最終更新: 2026-10-31
マツブ(真つぶ)は、市場に出荷される「つぶ貝」の中でも最高値で取引される巻き貝だ。正式な種名はエゾボラで、国内に流通する個体の8割以上が北海道産とされる。刺身で食べると強いコリコリとした歯ごたえが楽しめる一方、唾液腺には加熱しても分解されない神経毒「テトラミン」が含まれるため、下処理の知識が欠かせない。この記事では旬の時期、毒の危険性と除去方法、産地である北海道えりも町の資源管理の現状を解説する。
マツブ(エゾボラ)とは:つぶ貝の中で最高級の巻き貝

マツブはエゾバイ科エゾボラ属の巻き貝で、学名は Neptunea polycostata。水深10m〜1,220mの海域に生息し、北海道以北の海域、特に道東に多く分布する。殻は茶色または肌色で角張った形をしており、成長すると殻長24cm・重さ1kg前後に達する個体もいる。
「つぶ貝」はエゾボラ属を中心とした複数の巻き貝の総称で、マツブ(エゾボラ)はその中でも最も高値で取引される高級品とされる。市場で「青つぶ」と呼ばれるヒメエゾボラなど近縁種とは別の種で、価格や味わいにも差がある。
旬の時期:地域によって大きく異なる

マツブの産卵期は冬から夏にかけてで、旬の時期は地域差が大きく一概には言えない。北海道内でも、日高地方や稚内周辺では4〜9月頃、十勝周辺では11月〜4月頃が食べ頃とされる。産地や漁法によって漁期・旬が異なる点は、購入時に産地を確認する際のポイントになる。
唾液腺の神経毒「テトラミン」に注意

マツブを含むエゾボラ類を扱う際に最も重要な注意点が、唾液腺に含まれる神経毒テトラミンだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 含まれる部位 | 唾液腺(通称「あぶら」。身の中央にある、鶏もも肉の脂肪に似た黄色い器官) |
| 症状 | 食後30分程度で後頭部の激しい痛み、めまい、酒に酔ったような感覚、吐き気、眼底の痛みなど。数時間で回復し、死亡例は報告されていない |
| 加熱への耐性 | 熱や酸に強い性質を持ち、煮る・焼くといった加熱調理をしても分解されない |
| 除去方法 | 殻を割った後、身の中央を切ると毒腺が見えるため、調理前に手でしごいて物理的に取り除く必要がある。その後、塩でぬめりも取る |
丸焼きなど唾液腺を除去せずに加熱する食べ方は中毒の原因になるため避け、刺身・煮つけ・アヒージョなど調理する場合も下処理の段階で必ず除去することが前提になる。
食べ方:刺身・煮つけ・アヒージョ

マツブの代表的な食べ方は刺身や寿司で、強いコリコリとした歯ごたえを活かす調理法として最も人気が高い。その他には以下のような食べ方がある。
| 調理法 | 特徴 |
|---|---|
| 刺身・寿司 | 歯ごたえを最も楽しめる定番の食べ方 |
| 煮つけ | 熱湯で下ゆで後、醤油・みりん・砂糖で煮る |
| アヒージョ | 食べやすく切り、オリーブオイル・にんにくで煮る |
| つぼ焼き・ガーリック炒め | 殻付きのまま、または取り出した身を焼く調理法 |
いずれの食べ方でも、唾液腺の除去を済ませたうえで調理する必要がある。
産地・えりも町の現状:赤潮被害からの資源回復は道半ば

マツブは北海道が主産地で、国内流通量の8割以上を占める。中でも日高地方のえりも町は代表的な産地として知られる。
えりも町では2021年9月に大規模な赤潮が発生し、ウニが全滅、つぶ貝(マツブ)もほぼ死滅する被害を受けた。ウニは成長に4〜5年、つぶ貝は6〜7年かかるとされ、赤潮の影響は長期間続くと見込まれていた。赤潮から約5年が経過した現在、ウニは沿岸部で回復傾向を示し、えりも岬地区では前年12月からウニ漁が再開されているが、マツブについては資源の回復見通しが立たず、えりも漁業協同組合は3年間の禁漁を決めたと北海道新聞が報じている。
赤潮による漁業被害は海域によって回復のスピードが種ごとに異なる典型例で、資源管理の難しさを示している。赤潮と養殖業への影響については別記事「赤潮とは?養殖業への被害と対策・予兆検知の最新動向」で詳しく解説している。
よくある質問
Q1. マツブとつぶ貝は同じものですか?
「つぶ貝」はエゾボラ属を中心とした複数の巻き貝の総称で、マツブ(エゾボラ)はその中で最も高値で取引される種。市場では「青つぶ」と呼ばれる近縁種のヒメエゾボラなど、価格帯の異なる種と区別されることが多い。
Q2. マツブは生で食べても安全ですか?
唾液腺(テトラミンを含む器官)を確実に除去すれば刺身で食べられる。この毒は熱に強く加熱調理でも分解されないため、「加熱すれば安全」という考え方は誤りで、下処理での除去が必須になる。
Q3. 北海道えりも町でマツブは獲れますか?
えりも町は代表的な産地だが、2021年の赤潮被害からの資源回復が遅れており、えりも漁業協同組合は3年間の禁漁を決めたと報じられている(2026年時点)。地域・年による漁獲状況の変動が大きいため、購入時は産地と時期を確認するとよい。
まとめ:マツブのポイント
- マツブ(エゾボラ)はエゾバイ科エゾボラ属の巻き貝で、つぶ貝の中でも最高級品とされる
- 旬は地域差が大きく、日高・稚内周辺は4〜9月、十勝周辺は11月〜4月が目安
- 唾液腺の神経毒テトラミンは熱に強く、加熱調理でも分解されないため下処理での除去が必須
- 主産地は北海道(国内流通の8割以上)で、えりも町が代表的な産地の一つ
- えりも町では2021年の赤潮被害の影響が続き、マツブの資源回復が遅れている
つぶ貝の仲間では、北海道の代表的な貝類としてホタテの旬ガイドやホッキ貝の旬ガイドも参考にしてほしい。
参考情報
- エゾボラ(マツブ)|WEB魚図鑑(確認日2026年10月31日)
- つぶ貝/ツブガイ/エゾボラ類の目利きと料理|旬の魚介百科(確認日2026年10月31日)
- 有毒】活きツブ貝(エゾボラ類)のさばき方・食べ方を解説|おれつり(確認日2026年10月31日)
- 資源回復に期待込め えりも岬地区 赤潮被害のウニ漁が再開|北海道ニュースリンク(確認日2026年10月31日、ウニ漁再開・赤潮被害の経過を確認)


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