大アサリ養殖とは?篠島で進む漁師とゼネコンの新技術連携を解説

大アサリ養殖とは?篠島で進む漁師とゼネコンの新技術連携を解説 養殖

最終更新: 2026-10-26

愛知県篠島(南知多町)で、漁師と大手ゼネコン・大林組が連携して大アサリ(標準和名ウチムラサキ)の養殖試験を進めている。2021年に始まったこの試験で、2026年春に稚貝が過去最高の獲れ高を記録し、6〜7センチの食用サイズまで育った個体も確認された(中日新聞Web、確認日2026年10月26日)。本記事では、大アサリの基本、篠島で使われている網袋を使った自然採苗の仕組み、漁師とゼネコンが手を組んだ背景を整理する。

大アサリ(ウチムラサキ)とは?まず基本を整理

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「大アサリ」は標準和名ではなく、各地で使われる通称だ。愛知県師崎(南知多町、篠島周辺)や千葉県、三重県の志摩・鳥羽・伊勢などでは、マルスダレガイ科の二枚貝「ウチムラサキ(内紫)」を「大アサリ(オオアサリ)」と呼ぶ(市場魚貝類図鑑、確認日2026年10月26日)。貝殻を開いた際に内側が紫色をしていることが名前の由来とされる。

注意したいのは、スーパーなどで売られている一般的な「あさり」(標準和名アサリ、マルスダレガイ科)とは別種である点だ。ウチムラサキはアサリよりも殻長が大きく、浜焼きなどで提供される際の呼び名が「大アサリ」であるため混同されやすいが、分類上は異なる貝として扱われている。

愛知県・三重県の伊勢湾・三河湾沿岸はウチムラサキの主要産地として知られ、篠島もその一つだ。

篠島で何が起きているのか:稚貝の大量回収というニュース

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2026年10月、篠島漁協青年部が取り組む大アサリ養殖試験で、稚貝が大量に回収されたことがCBCテレビの取材で報じられた(Yahoo!ニュース配信、確認日2026年10月26日)。中日新聞の報道によれば、約1年前に沈めた稚貝回収用の網袋から「過去最高の獲れ高」の稚貝が見つかり、2026年5月下旬時点では6〜7センチの食用サイズまで育った個体も確認されている(中日新聞Web、確認日2026年10月26日)。

この試験は2021年に始まったもので、篠島漁協青年部長を務める石橋諒さん(38歳)が中心となって取り組んでいる(中日新聞Web、確認日2026年10月26日)。

大アサリ養殖の技術的な仕組み:網袋と漁礁による自然採苗

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篠島で使われている技術は、人工的に卵から育てる「人工種苗」ではなく、海中に自然に浮遊するウチムラサキの幼生を網袋で捕まえて育てる「自然採苗」の方法だ。大林組の公開情報によると、同社は篠島の取り組みで「稚貝回収・中間養殖」と「漁礁の設置」を担っている(大林組公式サイト、確認日2026年10月26日)。

工程 内容
採苗 砂利などを入れた網袋を海中に設置し、二枚貝の幼生が自然に入り込み着底しやすい環境を整える
回収 数カ月後に網袋を回収し、成長した稚貝を取り出す。小さい貝はそのまま袋に戻して育成を続ける
中間育成 回収した稚貝をカゴなどで海中に吊り下げ、保護しながら育てる
保護 コンクリート製の漁礁を設置し、稚貝を捕食する魚から守る
成長の目安 採苗から約1年半で殻長7センチ程度。最終的に10センチ程度まで育てて海に放流する(CBCテレビの取材より)

篠島漁協青年部は「放流は今まで(他の地域では)やっていない。自分たちで稚貝をとって、それを育てて放流するというのは、どの地域でもやっていない」と述べている(CBCテレビ、Yahoo!ニュース配信、確認日2026年10月26日)。稚貝を自分たちで確保し中間育成してから放流する一連の流れを地域で完結させている点が、この取り組みの独自性だ。

なぜ漁師と大手ゼネコンが手を組むのか:背景と双方の狙い

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篠島はシラス漁が主産業の島だが、2017年8月に発生した黒潮大蛇行が長期化し、中日新聞の報道(2026年5月下旬時点)では7年9カ月にわたって続いたとされる。この影響でシラスの漁獲量は例年の10分の1まで落ち込み、漁師の4割が海を離れたという(中日新聞Web、確認日2026年10月26日)。

この苦境を受け、篠島漁協青年部は2021年から大アサリの養殖試験を始めた。協力相手として名乗りを上げたのが大手ゼネコンの大林組だ。大林組は公式サイトで、篠島での取り組みを「藻場づくりや海藻の育成に関する研究・実証」「稚貝回収・中間養殖」「漁礁の設置」と説明しており、海洋環境を再生することでCO2を吸収する「ブルーカーボン」事業への参入を目的の一つとしている(大林組公式サイト、確認日2026年10月26日)。

