最終更新: 2026-09-17
養殖業とは、卵や稚魚から出荷できる大きさに育つまでのすべての期間を、いけすや池など人の管理下で育てる漁業のことです。混同されやすい「栽培漁業」は、卵や稚魚のもっとも弱い時期だけ人が育てて、その後は海に放流し自然の中で育ったものを漁獲する方法で、両者は「最後まで人が育てるか、途中で自然に戻すか」という点で明確に区別されます。水産庁「令和5年漁業産出額統計」によると、海面漁業と海面養殖業を合わせた産出額は1兆6,563億円で前年比5.2%増加しており、養殖業は日本の水産業の中でも大きな存在感を持つ分野です。この記事では養殖業の基本的な定義から、栽培漁業との違い、日本国内の養殖の種類、産出額データ、そして養殖業に関わるキャリアまでを解説します。
養殖業とは?基本をわかりやすく解説

養殖業とは、魚介類や海藻を卵や稚魚の段階から出荷できる大きさになるまで、いけす・池・水槽といった人工の環境で継続的に育てる漁業を指します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 卵・稚魚から出荷まで、すべての期間を人が管理して育てる漁業 |
| 対になる概念 | 栽培漁業(卵・稚魚の弱い時期だけ育てて自然に放流し、成長後に漁獲する方法) |
| 主な生育場所 | 海面(いけす)、陸上の水槽、河川・湖沼(内水面) |
| 監督官庁 | 水産庁(農林水産省) |
農林水産省の解説によると、栽培漁業と養殖業の最大の違いは「育てた魚介類を自然界に戻すかどうか」にあります。栽培漁業は卵や稚魚という最も弱い時期だけ人工のいけすで守り、その後は自然の海や池に放流して漁獲するのに対し、養殖業は出荷までのすべての期間を人が管理し続けます。つまり、栽培漁業は「スタートだけ手伝う」方法、養殖業は「最初から最後まで面倒を見る」方法と整理できます。
養殖業の種類・分類

養殖業は育てる場所によっていくつかの種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 | 代表的な魚種・品目 |
|---|---|---|
| 海面養殖 | 海にいけすを設置して育てる、日本で最も一般的な方式 | ブリ類、マダイ、クロマグロ、カキ類、ホタテガイ、ノリ類、ワカメ類、コンブ類 |
| 陸上養殖 | 陸上の水槽で水質を管理しながら育てる方式。海の環境変化の影響を受けにくい | サーモン類、エビ類の一部 |
| 内水面養殖 | 河川・湖沼・池など淡水の環境で育てる方式 | ウナギ、コイ、アユ |
海面養殖は歴史が長く生産量も大きい一方、陸上養殖は初期投資が大きいものの海況変動のリスクを抑えられる方式として近年注目されています。個別の魚種の養殖方法をより詳しく知りたい方は、マダイ養殖の仕組みと産地や海苔養殖の仕組みと産地ランキング、陸上養殖のメリット・デメリットの記事も参考にしてください。
養殖業の産出額データ

水産庁「令和5年漁業産出額統計」によると、海面漁業と海面養殖業を合わせた産出額は1兆6,563億円で、前年から822億円(5.2%)増加しました。これは海面漁業でいわし類、海面養殖業でのり類の価格が上昇したことなどが要因とされています。
e-Stat(政府統計の総合窓口)の漁業産出額データ(主要魚種別海面養殖業産出額)の品目別データを見ると、海面養殖業の中では魚類ではブリ類、クロマグロ、マダイが、貝類ではカキ類、ホタテガイが、海藻類ではのり類が主要な品目として上位を占めています。全国的な産地の偏りも大きく、たとえばマダイは愛媛県が、海苔は有明海周辺の県が高いシェアを持つことで知られています。
農林水産省・水産庁の統計データは水産ナビ 水産業界データハブでも定期的に更新しているので、最新の推移を確認したい方はあわせてご覧ください。
養殖業に関わる仕事・キャリア

