ASC認証とは?MSC認証との違いと日本の養殖水産物の広がり

ASC認証とは?MSC認証との違いと日本の養殖水産物の広がり 養殖

最終更新: 2026-10-17

スーパーの鮮魚コーナーやサーモンの切り身パックで、緑色の「ASC」ロゴを見かけたことはないだろうか。ASC認証とは、環境や地域社会への負荷を抑えた責任ある養殖で生産された水産物であることを示す国際的な認証制度だ。よく似た「MSC認証(海のエコラベル)」は天然の漁業が対象だが、ASC認証は養殖水産物が対象という点で役割が分かれている。本記事では、ASC認証の仕組みと、宮城県のカキ・ギンザケなど日本国内で実際に認証を取得している事例を整理する。

ASC認証とは何か

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ASC認証は、ASC(Aquaculture Stewardship Council、水産養殖管理協議会)が運営する養殖水産物の国際認証制度だ。オランダに本部を置く国際NPOで、WWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダ持続可能貿易イニシアチブ)が中心となって2010年に設立された。

認証の審査では、養殖場が以下のような基準を満たしているかが評価される(ASC Japan公式サイトの説明より)。

審査の観点 具体的な基準の例
環境面 水質の監視、責任ある飼料の使用、周辺の自然生息地の保全
薬剤管理 抗生物質・化学物質の使用を抑え、管理された範囲にとどめる
社会面 養殖場で働く作業者の安全な労働条件、地域コミュニティとの良好な関係

魚種ごとに生物学的な特性が異なるため、ASCはサーモン・ブリ・エビ・二枚貝・海藻など12種類の魚種・水産物カテゴリーごとに個別の認証基準を設けている(ASC Japan公式サイト、2026年10月時点の掲載内容)。

ASC認証とMSC認証の違い:天然か、養殖か

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水産物の認証でASCとセットで語られることが多いのがMSC認証(海のエコラベル)だ。MSC認証について詳しくはこちらで解説しているが、両者の最大の違いは対象だ。

MSC認証 ASC認証
対象 天然の漁業で獲られた水産物 養殖された水産物
運営団体 MSC(海洋管理協議会、1997年設立) ASC(水産養殖管理協議会、2010年設立)
主な審査観点 資源の持続可能性・生態系への影響・漁業管理体制 環境負荷の低減・薬剤管理・地域社会への配慮
ロゴの色 青地に白い魚 緑色のASCロゴ

養殖のブリ・マダイ・サーモンを扱う事業者がMSC認証を目指すことは基本的にない。天然ものか養殖ものかで、取得すべき認証がそもそも分かれている点を押さえておきたい。

認証の仕組み:養殖場認証とCoC認証の2段階

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ASC認証がスーパーの商品パッケージに表示されるまでには、2段階の認証が必要になる。

1つ目は「ASC養殖場認証」で、実際に魚介類を育てている養殖場・養殖事業者が取得する。2つ目は「CoC認証(Chain of Custody、管理の連鎖)」で、養殖場から先の加工・流通・販売の各事業者が取得する。CoC認証を持つ事業者が、認証された水産物と非認証の水産物を混ぜずに取り扱うことで、商品についたASCロゴの信頼性が保たれる仕組みだ。ASC商品を取り扱う国内のCoC認証企業は、2026年2月1日時点で214団体にのぼる(ASC公式発表のCoC企業リストより)。

つまり、養殖場がどれだけ環境に配慮した養殖をしていても、その先の加工業者や卸、スーパーがCoC認証を持っていなければ、最終商品に「ASC認証水産物」というラベルを付けることはできない。

日本国内でのASC認証の広がり

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カキ:宮城県産の約6割がASC認証を取得

日本で最初にASC認証を取得したのは、宮城県漁協志津川支所戸倉出張所のカキ養殖で、2016年のことだった。その後2018年4月27日には、宮城県漁協の石巻地区支所・石巻東部支所・石巻湾支所がそろってカキ養殖のASC認証を取得。これら3支所だけで宮城県内のカキ生産量の過半数を占め、戸倉出張所の生産量を合わせると、宮城県産カキ全体の約6割がASC認証を取得している計算になる(WWFジャパンの発表より)。

ブリ類:ニッスイ系列の黒瀬水産が世界初の認証

ブリ・カンパチなどのブリ類では、ニッスイの完全子会社である黒瀬水産(宮崎県延岡・鹿児島県黒瀬・鹿児島県内之浦の養殖場)が2017年12月16日、ブリ類として世界で初めてASC養殖場認証を取得した。ASCの基準づくりには、WWFジャパンが2013年に国内関係者との対話の場を設けたことが橋渡しになったとされている。