一方、篠島漁協側にとっては、シラス漁に代わる新たな収入源の確立と、島の持続可能性を保つことが狙いだ。建設業の技術・資材(網袋、コンクリート漁礁など)を漁業に応用する異業種連携という点が、今回の取り組みの特徴になっている。

なお、大林組は熊本県長洲町でも、味の素・熊本北部漁業協同組合・西日本工業大学と組んでアサリ(標準和名アサリ)の陸上飼育の実証試験を進めている。こちらは工場の副生液を使って陸上の水槽で育てる技術で、対象の貝も場所も技術も篠島とは異なる。詳しくはアサリの陸上飼育とは?熊本・長洲町の実証実験と資源減少の実態で解説している。同じゼネコンが複数の地域で異なる二枚貝の資源対策に関わっていることがわかる。

全国初になるか?今後の商業化に向けた課題

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中日新聞は、篠島の大アサリ養殖について「生産が安定し、商業化できれば全国初とみられる」と報じている(中日新聞Web、確認日2026年10月26日)。つまり現時点ではまだ商業化前の試験段階であり、「全国初の事例になる可能性がある」という見通しに留まる。

2026年春の稚貝大量回収は試験開始から5年目での成果であり、網袋を使った採苗方法が一定の再現性を持つ段階に入ったことを示すものと言える。ただし、食用サイズまで育った個体数や、安定した出荷体制が整っているかどうかについては、現時点で公開されている報道からは確認できていない。

稚貝の放流から出荷までを地域で完結させるこの仕組みは、稚魚・稚貝を育てて放流し、その後の成長を自然に委ねる「栽培漁業」の考え方に近い側面もある。栽培漁業と養殖業の違いについては増養殖とは?栽培漁業のしくみと対象魚種、養殖業との違いを解説で整理しているので、あわせて参照してほしい。

大アサリ養殖を全国の貝類養殖の中でどう位置づけるか

農林水産省「漁業産出額」確報(令和2年)によると、全国の海面養殖業における貝類全体の産出額は約572億円(ほたてがい約242億円、かき類約324億円など)となっている。ただし、この統計の品目区分に「大アサリ(ウチムラサキ)」という個別項目はなく、仮に含まれるとすれば「その他の貝類」(全国で約6億円)に分類される可能性があるが、公開データからはウチムラサキ単体の産出額は確認できない。篠島の取り組みはまだ試験段階であり、国の統計に単独の品目として現れるほどの規模には達していないとみられる。

大アサリ養殖に関するよくある質問

Q1: 大アサリとあさりは同じ貝なのか

いいえ、別の貝だ。「大アサリ」は標準和名ウチムラサキの通称で、スーパーなどで売られる一般的な「あさり」(標準和名アサリ)とは分類上別の種になる。愛知県や三重県、千葉県など一部地域でウチムラサキを「大アサリ」と呼ぶ慣習があるため、名前が似ていて混同されやすい。

Q2: 篠島の大アサリ養殖はすでに商業化されているのか

2026年10月時点の報道では、商業化できれば全国初とみられるという位置づけで、まだ試験段階にある。2026年春に稚貝の大量回収という成果が出たものの、安定した出荷体制が整ったという報道は確認できていない。

Q3: なぜ建設会社(大林組)が漁業に協力しているのか

大林組は篠島での取り組みを通じて、藻場づくりや稚貝回収・中間養殖、漁礁の設置といった海洋環境の再生に関わり、CO2を吸収する「ブルーカーボン」事業への参入を目指している。漁師側はシラス漁の不振を補う新たな収入源の確立を目的としており、双方の狙いが一致した連携といえる。

まとめ:篠島の大アサリ養殖のポイント

  • 「大アサリ」は標準和名ウチムラサキの通称で、一般的な「あさり」(標準和名アサリ)とは別種
  • 篠島(愛知県南知多町)では2021年から、網袋を使って海中の幼生を自然採苗する方法でウチムラサキを養殖する試験が進んでいる
  • 2026年春、網袋から過去最高の稚貝回収を記録し、6〜7センチの食用サイズまで育った個体も確認された
  • 黒潮大蛇行によるシラス不振を背景に、篠島漁協青年部と大手ゼネコン・大林組が連携。大林組はブルーカーボン事業への参入を、漁協は新たな収入源の確立を狙っている
  • 商業化できれば全国初とみられるが、2026年10月時点ではまだ試験段階

稚貝の大量回収が安定した出荷につながるかどうか、今後の報道にも注目したい。

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