煮干しの作り方|釜茹でから乾燥までの手順とコツ

煮干しの作り方|釜茹でから乾燥までの手順とコツ 水産加工

最終更新: 2026-10-03

煮干しは、カタクチイワシなどの小魚を塩水で茹でたあと乾燥させるだけで作れる、添加物を使わない水産加工品です。工程は「洗浄→釜茹で→乾燥」の3段階のみで、塩分濃度3〜3.5%程度の塩水で3〜5分煮て、天日干しなら5日前後、乾燥機なら2時間程度で仕上がるのが目安です。この記事では各工程の具体的な手順と失敗しやすいポイントに加え、だし用と食用で変わる大きさの違い、主要産地のデータまで、水産加工の視点から解説します。

煮干し作りの全体像:始める前に知っておくこと

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項目 目安
所要時間 下処理〜釜茹でで1時間程度+乾燥(天日干し5日前後/機械乾燥2時間前後)
費用 材料費のみ(イワシの購入費、塩)
難易度 ★☆☆(工程自体はシンプルだが、乾燥具合の見極めに経験が必要)
必要なもの 新鮮なカタクチイワシなどの小魚、塩、鍋または釜、ザル、天日干し用のネットまたは食品乾燥機

煮干しの原料は主にカタクチイワシですが、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、トビウオなどが使われることもあります。また、西日本では「いりこ」、東日本では「煮干し」と呼ばれることが多く、全国に向けて商品を販売する東亜物産によると、北海道から沖縄まで広く「煮干し」の呼称が使われる一方、「いりこ」は近畿地方より西に偏った呼び方とされています。本記事では「煮干し」の表記で統一します。

煮干しの作り方【手順解説】

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Step 1: 下処理(洗浄)

水揚げしたイワシを真水でさっと洗い、表面の汚れやウロコを落とします。カタクチイワシは小型のため、内臓を取らずにそのまま次の工程に進めるのが一般的です。内臓を残すかどうかは、後述する大きさによる苦味の出方にも関わってきます。

Step 2: 釜茹で(煮る)

塩分濃度3〜3.5%程度の塩水を用意し、80℃前後まで加熱します。これはおおよそ海水と同程度の塩分濃度です。ここにイワシを入れて3〜5分煮ます。目の部分が白く濁ってきたら煮え上がりの目安です。茹で上がったらすぐにザルに上げて水気を切ります。

この釜茹でという工程は、塩を使って保存性を高める点で塩蔵と似ていますが、煮干しは塩水に浸すだけでなく熱を加えてタンパク質を一気に凝固させる点が異なります。この加熱凝固によって身が崩れにくくなり、次の乾燥工程でも形が保たれやすくなります。

Step 3: 乾燥

水気を切ったイワシを重ならないように並べて乾燥させます。乾燥方法には天日干しと機械乾燥の2つがあります。

天日干しの場合は、屋外で5日程度かけて乾燥させます。イワシの尾ビレが上向きに反り始めたら、乾燥が進んだサインです。天候に左右されやすくまとまった日数が必要になりますが、ゆっくり乾燥させることで風味が引き立つといわれています。

機械乾燥の場合は、乾燥機で120℃程度の温度をかけ、100分程度で仕上げます。途中で一度イワシを裏返すと全体が均一に乾きます。短時間で仕上がるため、天候に左右されず安定した品質で量産できるのが利点です。

どちらの方法でも、最終的な水分量が15%程度になるまで乾燥させるのが目安です。水分が多く残ると、保存中にカビや腐敗の原因になるため注意が必要です。

同じ「煮てから乾燥させる」製法ではなく「開いてから乾燥させる」製法になりますが、乾燥によって保存性を高めるという考え方は魚の干物の作り方とも共通しています。乾燥方法の工夫で風味や保存性が変わる点は、どちらの加工品にも言えることです。

失敗しないためのコツ・注意点

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よくある失敗 原因 対策
身が崩れる 釜茹での温度が低すぎる、または時間が短すぎる 80℃前後を保ち、3〜5分はしっかり茹でる
茹ですぎて固くなる 茹で時間が長すぎる 目が白く濁った時点で手早くザルに上げる
乾燥後にカビが出る 乾燥不足で水分が残っている 水分量15%程度を目安に、芯まで乾いているか確認する
色が黄色っぽく変色する(油焼け) 脂肪分の多い個体を使った、または保存時の酸化 脂肪の少ない個体を選ぶ、乾燥後は密閉して冷凍・冷蔵保存する

完成した煮干しは、ジップ付きの保存袋などに入れて空気をしっかり抜き、冷凍または冷蔵で保存すると風味が長持ちします。家庭で作った場合は市販品のような酸化防止処理がされていないため、できるだけ早めに使い切るのが安心です。

だし用と食用、大きさで変わる煮干しの選び方

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煮干しは大きさによって呼び名と使い道が変わります。これは水産加工の現場で古くから使われている分類で、だし用と食用のどちらを選ぶかの目安にもなります。

