最終更新: 2026-10-26
サクラエビは国内では静岡県の駿河湾でのみ商業的に漁獲されるエビで、旬は春漁(3月下旬〜6月上旬)と秋漁(10月下旬〜12月下旬)の年2回です。産卵期にあたる6月11日から9月30日までは、静岡県漁業調整規則により採捕禁止期間(禁漁期)に定められています。
駿河湾のサクラエビ漁は、資源管理の先進事例として他地域から注目されてきました。この記事では、由比港・大井川港を中心とした漁期と禁漁期の仕組み、2018年の全面休漁を経た資源回復の経緯、2026年の漁獲状況、栄養・食べ方までを一次資料で確認して解説します。
サクラエビとは?基本データ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準和名 | サクラエビ |
| 分類 | サクラエビ科サクラエビ属 |
| 国内の漁場 | 駿河湾(静岡県)のみで商業漁業が行われる。生息自体は相模湾・東京湾にも確認されている |
| 主な水揚げ港 | 由比港・大井川港(静岡市・焼津市) |
| 漁法 | 2隻1組で網を曳く「2そう船曳網漁業」。夜間、水深20〜50m付近まで浮上する習性を利用して操業する |
サクラエビは昼間は水深200〜300m付近の深海にいますが、夜になると餌を求めて水深20〜50mほどまで浮上する習性があります。駿河湾のサクラエビ漁はこの夜間の浮上を狙って行われています。
サクラエビの旬はいつ?春漁・秋漁の年2回制

駿河湾のサクラエビ漁は、資源保護のため年2回・合計70日前後しか操業できない仕組みになっています。
サクラエビの漁期
| 漁期 | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 春漁 | 3月下旬〜6月上旬 | 2026年は4月3日〜6月5日、出漁17日間。桜が咲く頃のエビは餌を多く食べて栄養を蓄え、甘みが強いとされる |
| 禁漁期 | 6月11日〜9月30日 | サクラエビの産卵期にあたり、静岡県漁業調整規則で採捕が禁止されている |
| 秋漁 | 10月下旬〜12月下旬 | 産卵を終えた1歳エビを主な対象とし、翌年産卵する0歳エビを保護する方針で操業される |
春漁・秋漁それぞれの期間の中でも、実際に漁ができる日数はさらに絞られます。2026年の春漁は4月3日から6月5日までの期間で、実際に出漁したのは17日間でした。残りの期間は、資源状況を見ながら漁業者が休漁日を調整しています。
資源管理のための禁漁期・自主規制|由比港発祥の取り組み

サクラエビ漁の最大の特徴は、法律上の禁漁期に加えて、漁業者自身がさらに厳しい自主規制を重ねている点です。この取り組みは、日本食糧新聞の静岡食産業特集(2026年10月26日付)でもJF静岡漁連の役員らが取り上げ、「他地域に先駆けた資源管理」として注目されていると紹介されています。
由比港の歴史:1894年の偶然の発見から始まった漁業
笹川平和財団海洋政策研究所の記録によると、サクラエビ漁は1894年(明治27年)12月、富士川河口沖でアジの船曳き漁をしていた由比の漁師2人の網が、浮き樽を流して深く沈んでしまったことから偶然始まりました。引き上げた網には大量のサクラエビが入っており、これが駿河湾のサクラエビ漁のきっかけになったとされています。その後、由比・蒲原を中心に本格的な漁業として定着しました。
2018年の全面休漁と、そこからの資源回復
駿河湾のサクラエビはかつて年間3000〜5000トン規模の水揚げがありましたが、資源の減少が進み、2018年には約312トンまで落ち込み、2019年には100トンを割り込みました。これを受けて漁業者は2018年秋、資源回復を目的に自ら全面休漁に踏み切っています。
その後も秋漁の中止や操業船数・曳網時間の制限といった自主規制を続け、2023年ごろから漁獲量はわずかに回復傾向に転じました。2026年の春漁では、総水揚げ量329トン(前年比約37トン増)となり、回復の流れが継続していることが確認できます。
プール制度・曳網時間制限という独自ルール