ギンザケ:女川のマルキンが日本初認証

サーモン類では、宮城県女川町の水産加工会社マルキンが2020年6月5日、日本で初めてギンザケのASC認証を取得した。農林水産省「漁業産出額」(令和2年確報)によると、海面養殖によるギンザケの産出額は全国の約76%が宮城県に集中しており、ギンザケ養殖そのものが宮城県に偏っている産地構造がある。その中心地である女川で日本初のASC認証が生まれたのは、産地としての厚みがあったからこそともいえる。

ASC認証を取得するメリットと現場のハードル

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養殖事業者にとってASC認証を取得するメリットは、主に販路の確保にある。欧米では小売・外食チェーンがASC認証水産物の取り扱いを調達方針に掲げるケースが増えており、認証を持つことが大口取引の前提条件になりつつある。

一方で、MSC認証と同様にハードルも存在する。審査には養殖場の水質データや薬剤使用の記録を継続的に整備する体制が必要で、個人経営に近い小規模な養殖業者ほど審査対応の負担が大きくなりやすい。また国内では「ASC」というロゴ自体の消費者認知がMSCに比べてさらに低く、認証を取得しても販売価格にすぐ反映されるとは限らないという課題も指摘されている。

ASC認証に関するよくある質問

Q1: ASC認証とMSC認証、どちらが厳しい基準ですか?

対象が異なるため単純比較はできません。MSCは漁獲対象の資源量や生態系への影響、ASCは養殖場の環境負荷や薬剤管理・労働環境を審査するため、評価軸自体が別物です。どちらも第三者機関による審査と年次監査を伴う点は共通しています。

Q2: ASC認証の魚を買うには何を見ればいいですか?

商品パッケージや店頭のポップに緑色のASCロゴが表示されているかを確認します。養殖場だけでなく加工・流通側もCoC認証を持っている必要があるため、ロゴの有無がそのままトレーサビリティの証明になります。

Q3: 日本で取得できる魚種は限られていますか?

ASCは魚種ごとに基準を策定しており、現在12種類の基準(サーモン、ブリ類、エビ、二枚貝、海藻など)が存在します。日本ではカキ・ブリ類・ギンザケなどで取得事例がありますが、対象になっていない魚種は現時点では認証自体を取得できません。

まとめ:ASC認証は養殖水産物の「責任ある生産」の証

  • ASC認証は養殖水産物を対象にした国際認証制度で、天然の漁業が対象のMSC認証とは役割が分かれている
  • 認証には養殖場自体が取得する「養殖場認証」と、加工・流通・販売側が取得する「CoC認証」の2段階がある
  • 日本では宮城県産カキの約6割、ブリ類では黒瀬水産、ギンザケでは女川のマルキンがそれぞれ国内・世界初の認証を取得している
  • ASC商品を取り扱う国内のCoC企業は2026年2月時点で214団体に拡大している
  • 審査コストや消費者認知の低さなど、現場では取得のハードルも残っている

水産物の認証制度についてさらに詳しく知りたい方は、MSC認証とは?海のエコラベルの仕組みもあわせてご覧ください。ギンザケをはじめとするサーモン養殖の全体像は日本のサーモン養殖とは、カキ養殖の仕組みはカキ養殖の方法を徹底解説で解説している。水産業界全体の統計データは水産ナビのデータハブにまとめている。

参考情報

  • ASC Japan公式サイト「水産物のASCラベル:その意味は?」(確認日2026年10月17日):https://jp.asc-aqua.org/blog/the-asc-label-on-seafood-what-does-it-mean/
  • WWFジャパン「海を守るマーク(2) 養殖水産物の認証制度ASCについて」(確認日2026年10月17日):https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1773.html
  • WWFジャパン「広がるASC認証 宮城県産カキの6割が認証を取得!」(確認日2026年10月17日):https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3754.html
  • WWFジャパン「世界初!日本のブリ養殖がASC認証を取得」(確認日2026年10月17日):https://www.wwf.or.jp/activities/news/168.html
  • Sustainable Japan「ニッスイグループの黒瀬水産、世界初のブリ類ASC養殖場認証を取得」(確認日2026年10月17日):https://sustainablejapan.jp/2018/01/09/kurosui-asc/30000
  • ASC公式CoC企業リスト(2026年2月1日時点、214団体)(確認日2026年10月17日):https://asc-aqua.org/wp-content/uploads/sites/9/2026/02/202602-CoC-Species.pdf
  • 農林水産省「漁業産出額」令和2年確報 — 海面養殖業の魚種別・都道府県別産出額(ぎんざけの宮城県集中率の確認に使用、確認日2026年10月17日)




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