漁師の年収はなぜ低いと言われる?平均219万円の実態と対策

漁師の年収はなぜ低いと言われる?平均219万円の実態と対策 水産キャリア

最終更新: 2026-10-02

結論から言うと、「漁師の年収は低い」という話は統計上まったくの間違いではありません。水産庁の調査では、沿岸漁船漁業を営む個人経営体の平均漁労所得は2023年度で219万円にとどまります。ただし同じ統計の中でも、65歳未満で漁業を中心に営む経営体に絞ると703万円まで跳ね上がります。つまり「漁師の年収」という一つの言葉の中に、まったく水準の違う二つの実態が混ざっているのです。この記事では、なぜ平均値が低く出るのか、その構造的な理由と、年収を上げるために実際にできることを整理します。

「漁師の年収は低い」の根拠:水産庁統計で見る実際の数字

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まず、よく引用される「低い」という評価が何を根拠にしているのかを確認します。水産庁「令和6年版水産白書」によると、2023(令和5)年度の沿岸漁船漁業を営む個人経営体の漁労所得は、前年から33万円減少して219万円でした。これに漁労外の事業所得23万円を加えた事業所得は242万円です。

区分 漁労所得(2023年度) 前年比
沿岸漁船漁業・個人経営体(全体平均) 219万円 マイナス33万円
同・基幹的漁業従事者が65歳未満の経営体 703万円 ー

一方、国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者全体の平均給与は460万円(前年比0.4%増)となっています。この460万円という数字と「漁師の個人経営体平均219万円」を単純比較すると、たしかに漁師の年収は半分以下に見えます。これが「漁師は年収が低い」というイメージの主な根拠です。

ただし、この219万円という数字をそのまま「漁師全体の年収」として受け取るのは早計です。次の章で、この平均値の中身を分解していきます。

なぜ「平均」が低く出るのか:統計の中身を分解する

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同じ水産庁統計の中で、全体平均219万円と、65歳未満の中核層703万円との間には3倍以上の差があります。この差が生まれる理由は、「個人経営体」という区分に、働き方も年齢層もまったく異なる人たちが一括りにされているためです。

含まれる層 特徴
65歳以上の高齢漁業者 体力面から操業日数・漁獲量が限られ、年金収入と合わせた兼業的な働き方も多い
小規模・沿岸の零細経営体 船が小さく、出漁できる海域・時期が限られるため水揚げ上限も低い
65歳未満の基幹的漁業従事者 大型船・遠洋や沖合漁業など水揚げ規模の大きい操業を中心的に担う層
兼業経営体 漁業以外の収入(農業、民宿、水産加工等)と合算されており、漁労所得だけでは実態を測れない

漁業就業者数自体も2023年に12万1,389人(前年比1.4%減)まで減少しており、水産庁の統計は高齢化が進む業界全体を母集団にしています。つまり「漁師の平均年収219万円」は、現役バリバリで漁業を中心に営む層の実態ではなく、高齢・小規模・兼業を含めた業界全体をならした数字だということです。これから漁師を目指す人が参考にすべきなのは、むしろ703万円という中核層の水準に近い数字と言えます。

なお、漁法によっても年収の水準は大きく異なります。遠洋マグロ延縄漁のように水揚げ単価が高い漁法と、沿岸の小規模な漁法とでは、同じ「漁師」でも年収の桁が変わることがあります。漁法別の詳しい比較は漁師の年収ランキング|漁法別TOP7と時給換算で見る本当の稼ぎ方で解説しています。

年収が低く見える3つの構造的な理由

統計の母集団の問題に加えて、漁師という仕事そのものに「年収が低く見えやすい」構造的な要因が3つあります。

1. 歩合制のため、年によって大きく変動する

多くの漁師の収入は固定給ではなく、水揚げ高に応じた歩合制です。魚価や漁獲量は天候・海況・資源量によって年ごとに変動するため、不漁の年には年収が大きく落ち込みます。単年の数字だけを見て「低い」と判断すると、豊漁の年の実態を見落とすことになります。

2. 燃料費・漁具費などの経費負担が重い

水産庁の統計では、油費(燃料費)が漁労支出に占める割合は直近5か年平均で約16%にのぼります。個人事業主として独立している漁師の場合、この経費は水揚げ高(売上)から自分で差し引く必要があり、会社員の給与のように経費が別勘定になることはありません。燃料費の内訳や高騰時の対策については漁師の燃料代はいくら?経費に占める割合となぜ高いのか、高騰対策まで解説で詳しく解説しています。

