最終更新: 2026-09-15
水産庁の統計によると、令和4年度の新規漁業就業者数は1,691人で、前年度の1,744人から3%減少しました。平成21年以降はおおむね2,000人前後で推移してきましたが、平成30年の1,943人と比べても1割近く少ない水準です。「漁師になりたいけれど、未経験でいきなり生活できるのか不安」と感じる方は多いはずですが、実はこの担い手不足を背景に、国と自治体は新規就漁者向けの支援制度を年々手厚くしています。この記事では、新規就漁の基本的な意味から、青年就業準備給付金や実践研修支援といった国の制度の中身、都道府県・市区町村の独自支援、そして実際の申請の流れまでを、現場目線で徹底解説します。まず新規就漁という言葉の定義を押さえたうえで、国の支援制度、自治体の支援制度、申請ステップ、よくある失敗の順に見ていきましょう。
新規就漁とは?基本をわかりやすく解説

新規就漁とは、それまで漁業に従事していなかった人が、新たに漁業の担い手として就業することを指す水産業界の用語です。実家が漁師で後を継ぐ「後継者」とは区別され、都市部出身者や異業種からの転職者など、漁業とゆかりのない人が一から漁師を目指すケースを主に指します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 漁業経験のない人が新たに漁業に就業すること |
| 対象者 | 都市部からのUIターン希望者、異業種からの転職者、漁業学校の卒業生など |
| 主な就業形態 | 漁業者に雇われる「漁業雇用就業」と、将来的に独立を目指す「独立・自営」の2パターン |
| 支援の主体 | 水産庁(国)、都道府県・市区町村、漁業協同組合、一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター |
新規就漁者のうち、39歳以下の若い世代がおおむね7割を占めているというデータもあり、水産庁は担い手不足解消のため若年層の呼び込みに力を入れています(水産庁「令和5年度水産白書」ほか、農林水産省「漁業構造動態調査」に基づく分析、2024年時点)。漁師という仕事そのものの実情を先に知りたい方は、漁師になるにはの完全ガイドも参考にしてください。
新規就漁を支える国の支援制度:3つの柱

新規就漁者向けの国の中心的な支援策が「漁業担い手確保・育成対策事業」です。この事業は大きく3つの柱で構成されています。
| 支援の柱 | 内容 |
|---|---|
| 青年就業準備給付金 | 漁業学校等で学ぶ若者に対して就業準備のための資金を交付 |
| 実践研修支援 | 新規就業者が実際の漁業現場で長期間の実地研修を受けられるよう支援 |
| 就業相談・講習会 | 就業相談会の開催や、漁業に必要な技術・知識を学ぶ講習会の実施 |
この事業は運営主体である一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター(通称「漁師.jp」)が窓口となっており、過去の実績では長期研修の受講者数が青年就業準備給付金の受給者数を大きく上回る年度もありました(水産庁関連事業の公開資料に基づく、2016年度実績)。つまり、いきなり漁業学校に進学しなくても、現場での実践研修を通じて新規就漁を目指すルートが用意されているのが特徴です。
編集部が漁業就業相談会を取材した際、担当者から「制度の名前だけ知っていて、自分がどの支援に当てはまるか分からないまま相談に来る方が非常に多い」という声を聞きました。まずは自分が「漁業学校で学ぶ立場」なのか「現場でいきなり研修を受けたい立場」なのかを整理してから窓口に相談すると、案内がスムーズに進みます。
支援金額は年度や実施主体によって変動するため、最新の交付額・受給要件は全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)や都道府県の水産担当窓口に直接確認することが推奨されます(2026年9月時点)。制度を使う前提として漁業権や資格の基礎知識も必要になるため、漁業権の取得方法や漁業に必要な資格の種類もあわせて確認しておくと理解が深まります。
都道府県・市区町村の独自支援制度
国の制度に加えて、都道府県や市区町村が独自に新規就漁者向けの支援制度を設けているのも大きな特徴です。全国漁業就業者確保育成センターは毎年度、全国の自治体による支援制度一覧を取りまとめて公開しており、令和8年度版でも多数の自治体の制度がリスト化されています(全国漁業就業者確保育成センター公開資料、2026年時点)。
| 支援の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 移住支援金 | 移住・定住を条件とした一時金の支給 |
| 住宅支援 | 空き家改修費の補助、漁業者向け住宅の提供 |
| 研修生への生活費補助 | 研修期間中の生活費・家賃の一部補助 |
| 漁船・漁具の取得支援 | 独立・自営を目指す就業者向けの漁船リース・購入補助 |
自治体ごとに条件や金額が大きく異なるため、就業を希望するエリアが決まっている場合は、その自治体の水産担当課や漁業協同組合に個別に問い合わせるのが確実です。移住とセットで検討している方は、漁師への移住支援制度まとめや漁村への移住ガイドの記事も具体的な事例を交えて解説していますので、あわせてご覧ください。
水産業界全体の就業者数や漁業経営体数の推移といった統計データは、水産ナビ 水産業界データハブでも定期的に更新しています。
新規就漁の申請から就業までの流れ
新規就漁を目指す場合、一般的には以下のようなステップで進みます。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| ステップ1 | 就業相談会・漁業学校のオープンキャンパス等に参加し情報収集 | 数週間〜数か月 |
| ステップ2 | 全国漁業就業者確保育成センターや都道府県窓口への相談・登録 | 1〜2か月 |
| ステップ3 | 受け入れ漁業者とのマッチング、体験乗船 | 1〜3か月 |