銘柄 体長 主な用途
大羽(おおば) 8cm以上 だし用(そのまま食べると苦味が出やすい)
中羽(ちゅうば) 6〜8cm だし用
小羽(こば) 4〜6cm だし用・食用どちらにも使える
かえり 3〜4cm 食用(そのまま食べるのに適する)
ちりめん 1〜3cm ちりめんじゃこの領域

大きい個体は内臓が発達しているため、だしに使うとコクのある濃い出汁が取れますが、そのまま食べると内臓由来の苦味が出やすくなります。反対に小さい個体は内臓が未発達なので苦味が少なく、骨も柔らかいため丸ごと食べる用途に向いています。そのまま食べる煮干しを選ぶ場合は、体長5cm以下を目安にすると失敗しにくいとされています。

カタクチイワシの稚魚をもっと若い段階で加工したものが、しらす干しです。しらす加工の方法で解説しているとおり、しらすは乾燥度合いが浅く水分を多く残すのに対し、煮干しはしっかり乾燥させて長期保存できるようにする点が大きな違いです。原料となる魚は近い種類でも、加工の目的によって仕上げ方が変わる好例といえます。

煮干し生産の全国マップ:主要産地と伊吹いりこの仕組み

煮干し(いわしの煮干し)の生産は、特定の地域に集中しています。農林水産省「漁業センサス」(水産加工場の生産量調査、令和5年)によると、都道府県別の生産量は以下の通りです。

都道府県 生産量(令和5年) 全国シェア
長崎県 6,518トン 27.8%
熊本県 4,340トン 18.5%
広島県 3,505トン 15.0%
香川県 2,658トン 11.3%
鳥取県 1,672トン 7.1%
全国計 23,431トン 100%

生産量では長崎県が全国の4分の1強を占めて最も多い一方、ブランド力で知られているのは香川県観音寺市の伊吹島で作られる「伊吹いりこ」です。伊吹島周辺で獲れたカタクチイワシは漁獲から30分以内に煮沸され、15〜20時間かけて乾燥させます。漁から加工までの時間の短さが鮮度と味を左右するため、現在15軒ある網元がそれぞれ漁獲から加工までを一貫して担い、伊吹漁業協同組合が集出荷場で入札を実施して全国へ出荷する体制が取られています。1つの島で漁獲から加工、入札、出荷までが完結しているこの仕組みは、水産加工の仕事に興味がある人にとって、産地ブランドがどのように維持されているかを知る手がかりになります。

原料となるイワシの漁業規模

煮干しの主原料であるカタクチイワシは、漁業全体から見ても一定の規模を持つ魚種です。農林水産省の漁業産出額統計によると、いわし類全体の海面漁業産出額は約761億円で、このうちカタクチイワシは約112億円、マイワシは約237億円、ウルメイワシは約36億円となっています(農林水産省「漁業産出額」)。煮干しの原料であるイワシ類が、どの程度の規模の漁業に支えられているかを知るうえで参考になる数字です。マイワシの漁獲期や旬についてはマイワシの旬はいつ?で詳しく解説しています。

よくある質問

Q1: 煮干しは塩を使わずに作れますか?

塩を使わなくても乾燥させることは可能ですが、塩水で茹でることでタンパク質が凝固しやすくなり、身崩れを防ぎながら保存性も高まります。海水に近い塩分濃度で茹でることで、自然な旨味も引き立ちやすくなります。

Q2: 作った煮干しはどのくらい保存できますか?

乾燥が十分で密閉保存できていれば、冷凍保存で比較的長く風味を保てます。ただし家庭で作る煮干しは、市販品のような厳密な衛生管理や酸化防止処理がされていないため、乾燥直後からできるだけ早めに使い切るのが安心です。開封後は常温保存を避け、冷蔵または冷凍で保管してください。

関連記事: 魚の食中毒を防ぐには?アニサキス・腸炎ビブリオ・ヒスタミンの原因と対策

まとめ:煮干し作りのポイント

  • 工程は「洗浄→釜茹で(塩分3〜3.5%、80℃前後、3〜5分)→乾燥(天日干し5日前後、または機械乾燥120℃・100分前後)」の3段階
  • 乾燥は水分量15%程度を目安に、不足するとカビや腐敗の原因になる
  • 大きさによって用途が変わり、だし用は6cm以上、そのまま食べるなら5cm以下が目安
  • 主要産地は長崎県・熊本県・広島県など。ブランドいりことして知られるのは香川県の伊吹いりこ

まずは少量のカタクチイワシで、塩分濃度と乾燥時間の目安を守りながら試してみることをおすすめします。水産加工品全体の中で煮干しがどう位置づけられるか気になる方は、水産加工品の種類で他の加工品と合わせて確認できます。

参考情報

この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。

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