由比港・大井川港の漁業者は、個々の漁船の水揚げ量に関係なく全船の水揚げ金額を均等に配分する「プール制度」を採用しています。また、網を曳く時間を20分程度に制限するなど、資源への負荷を抑える操業ルールも設けられています。漁師を目指す人にとっては、個人の漁獲量で収入が大きく振れにくい仕組みがある点は、漁業経営を考える上でも参考になるポイントです。
2026年のサクラエビ漁獲状況

2026年の春漁は解禁から5日遅れて4月4日に初漁となり、由比・大井川両市場を合わせて初日約14トンの水揚げがありました。これは2025年の初漁と比べて3倍以上の水揚げで、取引価格は由比市場で15kgあたり6万6654円と、前年よりも手ごろな水準だったと報じられています。
漁期は4月3日から6月5日までの17日間操業で、最も水揚げが多かった日は59トンに達し、最終的な総水揚げ量は329トンでした。資源管理の取り組みが続けられる中、漁獲量は横ばいから緩やかな回復傾向にあるといえます。
サクラエビは駿河湾だけ?台湾・東港との意外な関係

サクラエビの生息自体は相模湾や東京湾でも確認されていますが、商業的な漁業が行われているのは国内では駿河湾だけです。一方、台湾南部の屏東県東港でもサクラエビ漁が行われており、台湾では「東港三宝」の一つとして知られる特産品になっています。
東京大学・東海大学の研究グループが遺伝子解析(MIG-seq法・ゲノムスキミング法)を行った結果、日本と台湾のサクラエビの個体群の間に明確な遺伝的な区別が見られず、特に台湾側から日本側への個体の移動が大きいことが分かっています。黒潮がサクラエビの分散に関わっているとみられ、今後は日台両国が協力した資源管理の必要性も指摘されています。
サクラエビの栄養:カルシウム・鉄・ビタミンB12が豊富
文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、さくらえび(素干し)の可食部100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです。
サクラエビ(素干し)の栄養成分(可食部100gあたり)
| 栄養素 | 含有量 |
|---|---|
| エネルギー | 286kcal |
| たんぱく質 | 64.9g |
| 脂質 | 4.0g |
| 炭水化物 | 0.1g |
| カルシウム | 2000mg |
| 鉄 | 3.2mg |
| リン | 1200mg |
| カリウム | 1200mg |
| 亜鉛 | 4.9mg |
| ビタミンB12 | 11.0μg |
| 葉酸 | 230μg |
素干しは水分が抜けている分、生の状態よりも栄養素が凝縮されています。特にカルシウムは100gあたり2000mgと非常に多く、殻ごと食べられる食材としての強みが栄養面にも表れています。鉄やビタミンB12も豊富に含まれており、少量でも効率よく栄養を摂れる食材といえます。
サクラエビの食べ方:生・釜揚げ・かき揚げ
| 食べ方 | 特徴 |
|---|---|
| 生 | 水揚げされたその日のうちに味わう、産地でしか楽しめない最高級の食べ方 |
| 釜揚げ | 獲れたてのサクラエビをさっと釜で茹で上げる、由比・大井川の定番調理法 |
| かき揚げ | 衣をつけて揚げることで、香ばしさと旨みを一度に味わえる人気料理 |
生のサクラエビは鮮度が落ちやすいため、産地以外ではあまり出回りません。釜揚げや乾燥(素干し)に加工されたものが、スーパーや通販で広く流通している形態です。
サクラエビに関するよくある質問
Q1. サクラエビの旬はいつですか?
春漁(3月下旬〜6月上旬)と秋漁(10月下旬〜12月下旬)の年2回が漁期にあたります。6月11日〜9月30日は産卵期にあたり、禁漁期として採捕が禁止されています。
Q2. サクラエビはどこで獲れますか?
国内で商業漁業が行われているのは静岡県の駿河湾のみで、由比港・大井川港が主な水揚げ港です。生息自体は相模湾・東京湾にも確認されています。海外では台湾南部の屏東県東港でも漁獲されています。
Q3. なぜサクラエビの漁期はこれほど限られているのですか?