3. 個人事業主としての社会保険料・ローン返済がのしかかる

個人事業主として独立した漁師は、会社員と違って国民健康保険・国民年金を全額自己負担します。さらに独立直後は漁船購入のためのローン返済が重なることも多く、水揚げ高から経費・ローン・保険料・税金を差し引いた「手取り」は、漁労所得よりもさらに目減りします。独立段階別の具体的な収支モデルは個人事業主の漁師の年収は?水揚げから実質所得までの収支モデルで試算しています。

年収を上げるために実際にできる選択肢

「年収が低く見える」構造が分かったところで、実際に収入を上げるためにできることを整理します。

選択肢 考え方
水揚げ単価の高い漁法を選ぶ 遠洋・沖合の漁法は沿岸の小規模漁より水揚げ規模が大きい傾向がある
雇われ漁師として経験を積む 独立前に技術と資金を蓄え、経費負担のリスクを抑えられる
閑散期に副業を持つ 漁期の空いた時期の収入を補い、年間の手取りを底上げできる
養殖業への転身を検討する 天候・漁獲量の変動に左右されにくい収入構造を選ぶ選択肢もある
独立のタイミングを見極める ローン返済と水揚げが安定するまでの期間を見込んで資金計画を立てる

閑散期の収入源としては、漁業と並行して兼業を行う経営体も一定数存在します。具体的な副業の種類や始め方は漁師の副業おすすめ7選|閑散期を活かす収入アップ術と始め方で紹介しています。

天候や漁獲量に左右されにくい働き方を望むなら、養殖業への転身も選択肢の一つです。仕事内容や必要なスキルの違いは漁師から養殖業へ転職はできる?仕事内容・スキル・収入の違いを解説で整理しています。

求人の面では、求人ボックスで「漁師・漁業」の仕事を検索すると394件の求人が表示されます(求人ボックス調べ、2026年10月時点)。地域や雇用形態によって給与条件は幅広いため、応募前に歩合制か固定給か、経費負担の有無を必ず確認することが欠かせません。

よくある質問

Q1: 結局、漁師の年収は本当に低いのですか?

統計上の「個人経営体全体の平均」で見れば219万円(2023年度)と、会社員の平均給与460万円より低いのは事実です。ただし同じ統計の中でも、65歳未満で漁業を中心に営む層に絞ると703万円まで上がります。高齢・小規模・兼業の経営体を含めた平均だけを見て「漁師は低収入」と結論づけるのは、実態の半分しか見ていないことになります。

Q2: 未経験からでも年収を上げることはできますか?

可能です。経験を積みながら水揚げ単価の高い漁法に移る、独立して経費構造を自分でコントロールする、閑散期に副業を持つなど、収入を上げる手段は複数あります。ただし、いずれも体力的な負担や経費・ローンのリスクを伴うため、年収だけでなく労働条件やリスクも合わせて確認することが重要です。転職後に後悔しやすいポイントは[漁師への転職で失敗する7つの原因と回避策【脱サラ前に必読】](https://suisan-navi.jp/fishery-career/fisherman-career-change-failure/)にまとめています。

まとめ:「漁師の年収が低い」は半分だけの事実

  • 水産庁統計の個人経営体平均219万円(2023年度)は事実だが、65歳未満の中核層は703万円と3倍以上の開きがある
  • 平均が低く出るのは、高齢・小規模・兼業の経営体まで含めた業界全体を母集団にしているため
  • 歩合制による変動、燃料費などの経費負担、個人事業主ならではの社会保険料・ローン返済が「低く見える」構造を作っている
  • 年収を上げる選択肢は、漁法選び・雇われ経験・副業・養殖への転身・独立タイミングの見極めなど複数ある

漁師への転職を検討している方は、まず漁法別の年収相場を漁師の年収はいくら?漁法別・地域別のリアルな収入事情を徹底解説で確認し、そのうえで自分がどの働き方(雇われか独立か、どの漁法か)を目指すのかを具体的にイメージすることをおすすめします。

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産業界に特化した専門メディアです。

参考情報

  • 水産庁「令和6年版水産白書 (2)漁業・養殖業の経営の動向」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_2_2.html)— 2023年度の漁労所得219万円・703万円・油費16%のデータを確認(確認日: 2026-10-02)
  • 水産庁「令和6年版水産白書 (3)漁業の就業者をめぐる動向」(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_2_3.html)— 2023年の漁業就業者数12万1,389人を確認(確認日: 2026-10-02)
  • 国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査結果について」(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/minkan_2024/pdf/01.pdf)— 1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与460万円を確認(確認日: 2026-10-02)
  • 求人ボックス「漁師・漁業の転職・求人情報」(https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E6%BC%81%E5%B8%AB-%E6%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B)— 求人件数394件を確認(確認日: 2026-10-02)




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