKK熊本放送、Yahoo!ニュース配信、確認日2026年10月15日):https://news.yahoo.co.jp/articles/95eb4dd32185c2c764f50429ab9fc53807d2871f
  • アサリ類の漁獲量推移(農林水産省 海面漁業生産統計調査のデータをもとにした集計、2023年時点データ、確認日2026年10月15日):https://ieben.net/data/catch/sea-catch/japan-tdfk/kai-asari.html




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