資源保護のため、法律上の禁漁期(6月11日〜9月30日)に加えて、漁業者が自主的に操業船数や曳網時間を制限しているためです。2018年には資源悪化を受けて漁業者自ら秋漁を全面休漁にした経緯もあり、年間の実際の操業日数は70日前後にとどまります。
Q4. サクラエビの資源量は回復していますか?
2018年に約312トン、2019年には100トンを割り込むまで落ち込みましたが、自主規制を続けた結果2023年ごろから緩やかな回復傾向に入っています。2026年春漁の総水揚げ量は329トンで、前年を約37トン上回りました。
まとめ:サクラエビの旬は年2回、資源管理の歴史も知っておきたい
- サクラエビの旬は春漁(3月下旬〜6月上旬)と秋漁(10月下旬〜12月下旬)の年2回
- 6月11日〜9月30日は産卵期にあたる禁漁期で、採捕が禁止されている
- 1894年に由比の漁師が偶然発見したのが漁業の始まり。2018年の全面休漁を経て資源は回復傾向
- 国内の商業漁場は駿河湾のみだが、台湾・東港のサクラエビとは遺伝的なつながりがあることも分かっている
- 素干し100gあたりカルシウム2000mg・鉄3.2mg・ビタミンB12 11.0μgと栄養が豊富
他の甲殻類の旬については甘エビの旬はいつ?やイセエビの旬はいつ?でも解説しています。魚種全般の旬は魚の旬カレンダー完全版、静岡県で漁師を目指す方向けの情報は静岡県の漁師求人ガイド、水産業界の統計データは水産ナビ 水産業界データハブでも確認できます。
参考情報
- 日本食糧新聞・電子版「静岡食産業特集:JF静岡漁連・高田氏、大川氏、鈴木氏 資源管理でサクラエビ漁に注目」 — 2026年10月26日付。JF静岡漁連役員が2018年秋の全面休漁など資源管理の取り組みを紹介している記載を確認(確認日: 2026-10-26)
- 焼津市「希少でおいしい『サクラエビ』」 — 漁期(春3月下旬〜6月上旬、秋10月下旬〜12月下旬)、禁漁期間(6月11日〜9月30日)、2そう船びき網漁法、食べ方(生・釜揚げ・かき揚げ)の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- 由比港漁業協同組合「桜えび」 — 夜間操業の仕組み、曳網時間の制限(約20分)、プール制度(水揚げ金額の均等配分)の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- nippon.com「サクラエビ:駿河湾だけで水揚げされる海の宝石」 — 分布(駿河湾・相模湾・東京湾、漁業は駿河湾のみ)、2018年約312トン・2019年100トン割れへの落ち込み、2023年からの回復傾向の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- 静岡新聞アットエス「『駿河湾の宝石』サクラエビ春漁が解禁から5日で初競り」 — 2026年春漁の初漁(4月4日、前年比3倍以上、由比・大井川合計約14トン、15kgあたり6万6654円)、操業期間(6月5日まで)の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- 中日新聞しずおかWeb「国内では駿河湾でのみの水揚げ、サクラエビの春漁が終了」 — 2026年春漁の総水揚げ量(329トン、前年比37トン増)、操業期間(4月3日〜6月5日、17日間)、最大日水揚げ(59トン)の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- 笹川平和財団海洋政策研究所「駿河湾サクラエビ漁業の今日」 — 1894年12月、富士川河口沖での由比の漁師による発見の経緯の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- TSURINEWS「『サクラエビ』は黒潮によって台湾から駿河湾にやってくる? 遺伝的交流が明らかに」 — 台湾・東港のサクラエビ漁、東京大学・東海大学による遺伝子解析(MIG-seq法等)で日台個体群に明確な区別がないとされた研究結果の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
- 文部科学省 食品成分データベース さくらえび/素干し — さくらえび(素干し)100gあたりの栄養成分値(エネルギー286kcal、たんぱく質64.9g、脂質4.0g、カルシウム2000mg、鉄3.2mg、ビタミンB12 11.0μg、葉酸230μg等)の確認に使用(確認日: 2026-10-26)
この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。
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