最終更新: 2026-10-18
アンコウの旬は、産卵を控えて肝が肥大化する冬場、なかでも12月〜2月頃が最も身と肝が充実する時期です。ただし漁期は地域によって開始時期や漁法が異なり、「11月から」「1月から」など情報源によって表現に幅があります。本記事では茨城県・北海道・青森県の公的資料・水産研究機関の資料を確認し、地域ごとの漁期の違いを整理したうえで、アンコウ特有の解体法「吊るし切り」と「七つ道具」、あん肝の栄養成分まで解説します。
アンコウとは?基本データ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な種類 | キアンコウ(主に食用)、アンコウ(クツアンコウ) |
| 分類 | アンコウ目アンコウ科 |
| 大きさ | 全長約1.5mに達する個体もいる |
| 生態 | 海底で砂泥に身を潜め、擬餌(エスカ)で小魚を誘って捕食する底生魚 |
| 主な産地 | 茨城県、北海道、青森県など |
北海道水産林務部によると、キアンコウは全長約1.5mに達し、留萌沖・石狩湾・江差沖など日本海側にも分布する魚です。体が扁平でぶよぶよと柔らかく、表皮にぬめりがあることが、後述する特有の解体法につながっています。
アンコウの旬はいつ?地域ごとの漁期を一次資料で確認

アンコウの旬は、全国的には産卵期を控えて肝が肥大化する冬場、特に12月〜2月頃とされています。ただし「何月から漁が始まるか」「盛期がいつか」は地域・漁法によって異なります。水産ナビの既存記事では産地と時期の組み合わせについて複数の記載がありましたが、今回あらためて一次資料で確認したところ、全国を単純に2つの時期グループへ分けられる根拠は見当たりませんでした。確認できた範囲を地域別に整理します。
地域別の漁法・漁期一覧
| 地域 | 代表的な漁法 | 漁期・盛期 | 根拠となる資料 |
|---|---|---|---|
| 茨城県(平潟・大津・久慈・那珂湊など) | 沖合底びき網漁業、小型機船底びき網漁業 | 盛期は12〜2月、11月〜3月頃まで漁獲あり | プライドフィッシュ「茨城あんこう」 |
| 北海道・オホーツク海側(網走周辺) | あんこう刺し網漁業(目合い8寸〜1尺、水深40〜100mの砂泥地) | 漁期は11月〜翌1月、盛漁期は11〜12月中旬 | 北海道立総合研究機構水産研究本部 |
| 北海道・日本海側(留萌・石狩・江差など) | かれい刺し網(混獲)、あんこう刺し網 | 5〜7月は混獲、10月〜翌2月に刺し網の漁獲が増える | 北海道水産林務部 |
| 青森県下北郡風間浦村 | 固定式刺し網(沖合4.5km以内、水深約70mの漁場) | 漁期の具体的な月は公式資料に記載がないが、港から漁場まで2〜3kmと近く、翌日水揚げのため活アンコウとして出荷される | 風間浦鮟鱇公式サイト |
このように、北海道のオホーツク海側は11月から漁期が始まり11〜12月中旬が盛期となる一方、本州の茨城県では12〜2月に身と肝が最も充実するとされています。つまり「地域で2つの時期グループに分かれる」というよりも、北海道側がやや早く、本州側は年明けにかけてがピークになるという、緯度や海域に応じた時期のずれがあるとみるのが実態に近いといえます。
なお、青森県風間浦村の「固定式刺し網」は、漁場が港から2〜3kmと近いために活アンコウのまま水揚げできる珍しい漁法として知られていますが、公式サイトに具体的な漁期の月は明記されていませんでした。また、富山県ではアンコウを専業で狙う漁は基本的に行われておらず、小型底びき網で他の魚と一緒に混獲される魚という位置づけです。千葉県のアンコウについては、1〜2月が旬とする情報源はあるものの、今回確認できた範囲では水産試験場・自治体公式資料による裏付けが取れなかったため、本記事では確度の高い情報として明記していません。
旬カレンダーの考え方については、旬カレンダー|魚の種類別・月別早見表でも整理していますので、他の魚種との比較はそちらもあわせてご覧ください。
アンコウ特有の漁法:刺し網と底びき網で深海魚を狙う