| ステップ4 | 実践研修または漁業学校での研修開始 | 半年〜3年 |
| ステップ5 | 独立・自営 または 漁業者への正式雇用 | 研修終了後 |
このプロセスで特に重要なのが、ステップ3の「体験乗船」です。実際に船に乗ってみることで、想像していた仕事内容と現実のギャップに気づけるケースが多く、ミスマッチによる早期離職を防ぐ効果があるとされています。実際に就業相談を経験した方からは「体験乗船で船酔いのひどさを実感し、進む漁法を沿岸の定置網漁に変更した」という声も聞かれます。未経験からの求人事情を具体的に知りたい方は、漁師の求人・未経験からの探し方の記事も参考になります。
新規就漁で注意すべきポイント・よくある失敗
新規就漁には支援制度が整っている一方で、注意すべき点もあります。
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 支援金だけを目的にしない | 給付金は生活の下支えであり、独立後の収入を保証するものではない | 就業後の収入シミュレーションを事前に行う |
| 体力・環境への適応 | 早朝勤務、天候による作業変動、船上作業の体力負担が大きい | 体験乗船・短期研修で事前に適性を確認する |
| 受け入れ先とのミスマッチ | 漁法や地域によって働き方が大きく異なる | 複数の漁業者・地域を比較検討する |
| 支援制度の併用可否 | 制度によって併用できない組み合わせがある | 申請前に窓口へ併用可否を確認する |
「なるにはこの記事を読めば安心」と思われがちですが、実際には支援制度を使っても数年で離職する人も一定数存在します。事前に厳しい現実も知っておきたい方は、漁師はやめとけと言われる理由の記事も参考にしてください。逆に、実際に働き始めてからの1日の流れをイメージしておきたい方には、漁師の一日のスケジュールの記事もおすすめです。
新規就漁に関するよくある質問
Q1: 新規就漁とはどのような意味ですか?
新規就漁とは、それまで漁業に従事していなかった人が新たに漁業の担い手として就業することです。実家が漁師で後を継ぐ後継者とは区別され、都市部からの移住者や異業種からの転職者が主な対象となります。
Q2: 新規就漁者向けの支援金はいくらもらえますか?
国の支援制度は青年就業準備給付金や実践研修支援など複数の柱で構成されており、支援金額は年度や対象者の状況によって変動します。都道府県・市区町村の独自制度も併用できる場合があるため、正確な金額は全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)や希望地域の水産担当窓口に確認することをおすすめします(2026年9月時点)。
Q3: 新規就漁するのに漁業の学校を卒業していないとダメですか?
必須ではありません。漁業学校を経由するルートのほかに、現場でいきなり実践研修を受けて就業するルートも用意されています。実際、過去の実績では実践研修の受講者数が漁業学校向け給付金の受給者数を上回る年度もありました。
Q4: 新規就漁と後継者確保はどう違いますか?
後継者確保は、漁業者の子や親族が家業を継ぐケースを指すのに対し、新規就漁は漁業とゆかりのない人が新たに参入するケースを指します。国や自治体の支援制度には両方を対象にしたものと、新規就漁者に特化したものがあります。
Q5: 独立して自分の船を持ちたい場合も支援は受けられますか?
独立・自営を目指す就業者向けに、漁船・漁具の取得支援を行う自治体もあります。ただし独立には漁業権の取得や一定の実務経験が必要になるケースが多いため、早い段階から地域の漁業協同組合に相談しておくことが重要です。
Q6: 新規就漁者は年々増えていますか、減っていますか?
減少傾向にあります。水産庁の統計では、令和4年度の新規漁業就業者数は1,691人で、平成30年の1,943人と比べて1割近く減少しています。ただし39歳以下の若年層が全体のおおむね7割を占めており、担い手の高齢化そのものは一定程度抑えられています(水産庁「令和5年度水産白書」等、2024年時点のデータ)。
Q7: 新規就漁の相談はどこにすればいいですか?
一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)が全国の窓口となっているほか、就業を希望する都道府県・市区町村の水産担当課、地域の漁業協同組合でも相談を受け付けています。
関連記事: 漁師として独立するには?必要な資金と5つのステップを解説
まとめ:新規就漁のポイント
新規就漁について、ここまでの内容を振り返ります。
- 新規就漁とは、漁業経験のない人が新たに漁業の担い手として就業することで、後継者確保とは区別される
- 国は「漁業担い手確保・育成対策事業」として、青年就業準備給付金・実践研修支援・就業相談講習会の3つの柱で支援している
- 都道府県・市区町村も移住支援金や住宅支援など独自の制度を設けており、国の制度と併用できる場合がある
- 新規漁業就業者数は減少傾向にあるが、39歳以下の若年層が中心という状況は続いている
- 支援金だけを目的にせず、体験乗船などで事前に適性を確認することが早期離職を防ぐカギになる
まずは全国漁業就業者確保育成センター(漁師.jp)や希望地域の相談会に参加し、自分に合った支援制度を確認するところから始めてみましょう。漁師という仕事全体の実情をより詳しく知りたい方は、漁師になるにはの完全ガイドもあわせてご覧ください。
参考情報
- 水産庁「令和5年度水産白書」(2024年時点)
- 農林水産省「漁業構造動態調査」に基づく新規漁業就業者数データ(2024年時点)
- 一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター「漁師.jp」公開情報(2026年時点)
- 水産庁 漁業担い手確保・育成対策事業に関する公開資料
この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。
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