養殖業は個人経営の漁業者だけでなく、企業として大規模に運営する形態も広がっています。養殖業に関わる働き方としては、養殖業者・漁協職員として現場作業に従事するルート、養殖関連企業やベンチャー企業に就職するルート、水産系の学校で養殖技術を学んでから業界に入るルートなどがあります。それぞれの具体的な内容は、養殖業への就業ルート・年収ガイドや養殖ベンチャー企業の動向で詳しく解説しています。
養殖業のメリット・課題

| 観点 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 天然の漁獲量に左右されにくく、計画的な生産・出荷がしやすい |
| メリット | 品質やサイズを一定に管理しやすく、ブランド化がしやすい |
| 課題 | 初期投資(いけす・設備費)や餌代などの運営コストがかかる |
| 課題 | 海況・水質の悪化や赤潮、病気の発生により、まとまった被害が出るリスクがある |
養殖業の経営面の実情については、ブリ養殖の費用を徹底解説でも具体的な数字を交えて紹介しています。
養殖業に関するよくある質問
Q1: 養殖業と栽培漁業はどう違いますか?
養殖業は卵や稚魚から出荷できる大きさになるまでのすべての期間を人が管理して育てる漁業です。一方、栽培漁業は卵や稚魚という最も弱い時期だけ人が育てて、その後は自然の海や池に放流し、成長したものを漁獲する方法です。「最後まで人が育てるか」「途中で自然に戻すか」が最大の違いです。
Q2: 日本では海面養殖と陸上養殖のどちらが多いですか?
生産量・産出額ともに海面養殖が中心です。ただし近年はサーモン類などを中心に、海況の影響を受けにくい陸上養殖への投資も増えています。
Q3: 養殖業で働くにはどのような方法がありますか?
養殖業者や漁協に就業する、養殖関連企業・ベンチャー企業に就職する、水産系の学校で養殖技術を学んでから業界に入る、といった複数のルートがあります。目指す規模や役割によって適したルートが異なります。
Q4: 養殖業の産出額はどのくらいですか?
水産庁「令和5年漁業産出額統計」によると、海面漁業と海面養殖業を合わせた産出額は1兆6,563億円で、前年比5.2%増加しています。養殖業単体でも、ブリ類・クロマグロ・マダイ・カキ類・のり類などが主要な品目として大きな産出額を占めています。
関連記事: 増養殖とは?栽培漁業のしくみと対象魚種、養殖業との違いを解説
関連記事: スマート養殖とは?IoT・AI・ゲノム編集の最新技術5選
まとめ:養殖業のポイント
- 養殖業とは、卵や稚魚から出荷まですべての期間を人が管理して育てる漁業のこと
- 稚魚の時期だけ育てて自然に放流する「栽培漁業」とは、自然界に戻すかどうかで区別される
- 種類は海面養殖・陸上養殖・内水面養殖の3つに大きく分けられる
- 水産庁の統計では、海面漁業・養殖業を合わせた産出額は1兆6,563億円(令和5年、前年比5.2%増)
- 養殖業に関わる働き方は現場作業から企業就職、学校での専門教育まで複数のルートがある
個別の魚種の養殖方法や産地の詳細を知りたい方は、マダイ養殖の仕組みと産地などの各記事もあわせてご覧ください。
参考情報
- 農林水産省「栽培(さいばい)漁業と養殖業(ようしょくぎょう)の違いを教えてください」 https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0306/04.html
- 水産庁「令和5年漁業産出額統計結果の概要」(2023年時点データ) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040263295&fileKind=2
- e-Stat(政府統計の総合窓口)「漁業産出額 主要魚種別海面養殖業産出額」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?toukei=00500208&layout=dataset&stat_infid=000031409789
この記事は水産ナビ編集部が執筆しました。水産ナビは水産・漁業に特化した専門メディアです。
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