アンコウは海底でほとんど動かずに潜んでいる魚のため、主な漁法は刺し網と底びき網の2種類に分かれます。
茨城県では、沖合底びき網漁業・小型機船底びき網漁業によってアンコウが漁獲されています。底びき網は、ワイヤーロープの先に取り付けたオッターボードという金属製の板で網の位置を制御し、網口を大きく開いて中層から低層の魚をまとめて漁獲する方法です。
一方、北海道のオホーツク海側や青森県風間浦村では、刺し網漁業が主な漁法です。北海道立総合研究機構水産研究本部によると、網走周辺の「あんこう刺し網」は糸の太さ6号、目合い8寸(24.2cm)〜1尺(30.3cm)の網を水深40〜100mの砂泥地に仕掛け、浮子を弱めに設定して網が潮に乗って海底に寝るようにする仕掛けです。漁期始めは水深70〜100mの深い場所、12月中旬以降は40〜70mの浅い場所へと、アンコウの移動に合わせて漁場を変えていくことが特徴です。
アンコウのように深海にすむ魚種については、食べられる深海魚の種類一覧でも他の種類とあわせて紹介しています。
アンコウ特有の解体法「吊るし切り」と七つ道具

アンコウには、まな板の上では捌けないという大きな特徴があります。体がぶよぶよと柔らかい巨体で、扁平な形状かつ表皮にぬめりがあり滑りやすいため、まな板に乗せて捌く通常の方法が適していません。そのため、大きな鉤でアンコウの下あごを吊り上げ、体内に水を注入して重みを利用しながら、吊り下げた状態で部位ごとに切り分けていく「吊るし切り」という独特の解体法が生まれました。この技法は江戸時代の文献にも記録が残っているとされています。
吊るし切りで切り分けられるアンコウの可食部位は「七つ道具」と呼ばれ、次の7つを指します。
| 七つ道具の部位 | 内容 |
|---|---|
| 1. 柳肉(身) | 白身の身の部分 |
| 2. 肝(あん肝) | 肥大した肝臓。濃厚な味わいで人気が高い部位 |
| 3. 皮 | コラーゲンを多く含み、コリコリとした食感 |
| 4. ぬの(卵巣) | 卵巣。地域や個体によっては水袋とも呼ばれる |
| 5. エラ | 歯ごたえのある部位 |
| 6. ヒレ(とも) | ゼラチン質で、煮込むと柔らかくなる |
| 7. 胃袋(水袋) | 内臓の一部。コリコリとした食感 |
アンコウは骨と目玉、腸以外は捨てるところがほとんどないといわれるほど歩留まりの良い魚で、この七つ道具を使い分けることで、あんこう鍋やどぶ汁のように一度でさまざまな食感・味わいを楽しめる料理に仕上がります。
アンコウの栄養:あん肝は魚類屈指のDHA含有量

文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表)によると、アンコウの肝(きも・生)100gあたりの主な脂肪酸・栄養成分は以下の通りです。
あんこう きも(生)の栄養成分(可食部100gあたり)
| 栄養素 | 含有量 |
|---|---|
| エネルギー | 401kcal |
| タンパク質 | 10.0g |
| 脂質 | 41.9g |
| ドコサヘキサエン酸(DHA) | 5,100mg |
| イコサペンタエン酸(EPA) | 3,000mg |
あん肝は、他の部位や多くの魚の身と比べても脂質・エネルギーが高く、DHA・EPAをまとまった量含んでいるのが特徴です。あん肝が「海のフォアグラ」と呼ばれる濃厚な味わいは、この脂質量の多さによるものといえます。食べる際は、脂質・エネルギーが高い部位であることを踏まえ、量を調整するとよいでしょう。
なお、身の部分は白身魚に分類される低脂質な魚で、白身魚の種類一覧でも他の白身魚とあわせて紹介しています。肝と身で栄養の特徴が大きく異なる点は、アンコウを選ぶ際・食べる際に知っておきたいポイントです。
あんこう鍋・どぶ汁 — 冬の定番料理
アンコウを使った代表的な郷土料理が「どぶ汁」と「あんこう鍋」です。
どぶ汁は、茨城県北茨城市に伝わる郷土料理で、もともとは漁師が、当時は今ほど高値ではなかったアンコウを船上で暖を取るために食べ始めたのが起源とされています。あんこうの肝を鍋で直接炒りつけてから味噌を加え、水を使わずにアンコウと野菜から出る水分だけで煮込むのが特徴で、肝の旨みが凝縮された濃厚な味わいになります。このどぶ汁を、観光客にも食べやすいように水や出汁を加えて仕上げたのが、現在広く知られる「あんこう鍋」といわれています。
どちらの料理も、七つ道具ときのこ・野菜をたっぷり入れて煮込む形式で、冬場の茨城県や北海道・青森県の漁師町を中心に、地域の冬の味覚として親しまれています。
アンコウに関するよくある質問
Q1. アンコウの旬はいつですか?
産卵を控えて肝が肥大化する冬場、特に12月〜2月頃が最も身と肝が充実する時期です。ただし漁期の開始時期は地域によって異なり、北海道のオホーツク海側では11月から漁期が始まります。
Q2. アンコウはどうやって漁獲するのですか?
主に刺し網漁業と底びき網漁業の2つの漁法があります。茨城県では沖合底びき網漁業・小型機船底びき網漁業が、北海道のオホーツク海側や青森県風間浦村では刺し網漁業が主な漁法です。
Q3. アンコウを吊るして捌くのはなぜですか?
アンコウの体が柔らかく扁平で、表皮にぬめりがあるため、まな板の上では捌きにくいことが理由です。鉤で吊り上げ、体内に水を入れて重みを利用しながら部位ごとに切り分ける「吊るし切り」という方法が用いられます。
Q4. あん肝のDHA含有量はどのくらいですか?
文部科学省の食品成分データベースによると、あん肝(生)100gあたりDHAは5,100mg、EPAは3,000mgです。脂質・エネルギーも高いため、量を調整しながら楽しむとよいでしょう。
まとめ:アンコウの旬のポイント
アンコウについてまとめると以下の通りです。
- 旬は冬場、特に産卵前で肝が肥大化する12月〜2月頃が中心。漁期の開始は北海道側が11月とやや早く、本州側は年明けにかけてがピーク
- 主な漁法は刺し網漁業と底びき網漁業。地域ごとに漁具・漁場の深さが異なる
- まな板で捌けない体の特徴から「吊るし切り」という独特の解体法が生まれ、可食部位は「七つ道具」と呼ばれる
- あん肝は100gあたりDHA 5,100mg・EPA 3,000mgと脂質に富む一方、身は低脂質な白身魚
他の深海魚との比較は食べられる深海魚の種類一覧、身の部位の栄養傾向は白身魚の種類一覧、他の魚種の旬との比較は旬カレンダー|魚の種類別・月別早見表もあわせてご覧ください。
参考情報
- キアンコウ[黄鮟鱇](北海道水産林務部 森林海洋環境局成長産業課) — 分類、分布(留萌沖・石狩湾・江差沖)、全長、日本海側の漁期(5〜7月・11月〜翌2月)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- キアンコウ:あんこう刺し網漁業(北海道立総合研究機構 水産研究本部) — あんこう刺し網の網の仕様、操業水深、漁期(11月〜翌1月)、盛漁期(11〜12月中旬)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 茨城あんこう(全国のプライドフィッシュ) — 茨城県の漁法(沖合底びき網・小型機船底びき網)、水揚げ漁港(平潟・大津・川尻・久慈町・那珂湊・はさき)、旬(12〜2月)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 風間浦鮟鱇(あんこう)の漁法(風間浦鮟鱇公式サイト) — 青森県風間浦村の固定式刺し網の仕組み、漁場の距離・水深、活アンコウとして水揚げされる理由の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- アンコウ|鍋で有名な深海魚を知ろう!吊るし切りや七つ道具とは(TSURI HACK) — 吊るし切りの理由、七つ道具の7部位(肝・身・皮・ぬの・エラ・ヒレ・胃袋)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 魚介類/<魚類>/あんこう/きも/生(文部科学省 食品成分データベース) — あんこう きも(生)のエネルギー・タンパク質・脂質・DHA(5,100mg)・EPA(3,000mg)の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
- 濃厚!あんこうを使った幻の漁師汁どぶ汁(茨城県) — どぶ汁の起源、作り方(肝を炒りつけ味噌を加えて水を使わず煮込む)、あんこう鍋との関係の確認に使用(確認日: 2026-10-18)
この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。
詳しくは編集部についてをご覧ください。


コメント